杉田武志

イギリス東インド会社の会計の仕組みを 当時の史料から読み解く

17世紀における東インド会社も複式簿記を使用

 私の専門分野は会計学で、財務会計や簿記の歴史について研究しています。特に関心を持って研究しているのが、17~19世紀の「イギリス東インド会社における会計」です。
イギリス東インド会社は世界で二番目に古い株式会社で、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」にも同社を模した会社も登場しています。胡椒、キャラコや紅茶をイギリスに持ち込んだ存在でもあり、世界史、経済史や経営史ではメジャーな存在ですが、会計の側面に関してはあまり光が当てられてこなかったと聞き興味を感じました。

 当時の貿易や会社の仕組みなど研究のバックグラウンドとなる考察から始め、現在は同社の会計帳簿や議事録など膨大な史料の分析に取り組んでいます。貿易などの取引が、どのように帳簿に記され決算書に相当するものまで作られていたのか、当時の会計の仕組みを体系的に明らかにしたいと考えています。
 今日でも企業会計のインフラとも言える複式簿記は、17世紀後半のイギリス東インド会社の本社でも既に導入されていますが、当時も今も複式簿記の仕組み自体に大きな変化はないものの、複式簿記の持つ役割が変わってきています。当時の複式簿記には財産の管理的側面が大きく、必ずしも現在のように主として利益計算をするために使用されてはいませんでした。複式簿記の目的が財産管理か利益計算かというのは、簿記、会計史の領域では大きな違いであり、当時の会社の議事録や歴史的背景などから読み解いて検討することも重要な研究課題の一つなのです。

簿記・会計を理解することは今も昔も重要

 イギリス東インド会社の会計に関する史料は、大英図書館から取り寄せています。現地にも何度か行きましたが、まだまだ膨大な史料が残されており、研究課題もたくさん残っています。今後は研究成果を、イギリスをはじめとして海外の学会やジャーナルなどで発信したいと考えています。
 講義では「会計と歴史」「財務会計論」を担当しています。今や、会計の知識は経理担当者だけが持っていれば良いものではありません。企業では営業や企画などに携わる人でも、財務諸表を見てコストや売り上げの話をする場合もあるでしょう。ビジネスにおいても会計の知識は必須の知識であり、共通言語でもあるといえます。近年では、IFRS(国際会計基準)、減損、のれん、などの会計トピックスが新聞やニュースでもしばしば報道されたりします。このような会計の知識や会計マインドを、ぜひ学生のみなさんには、身につけてもらいたいと思っています。