No.504

No.504 2014年9月3日(水)

観世の能と海老蔵の歌舞伎

 8月24日には、岡崎の京都観世会館で、今年に人間国宝となった梅若玄祥の「橋弁慶」の舞台を見ました。能が歌舞伎や文楽、落語など古典芸能のルーツになっているようなので、今年は、能に精通しようと、京都観世会の例会に時折、出かけています。誰かに、途中で寝てもいいんだよと言われて気が楽になりました。梅原猛・観世清和編の『能を読む』(角川学芸出版)という本があり、創作の背景や見どころ、セリフなどを解説してくれていますので、該当部分をあらかじめ読み、セリフはコピーして持っていき、鑑賞しています。ちょっとだけ、寝てしまう時間が減りました。
 「橋弁慶」は、有名な五条の橋の武蔵坊弁慶と牛若の話ですので、あら筋はよくわかりました。牛若の役は、シテ方の片山九郎右衛門の子供の片山清愛がしていました。可愛くて上手にしていて、能にしろ歌舞伎にしろ、役者はこうして小さい時から舞台経験を積んでいくのだなと納得しました。狂言は、茂山一平らによる「神鳴」で、おおいに笑えました。そしてもう一つ、須磨浦の松風・村雨姉妹と在原行平との話である「松風」を鑑賞して帰りました。

 9月3日には、京都南座へ市川海老蔵の歌舞伎を見に行きました。通し狂言「壽三升景清(ことほいでみますかげきよ)」という舞台で、海老蔵が4役を務めるのが話題です。中村勘三郎が生前見れなかったし(野風草だよりNo.498)、坂東玉三郎やお父さんの市川団十郎にしても、若い時や脂の乗り切った時の舞台を見ていません。そこで当年36歳の海老蔵は今一番人気上昇中と言われているらしいので、張り込んで花道のすぐ横の上席で見ることにしました。
 平家物語の中の「悪七兵衛景清」を中心にして話がすすみ、「関羽」「鎌髭」「景清」「解脱」の4場があり、圧巻は「景清」の場で後ろに巨大な海老が出てきて、大見得を切る場面です。「成田屋!」の大向こうの掛け声がかります。おっおっとうならせる場面あり、コミカルな場面もあって笑いあり、市川左團次・中村翫雀・片岡孝太郎らの脇役も上手で、4時間ほどを飽きさせません。歌舞伎の醍醐味を堪能したひと時でした。