研究関連

櫻井幸男

イギリス経済の変遷を参考に日本の未来を考察する 【櫻井幸男】

日本の経済政策をイギリスの実績で評価

私の現在の研究テーマは「現代イギリス経済」です。イギリスは1979年にマーガレット・サッチャーが政権を握ってから大きく変貌しました。70年代は労働組合の力が強く、賃金の上昇率が高いため、企業の利潤が低く、経営が苦しい状況が続いていました。サッチャーは利潤を増やすために生産性を上げよう(つまり賃金を下げよう)と、派遣など多様な形の労働で雇用を流動化させやすいシステムを作りました。そして個人消費を刺激するという景気主導政策などにより、それまでの低成長のイギリスとは打って変わった経済成長率を誇るようになっていきました。しかし2008年のリーマンショックによる世界的金融危機でアメリカ以上のダメージを受け、今もほとんど経済回復していません。経済成長を促すための次なる経済モデルを模索していますが、いまだ見つかっていない状況です。

私がイギリス経済を研究対象として選んだのは、ポンドがアメリカのドルのような基軸通貨ではないからです。日本の円と同様、経済を救済するためにドルを増発する逃げ道がありません。そのため変遷するイギリスの政策は日本にも適用できるのではないか、日本の経済や経済政策をイギリスの実績から評価できるのではないかと考えています。

日本の国民経済が成り立つ産業を模索

経済学の基礎は「富をどう創るか」と「富をどう分配するか」の問題に分かれ、私は「富をどう創るか」について考え続けています。市場経済では、労働をすれば富はできることになっていますが、たとえば1時間働いて富を作っても、それが製造業と金融業であるかどうかで、国民の生活水準は、大きく異なります。どの産業が最も合理的で、その国にあった形で富が得られるのか。日本の国民経済を背負うのは、製造業なのか金融業なのか両者のバランスをどのようにとるのか。それは、日本の将来にとって非常に重要な課題となります。

経済の研究の面白さは「自分のなかに現在と将来の世界経済がある」ことです。イギリス経済を研究することで、日本や世界の行く末が頭の中に描かれ、あれこれと考えることほど研究者にとってこれほど楽しいことはありません。