研究関連

熊倉修一

中央銀行による政策の意義と限界を検証する 【熊倉修一】

時代環境や経済の実態によって変わる金融政策 ―その意義と限界を探る―

私は、「金融政策」の授業を担当しています。金融政策は、中央銀行(わが国では日本銀行)が、金利水準の操作などを通じて、その国の経済活動の安定的な発展を目指す経済政策です。
わが国は、1990年代から現在に至るまで、「失われた20年」と言われるように長い経済不振に悩み続けています。これに対して日本銀行は、景気を刺激するべく金利水準をゼロにまで引き下げ(ゼロ金利政策)、金融機関へ巨額の資金を提供する(量的緩和政策)など、異例の金融政策を続けてきました。欧米主要国の中央銀行も、2008年のリーマン・ショックや最近のユーロ危機などに対処するために、日銀と同様に超低金利政策や量的緩和政策に踏み切っています。
このように先進主要国は経済の停滞に悩み、その中央銀行は異例の金融政策を強いられています。こうした状況を受けて、私は、日本を含め成熟した先進資本主義国における経済実態の把握と、それに対する経済政策、中でも金融政策はどうあるべきか、またそれにはどのような限界があるのか、といった点を主なテーマに研究を続けています。


画一的な金融政策はあり得ず、経済の実態や時代環境に大いに影響を受け、その位置づけ、効力は変わっていきます。かつての高度経済成長期とは異なり、経済が成熟化し、満ち足りた社会になるに従って、金融政策の直接的な効果は減じていきます。少子高齢化が進み本格的な人口減少時代に突入し始めた日本経済では、中央銀行による政策はどう変わっていくべきか、それを見極めていくことは重要です。

歴史の教訓をもとに現代の金融政策を考える

このように金融政策は、常に時代の最先端に位置するホットな問題です。しかし、その一方で、そうした問題を考える場合でも、人間の過去の行動、つまり歴史から教訓を得ることが重要です。過去と現在では、社会環境や経済実態が異なっていても、その底に横たわる基本的な背景はさほど変わっていないことがあります。私は毎年、1930年代の世界大恐慌期にイングランド銀行がとった政策について研究するために、ロンドンのイングランド銀行の古文書館を訪れます。この研究を通して、経済の苦境から脱するためにこのイギリスの中央銀行が実にさまざまな対策に取り組んできたことを知り、「中央銀行というものはそういうものなのだ」と実感しています。こうした重要な歴史的事実をしっかりと認識しておくことは、最先端の課題を考える上でも非常に有益です。私は授業の中で、金融政策に限らず、過去に学ぶことの重要性を常に強調しています。