keidai80ak

keidai80ak page 25/32

電子ブックを開く

このページは keidai80ak の電子ブックに掲載されている25ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
keidai80ak

23もうちょっと勉強する価値があるなということに気付いて。それで大学院行くわけですね。その時は勉強しましたね。それまでは勉強しなかった(笑)――その時に学んだことで、今、切り絵作家として独立した上で、役に立ってることはありますか?うーん。まあ、特に学問が役に立ったということはないけども、ただ、哲学なんかぐーっと集中して沈潜するような学問の世界でね、ぐーっとこう深く沈み込む、そういうことが大事でしょう。学問の世界はね。最初は広くなんだけども、自分のやる目的を決めたらぐーっと集中して深めていくでしょ?ああいう考え方というか姿勢というのは学んだ部分はあるのかも分からんね。あとまあ、物事に対する、例えば絵を描くにしても一つモチーフがあるよね。あれもどういうモチーフにするかっていうのは徹底的に考えないといかんから、その考える力というのかな。そういうのも養われたかも分からんね。ただ、誰かがやってるからやるんじゃなくて、自分がやりたいからやる、本当にこの好きな道をね。鈴木先生なんかは本当に学問的に非常にオリジナリティのある人だからね。オリジナルを作り出す、考え出すというのは共通するものがあったかもしれないね。――モノクロの作品が多くて、彩色してもワンポイントなのがほとんどだと思うんですけど、やはりそれはモノクロであることが重要なんですか?やはりモノクロの方が深いでしょう?色をつけると限定されるじゃないですか?十人いたら、十人それぞれが違う色を想像すると思うので。やはりバーというのは、年月を経るうちに深みが出てくるんですよね。喫茶店と違って酒場というのは営業のほとんどが夜なので、影の部分がほとんどなんですよ。色というのは、だんだん色褪せてくるでしょう?そして最後は白黒になっていくわけね。でも、白黒というのは時間がたっても変わらないんですよ。そういう意味で、白黒に僕はこだわっている。せいぜい色を使ってもワンポイント。あんまり色を使うと華やかにはなるけど、浅くなる感じがしてね。それに切り絵というのは黒が基本だから、黒が絶対入るわけ。で、黒の間に色入れても、黒に負けちゃうわけ。――酒場の中でも、人を描く作品が多いと思うんですけど、情緒ある顔とかを切り絵で表現するのは難しくないですか?難しい。顔が一番難しいね。職人さんについての連載をやっているんですよ。職人さんというのは、顔がいるわけ。目の眼差しと手の動きが絶対にいるわけです。ペンとか鉛筆だと、線の重ねによって陰影を作ってできるんだけど、切り絵だと線を切り抜くだけで表現しないといけない。あとはその瞬間の表情をとらえる。非常に難しいですね。だけど、難しいだけにやりがいがある、切り絵だけにしかとらえられない表情とか表現の仕方があるので。切り絵だけにしか表現できないものがあるので。――趣味を仕事にする時って不安はありましたか?それもあったし、私の場合三十八歳で独立したから。会社でもある程度頼りにされていたから、これはいつまでもおったら辞められへんからね。生活がどうこうというよりも、この道で飯を食いたい。その方が先に立ったんでね。もちろん大部分の人が反対しましたよ。反対しない方がおかしい。「東京行っても食えるはずがない」と。でもやってみないと分からないからね。たとえそれで飯が食っていけなくても、なんとかなるかと。不安は二の次やったね。それより仕事を辞めて、これから第二の人生が始まるんや、もう一回青春が始まるんやと、その喜びの方が大きかった。――人生を振り返ってどのように感じますか?よく切り絵で生きていく決断をしたと思います。それに切り絵というものに出会って幸運だったし、酒場との出会いも幸運だった。今でも酒場というとイコール僕になってるし、日本津々浦々の酒場回っても、僕を知らない人はいないから。僕を知らない人は勉強不足の人。この出会いは良かった。酒場の白黒の世界ね。切り絵の技法でもって表現できる。ぴったりの方法大経大×「?」=芸術