米川雅士

地図情報の自動統合を進め、ARやVRの世界を拡げていく

欲しい情報をリアルタイム表示できる地図

地図には世界地図、道路地図、天気予報地図、町歩きマップ、ハザードマップなど様々なものがあり、私たちは欲しい情報ごとに地図を使い分けています。これらの地図がすべて統合されひとつの地図として、目的に応じ必要なものを取り出して使えれば様々な利用方法が考えられ便利です。しかし、これらの情報は別々の規格で作成されています。地図に必要な情報を統合する作業は今のところ人の手で行なっているため、手間暇がかかるだけでなく、人々の目に触れる頃には情報が古くなっています。地図情報を利用した仕組みとして、Google MAPやポケモンGOなどはおなじみですが、それらが利用する地図情報も、すべて過去に蓄積したものです。私は画像処理やGPS情報、AIなどの技術を用いて、様々な規格で作成された情報を自動で統合する方法を探求しています。また、地図情報の自動統合によるリアルタイム表示が可能になれば、自動運転やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)の利用拡大にもつながるので、その多様な活用方法についても研究しています。

ドローンを用いた森林、建築の調査も

日本の森林には、所有者が分からず手入れがされていないために、土砂崩れや地すべりを起こしやすくなっている箇所が多くあります。私は2012年から4年間、県土の77%を占める奈良県の森林について、自動による樹種識別や育成具合の判断を行うアルゴリズム構築について研究を進めていました。木の種類や高さを判別するため、当時は存在しなかったドローンのような装置を自作し、精度の良い空中写真を撮って情報を収集しました。公益財団法人JR西日本あんしん社会財団からの研究助成により、同様の装置による自動航法で写真を撮り、建物状況の調査をしたこともあります。現在は、これらの研究に関連して、写真の歪みを自動で補正するアルゴリズムや、高速写真結合アルゴリズムなどの開発も進めています。また、学生とともにゲームを制作しながら、「ゲームで恐怖を与えるには」「音楽の違いによるゲームの面白さへの影響」といった、心理学的要素を取り入れた研究にも取り組んでいます。

知識と経験のバランスをとりながら

ゼミの学生によくいう言葉は「知識と経験は矛と盾である」。インターネット経由の知識だけでは物事をうまく進められないし、現場に行ってみるだけでは本当に大事なことを理解することはできません。両者のバランスがとれて、初めて物事に自信がもてるようになるし、第三者の悪意から身を守ることもできると思います。

ARで世界の人々と感覚を共有する

通信技術の発達により、人は家の外に出なくても世界中の情報を得られるようになりました。しかし、インターネットでは味覚、嗅覚などの感覚を得ることや、その感覚を他者と共有することは難しいと思います。リアルタイムの地図情報を基幹システムとし、複数のARを連動させれば、将来人間は家にいながら、世界中の人と感覚を共有できるようになると私は考えています。ARを使えば、自宅を出ることなく、大阪経済大学のオープンキャンパスにリアルタイムで参加し、その日開講された講義に参加するなどということも可能になるでしょう。怠け者と言われるかもしれませんが、ARを使って時間と距離を克服し、家の中でスポーツも旅行もできるようになる日を夢みています。楽しい怠け者生活をめざして、ひたむきに仕事をしているのが今の自分かもしれません。