学長・野風草だより

No.891~900

No.891 2018年12月8日(土)

41年間続けてきた関西農業史研究会

 関西農業史研究会は、『日本農農書全集』第Ⅰ期の発刊(1977~)に伴い、編集委員であった飯沼二郎先生(京大人文研教授)、岡光夫先生(同志社大教授)が、三橋時雄先生(京大農学部教授)と語らい、収録されている農書を読もうということで、1977年から始まりました。はじめは銀閣寺の三橋先生のお宅でしたが、やがて6月から京都大学の農林経済学教室の5階の会議室で月一回行うようになりました。しばらくして次第に各人の研究報告が中心となりました。会場も京大から同志社大学、大阪経済大学へと移りました。当時大学院生であった私は、研究会の案内、通信などをずっとお世話してきて、気がつけば2018年12月で41年、374回を数えるまでとなりました。
 研究会は毎回10~20人くらいで2時から5時頃まで徹底的な議論をやり、疲れたところで飲み屋に場所を移し第2ラウンドが始まります。ここでも遠慮会釈ない議論、批判が応酬されました。先生・弟子の関係ではなく、研究する者同士の対等の関係で議論させていただいたことがありがたく、懐かしく思い出されます。
 学会でもなく、ただ農業史好きが集まっただけの在野の研究会ですが、こうして長続きできたのは会員諸氏のご協力のおかげです。心から感謝いたします。私がこの歳まで研究を続けてこられたのは、この研究会があったからこそです。来る者は拒まず、去る者は追わずでやってきましたが、今後とも気楽に続けていきたいと思います。右の写真は、1983年4月と1989年6月の時の2次会の様子です。

 思文閣出版にご協力をいただき、この間会員の研究成果として、谷弥兵衛『近世吉野林業史』(2008)、伏見元嘉『中近世農業史の再解釈』(2011)、大島佐知子『老農・中井太一郎と農民たちの近代』(2013)、板垣貴志『牛と農村の近代史』(2013)、橋詰伸子『地域名菓の誕生』(2017)、土井浩嗣『植民地朝鮮の勧農政策』(2018)を出すことができたのは大きな喜びです。もちろん他の方々も研究成果を発表されています。伏見さんと大島さんの本は、『社会経済史学』第81巻1号(2015)で私が書評しました。出版されるたびに書評会とお祝い会をしていますが、右の写真は、9月に土井さんの本の書評会とお祝い会を先斗町の「よし菜」でした時のものです。研究会のホームページは、堀尾尚志会員のご努力で公開、更新されています。
 http://www.ka-ahcs.org

 また、近畿農書を読む会という全国各地の農書を訪ねる旅も、5月の連休明けに1981年以来現在まで続けています。もう37年になりましたので、ほぼ農書のある地域は訪ねました。会員の勉強と親睦(温泉、肴、酒など)を兼ねた修学旅行です。右の写真は、1987年5月に長浜縮緬の『蚕飼絹篩大成』を訪ねて、三橋先生の故郷である近江を旅行した時のものです。長浜の奥の須賀谷温泉で、琵琶湖周航の歌をみんなで大合唱し、先生はオールを漕ぐマネを上機嫌でされたことが懐かしく思い出されます。
 三橋時雄先生と飯沼二郎先生は、戦前の京大農史講座で黒正博士の薫陶を受けています。両先生に師事した私は、黒正博士からは直系の孫弟子にあたります。黒正博士が初代学長を務められた大阪経済大学で現在、研究・教育に励み、第13代学長を務めさせていただいているのは、奇しきご縁に感謝するばかりです。
 右の写真は1981年、大学院生の時、奈良県での古文書調査時のものです。