研究関連

片山麻美子

人間のあるべき姿をイギリスの詩人に学ぶ 【片山麻美子】

西洋文化理解に欠かせないキリスト教

イギリスの18世紀を代表する詩人、トマス・グレイの作品に魅かれ、研究を続けてきました。グレイの、自然と向きあい、社会や人間のあるべき姿を真摯に求める姿勢は日本人と重なる部分があります。

一方で自然や人間に対するイギリスと日本の捉え方の違いにも気づかされます。教会墓地に眠る名もなき人々の生涯とその死を想って歌った「田舎の墓地で詠んだ挽歌」では、おだやかな田園の夕暮れの風景のなかに、イギリスの階級社会の現実や詩人の社会意識を読み取ることができます。

グレイもクリスチャンでしたが、西洋文化を理解する上で、キリスト教は欠かせません。旧約聖書の冒頭に「初めに、神は天と地を創造された。地は形なく、空しく、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面をおおっていた」とあります。神によって人間を含むこの世界全体が創られたという思想は、西欧では長い間真実のこととして受け継がれてきました。それは「どれだけ知識を得ても神の領域を侵してはいけない」「人に与えられた分限を超えて生命の創造をしてはいけない」という考えにつながります。

そのため、不妊治療やクローン人間をめぐって「人が命を操作することは許されるのか?」という問いかけが現在も活発なのです。日本では西洋科学の恩恵を無批判に受け入れる傾向にありますが、生命倫理の議論が伝統的に存在することを忘れてはいけないでしょう。

異文化を学ぶことで見えてくるもの

授業ではさまざまな角度で西洋文化に触れます。例えば宗教画は文字を読めない人々へのメッセージという側面がありますが、ミケランジェロの「最後の審判」を題材に天国や地獄、肉体の死と魂の救済について読み解いていきます。

さらに西洋文化すなわち異文化を学びつつ、自国の文化にも関心を持つことで複眼的な視野を養えるように授業を進めています。私はイギリスの庭園が好きですが、西欧の庭園に興味を持てば持つほど日本の庭園、なかでもお寺の庭が持つ宗教的な奥深さ、日本独自の自然の捉え方に感動します。海外に出ると、異文化に触れることで日本の文化や社会の問題点に気づいたり、逆に日本の良さを再認識したりします。

広い世界に身をおくと、自分の悩みやこだわりが小さくみえてきます。学生のみなさんには、外に開かれた見方を育み、自ら可能性を切り拓いていって欲しいです。