江島由裕

中小企業の発展を支援し、日本と世界に貢献したい

変化に対応できる成長メカニズムを追究

私の研究テーマは「アントレプレナーシップ(企業家活動)」。中でも「成長中小企業の戦略と組織のマネジメントプロセス」に焦点をあてています。日本の9割を超える企業が中小企業。そして、その多くが残念ながら倒産・廃業に追い込まれています。一方、リーマンショック以降の厳しい経済環境下においても、存続し成長を遂げる中小企業も存在します。なぜ成長する企業と衰退する企業に分かれるのか。私はその要因を探求しています。
最近、東日本大震災後の中小企業の経営実態について、大規模な全国調査を行いました。その結果、震災の影響を受けた企業は6割を超えたものの、その中の3社に1社は震災後に売上高や利益率が増加していることが分かりました。同じ環境下でも成果を上げている企業とそうでない企業に分かれているのです。そこには何らかのマネジメント・メカニズムや成長を促す駆動力が存在するのではないでしょうか。私は、その中心に競争に打ち勝つ、組織の先駆性、革新性、リスク負荷の戦略態度があり、それが中小企業の成長に大きく影響を与えているとみています。環境変化をビジネスチャンスに転換する組織マネジメント能力の要として戦略態度は重要であり、世界的にも注目を集めています。科学的な手法に基づく実証研究を通じて、世界に通ずる中小企業の成長メカニズム研究を進めています。

現場からの声を理論に反映していく

この研究の面白さの一つは、研究成果を実社会に発信できることです。例えば、企業経営者には、自社が抱える経営課題の克服や新事業開発に向けた知見を、国や地方自治体に対しては、中小・ベンチャー企業支援の課題や有効策について情報提供できます。
一方、私は企業の経営成果の変化にも関心をもっています。特定商品の開発や売上状況だけではなく、組織全体の売上高や利益率の時系列変化とその要因に注目しています。そのため、経営現場の声には常に耳を傾けながら理論とのキャッチボールを繰り返します。研究成果も必ず現場にフィードバックします。社会的影響が大きいだけに責任もありますが、その厳しさもやり甲斐の一つ。今後も科学的手法を用いた事例研究や定量研究を実施して、その成果を日本のみならず世界に発信していきたい。そして中小企業の成長支援に少しでも関与するとともに、グローバル・アントレプレナーシップ研究の発展に寄与していきたいと思っています。