井形浩治

企業の不祥事に学び、経営の本来あるべき姿を追究

会社の経営は、誰のために行なわれているのか

コーポレート・ガバナンスは「企業統治」と訳されていますが、私は「企業規律」と捉えています。企業規律を守るためには、違法行為を監視し、少数者に権力が集中しやすい体質を改め、健全に経営できる仕組みを作らなければいけません。新聞で見る企業不祥事には、トップ主導のものが多く目につきますが、まずもって会社は誰のためにあるのかを考えるべきでしょう。コーポレート・ガバナンスは、経営者に対する「自律」的な機能であるべきだという考えから、最近、『コーポレート・ガバナンスと経営者の新たな役割』という本を出しました。私はコーポレート・ガバナンスという概念が生まれたアメリカ企業の実情や日本での企業不祥事などを考察し、グローバル時代に企業が求められるガバナンス(規律・統治)のあり方を追究しています。

エクセレント・カンパニー(優良企業)かどうかは、有名か無名かで決まるのではありません。独特の企業文化を持ち、小さくても強く、ガバナンスが有効に機能してこそ称賛されるエクセレント・カンパニーといえるでしょう。私はスイスの時計メーカーをはじめとする世界のエクセレント・カンパニーに目を向け、その発展の理由も研究しています。

「I can manage it」 と言える人に

「格差社会」という言葉をよく耳にするようになりました。非正規雇用の割合が増えているのが一因ですが、逆転の発想で「雇われない生き方」も解決策の一つではないかと考えています。実際に卒業と同時に事業を起こす人も大勢います。また大企業だけでなく、知名度は低くとも、就職するのにふさわしい優れた企業はたくさんあります。
学生たちには、どんな働き方を選んでも 「I can manage it(私に任せてください・自分でできます)」 と言える知識と知恵を育んでほしい。そのためには、経営と法律を軸とした勉強のほかに社会の動きに関心を持つアンテナを身につけてほしいと思います。

フィールドワークでは大阪商工会議所が「企業家精神の高揚・伝承を通じて次代を担う人材を育成する」ことを目的に設立した「大阪企業家ミュージアム」(大阪市中央区)も訪れました。日本経済の中心地だった頃の大阪の姿や、企業家の高い志と豊かな発想に学ぶべき点が多々ありました。本学は大阪の中心にあり、ビジネスの活気を身近に感じることのできる環境でもあります。利点を生かし、おおいに学んでください。