大瀧友織

日本人の夫婦観・結婚観の変遷を明らかに

夫婦関係満足度はコミュニケーションの内容が左右

私は、家族社会学という分野を専門としており、「夫婦関係満足度」や「夫婦関係の変遷」、「結婚相手の選択と親子関係」などについて研究しています。
 「夫婦関係満足度」の分析では、特にお金に関するコミュニケーションに注目し、その満足度がどのような要因でもたらされているのかを検証しています。そして分析の結果、コミュニケーションの頻度の高さは必ずしも夫婦関係満足度を高めず、コミュニケーションの内容によっては逆に満足度を低下させることがわかりました。夫婦関係満足度に与える影響は性別や妻の収入貢献度によって異なります。例えば、住宅教育費等生涯設計、妻の働き方や収入について話すことは夫の夫婦関係満足度を高めるのに対して、夫の働き方や収入、家計の管理・費用負担についてのコミュニケーションは夫の満足度を低下させます。また家計の収支に対するもめごと・ケンカは収入貢献度の低い妻の満足度を低下させることがわかっています。
 「夫婦関係の変遷」の研究では、戦後から現在にかけて新聞などに掲載された身の上相談の記事を調べました。相談者である妻の悩みに対する、識者とされる人たちの回答内容の歴史を調べることで、日本人の夫婦観や結婚観の変遷が明らかになります。
 「結婚相手の選択と親子関係」の研究では、結婚支援サービスの利用者や、代理見合いを利用する親などにインタビューやアンケート調査を行うことで、それぞれの世代の結婚観の違いなどを分析したいと思っています。

未婚率上昇により配偶者選択メカニズムの研究が重要に

離婚率や未婚率のさらなる上昇が考えられるなかで、夫婦関係満足度の調査・分析や、配偶者選択のメカニズムの研究は重要であり、将来、結婚と親子関係に関する単著なども出版したいと考えています。しかし結婚の問題はデリケートであり、聞き取り調査が困難であったり、アンケート調査の回収率が低いなどの難しさも実感しているところです。
 授業は「家族社会学」「社会調査演習」などを担当していますが、学生たちは、20年前後の人生のなかで、それぞれに強固な家族観を持っています。今とは異なる時代の夫婦や家族について知ることで、培ってきた常識というものを突き崩したい。そして自ら問いをたて、答えを導き出すための資料・情報の収集方法や論理的思考を身につけてほしいと願っています。