伊藤正之

人間の思惑や行動が株式市場に与える影響を追究

株式取引における人の関与や信頼関係に着目

私の専門は金融論です。今は、金融の世界における「信用」というものが何によって出来ているのかを考えるため、現在、「人の行動に関する研究」に取り組んでいます。

株式というものの値段には確たる基準はなく、企業と投資家(買う人・売る人)の関係で決まってきます。株式投資はリスクが大きいと言われますが、おおよそ妥当なラインの値段となるのは、企業と投資家の間で、このあたりなら良いのではないかと思えるような何か暗黙のやり取りがあるのではないか。現在の株式市場は完全にコンピュータ化され、瞬時に取引される超高速自動取引などが存在感を増していますが、そこにどのような人間の関与や信頼関係があるのかを研究のテーマとしています。ただ、それらを、どのような視点や実験で実証し明らかにしていけば良いのか、まだ答えは見つかっていません。

この研究の面白さは「人はわからない」という部分です。私は長く、経済学と心理学を合体させたような研究をしたいと考え続けてきました。念願がかない、今、行動ファイナンスというキーワードで研究に取り組んでいることが楽しくて仕方ありません。

人の行動パターンを知ることが社会でも役立つ

経営学部で担当している授業は、「投資戦略論/株式編」と「投資戦略論/派生商品編」です。金融というと難解なイメージがありますが、これらの授業では、金融システムの仕組み、そのなかのリスクとリターンなどの基本的な知識、株式投資、そしてパソコンによるデータ処理のノウハウなどを学んでほしいと思っています。またポートフォリオ(資産の運用配分)に関するグラフなども理解できるようになってほしいですね。

ゼミでは、「人の行動のパターン」などについて、学生自身が様々な仮説をもとに実験計画を立て、街頭などでのアンケート調査を実施。それらの結果を集計・分析して結論を導き出し、卒業論文へと仕上げていきます。

このような実証実験などの活動体験は、学生が就職し、販売やサービスなどの現場で工夫が求められる時、大いに役立つと思います。例えば店舗を訪れる客数を増やしたい、あるいは一人当たりの購買金額を増やしたい時にどうすれば良いか、学生時代に携わった実証実験などの成果から、画期的なアイデアを生み出せるかもしれません。