ブックタイトル17歳からのメッセージReport2018

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17歳からのメッセージReport2018

17歳からのメッセージ3217歳からのメッセージ奨励賞学校特別賞応募参加校一覧学生審査員賞金賞銀賞グランプリ定義とは「一定のルールに則って勝敗を競うもの」といった主旨であり、将棋はそれに当てはまる。将棋は苦しい。将棋は厳しい。将棋は難しい。将棋は分からない。それでも、将棋は楽しい。将棋は敷居が高いとか、将棋は陰湿だと思っている人達に大きな声で言いたい。将棋はスポーツだ。筆に墨を含ませ、手本を見ながらゆっくりと紙に筆を下ろす。慎重に、落ち着いて、次の動きを想像して、自分の手と筆を一つにする。一画目を書くだけで周りの雑音は何も聞こえなくなる。私にとって書道は、何よりも心を落ち着かせてくれるものだ。私が書道と出会ったのは、幼稚園年長の時である。初めて書いた「心」という文字。今改めて見ると、上手いとは言えない。しかし、今の自分にはない思いきりの良さ、そして書を心から楽しんでいる当時の自分を見出すことができる。あの頃は自分の書いた文字を上手だと言ってもらえることが嬉しかった。そして心から書くことを楽しんでいた。今の私は書くことを楽しめているのだろうか。確かに、自分の作品を書道雑誌に掲載してもらえたり、昇級したり、作品展で綺麗に掛軸にしてもらえたりするのは嬉しい。しかし、その嬉しさを得るために同じ文字を飽きるまで書き続けるのだ。自分の作品に対する評価はやはり怖いし、練習とはいえ自分の書いたものを目の前でごみ箱に捨てられるのは悲しい。今の私にとって書道は心を落ち着かせてくれるだけのものであり、楽しさはない。高校生になって、書道会に入って、半紙以外の大きさにも挑戦し始めた。今まで続けてきて、私に向いていると思っている。これからも続けていくには楽しさを見出さなければならない。書道としっかり向き合って、始めた頃のような楽しさを見つけていきたい。◆書心椙山女学園高等学校(愛知県)空野千帆さんてしまう。そうして母は、私がお弁当を作り終えた頃を見計らって、待ってましたと言わんばかりの笑みで私に問うのだ。「コーヒーはいりますか?」と。お母さんは魔法が使える。体調が悪くなりがちな私は、お弁当を作れない日もまあまあある。お弁当を作りはじめる5時になってもベッドから出られない日は、母はそっと扉から心配そうな顔を見せる。それに気付いた私が、「ごめん、今日はお弁当を作れそうにない。」と言うと、母は優しい顔で頷いて、やっぱり私にこう問うのだ。「コーヒーはいりますか?」と。お母さんの魔法は、スプーン1杯半のインスタントコーヒーと、熱々のお湯、それと牛乳でできている。それらを私のお気に入りのコップに順に入れていき、混ぜる。そうしてできた、コップ1杯のカフェ・オレが母の使える魔法だ。飲むと、なんだかじぃんと心があったまる、私には使えない魔法だ。いつか私も使ってみたい、とそう思う。ああ、お母さんのコーヒーが飲みたいなぁ。将棋はスポーツだ。僕は小中学生の間、運動部に所属していた。お互いの技と作戦が正面からぶつかり合う、そんなところが好きだった。だが、中学のころ自分が持久走が嫌いだということに気付いた。部活前のウォーミングアップの持久走が苦行になってから、運動に対する気持ちが悪いものになっていくのに時間はかからなかった。楽しかったスポーツが楽しくないものになってしまい、次に僕が目を付けたのはゲームだった。しかし、続ければ続けるほどゲームをやる利点を見失っていき、すぐにやめた。そして、2年間中身のない生活をおくり、中学3年の6月、ふとしたきっかけから将棋を始めた。当時の僕は自分を「何でも器用にできる人間」と評価していたため、初めての将棋教室で小学生に負かされた時は、ニュートンが万有引力を発見した時の気持ちが少しだけ分かった。前置きが長くなったが、将棋はそこから僕の人生に色を付け、狂わせた。本題にもどるが、スポーツの◆将棋はスポーツだ。愛知県立豊野高等学校(愛知県)宮成辰弥さん私は高校3年になるまで沢山のことを経験した。私の家族はとても複雑に構成されている。私は本当の父を知らない。会ったこともない。そして本当の姉にも会ったことがない。義父と母の3人で生活をしてきた。私が6歳の時、弟が産まれ、4人家族になった。そんな時義父から、「お前は俺の子供じゃないからどこかに行ってくれ。」そう言われた。その言葉を聞いて、私はこの家には要らない存在なんだと思った。そして、まだ幼かった私はどうすることもできなかった。ただ泣くだけしかできなかった。そんなことが何度もあり、私は大人というものを信用することができなくなった。小学校低学年の時、道徳の時間にお父さんのことについて書いてみようと言われた。父から他人扱いされていた私はすごく困った。私は自分にとっての理想の父を書くことしかできなかった。優しそうな顔をして子供想いの父。そんな理想的な父を書いた。もし本当の父や姉と4人で暮らしていたらどれだけ幸せなんだろうと何度も思った。でも、そんな夢は叶わないと分かっていたから口になんてしなかった。ある日母から、「20歳になって彩が望むならお父さんとお姉ちゃんに会えるけど、もういいよね。」と言われた。私はずっと父や姉のことを想っているのにと思ったが、それを母に言うことはできなかった。いつか会える日がくるならば、本当の父や姉に「ずっと会いたかったよ。」と伝えたい。お母さんは魔法が使える。私は毎朝5時に、体調不良の日を除いて、母と私の2人分のお弁当を用意している。その間に母が洗濯や簡単な掃除といった料理以外の家事をすることで回している。家事に慣れた母はテキパキと家事をこなし、私より先に家事を終わらせ◆本当の家族伊那西高等学校(長野県)篠崎彩さん◆お母さんは魔法使い愛知県立愛知商業高等学校(愛知県)長﨑真幸さん