研究関連

楠葉隆徳

数学・天文学史の研究で古代の学者たちと会話しています。【楠葉隆徳】

インドやアラビアの写本を編集・翻訳

私の専門分野は精密科学史で、「インドとアラビアの数学・天文学史」について研究しています。インドの古典語のサンスクリットやアラビア語の写本を系統的に調べながら原典を編集し、現代の研究者が読める言語へと翻訳し、註釈をつけています。

この研究をしていると当時の人たちがどのような世界観を持っていたのか、宇宙や世界をどう捉えていたのかがわかります。また現代の私たちと異なり、昔の人たちが実に多様な知識を持って本を書いていることに驚かされます。例えば地動説を唱えたポーランドの学者コペルニクスは、カトリックの司祭であり、同時に医者の役割も果たしていました。私たちは数学、天文学、物理学などを分けて捉えていますが、かつてそれらは一体で、学問は分化していませんでした。当時のそのような状況は私にとって非常に興味深く、文献の編集・復元により過去の学者たちと対話できるところも面白いですね。

最新の研究成果でサンスクリットの数学書に挑戦

現在私は、フランス国立科学研究センター(CNRS)が2011年から実施しているバビロニアや中国などの古代の数学の問題例を収集するプロジェクトに参加しています。また2000年に共同研究者たちと、精密科学の一次史料を公開するための査読雑誌「SCIAMVS(ラテン語で知ろうではないかという意味)」を起ち上げ、継続的に出版しています。

今後の目標は14世紀に書かれたサンスクリットの数学書を編集すること。100年ほど前に一度編集されていますが、新たに発見された写本を利用し、最新の研究成果を駆使して、その数学書が書かれた背景や目的なども考慮して校訂を完成させたいと考えています。
担当している授業は「科学史」と「自然科学概論」です。「科学史」では、例えばギリシャやアラビアの人たちが、どういうものを科学と考えていたのか、どういう風にものを考えていたのかなどをわかりやすく説明しています。そして「自然科学概論」では、科学者という職業がいつ現れたのか、何をもって科学者と呼べるのか。さらに科学者はどういう考え方をするのか、科学はどこに向かおうとしているのかなどを、歴史家としての視点で講義しています。