草薙 信照

新しい視点を提供する「一目瞭然」のデータマップ作りに挑戦

GISを活用し、リアルな近畿圏の経済状況を示す

みなさんはGISをご存知でしょうか。GIS(geographic information system:地理情報システム)は、地図の上に、位置と関連づけられるさまざまな情報;例えば人口衛星から撮影された画像や現地踏査によって得られた建物の状況、市区町村別の統計データなどを、コンピュータを使って解析し、その結果を地図上に表現することで、情報を視覚的に表示させる仕組みです。これにより、高度な分析や的確な判断が可能となるため、最近では都市計画、道路・設備計画、出店計画、エリアマーケティング、災害対策など、さまざまな分野で注目を集めています。
私は現在、GISを使って、京阪神あるいは近畿圏の経済状況が時系列的にどのように変化しているかを分析し、直感的に表現する手法の確立に取り組んでいます。GISを使って地図上に表現することには、それまで数字の列としか見えていなかったデータが生き生きとしたリアル情報として視覚的に訴えかけてくるという利点があります。

数字を疑い、見分ける力を身につけてほしい

大阪経済大学にはArcGISというGISソフトウエアが導入されています。私のゼミではこれを活用して、学生たちにさまざまな事象に関する情報を分析し、「データマップ」を制作することに挑んでもらっています。テーマは自由としているため、学生たちは「フランチャイズチェーンの出店分析」など企業経営に関わるものだけでなく、「医療施設の分布」や「地域のひったくり事件の傾向分析」のように医療福祉、防犯に関連するものなど、それぞれの興味に応じた研究を行っています。自分で調べてきた生の情報を地図上にプロット(点描)し、人口分布と組み合わせたり、幹線道路や鉄道・駅と組み合わせたり、さらに近隣の学校や公共施設の場所を地図に載せてみたりと、各自が試行錯誤しながら、「データマップ」を完成させていきます。こうしてさまざまな情報をビジュアル化する訓練を通じて、データを処理する能力と考える力を身につけていきます。
アウトプットされたマップから予想外の分析結果が出てきた場合、「どこかおかしいのではないか」と考えることも大切なポイントです。何でも鵜呑みにせずに疑ってみること、そして自分で確かめてみることです。この「問題点を探し、発見する」という一連の能力は、大量の情報が氾濫する現代において、本当とウソ、有用なものと無用なものを見分けるためにとても重要だと思います。学生たちに、ぜひ大学時代に身につけてほしい能力です。