共同研究「アジアにおける産業集積」グループ研究会(2014年度第1回)

中小研共同研究「アジアにおける産業集積研究」グループ2014年度 第1回研究会

■ 中小研共同研究「アジアにおける産業集積研究」グループ(2014年度 第1回研究会) 報告

日 時:2014年7月29日(火)
             18:00~20:00
場 所:大阪経済大学C館6階 C65教室
出席者:10名
テーマと報告者:
  周 磊(大阪経済大学経済学研究科後期博士課程)
「中国対外直接投資における制度要因の影響
    ―民営企業を中心に」

【報告要旨】
 
2003年以降、中国の対外直接投資は急速に拡大し、2010年には非金融業で600億ドルに達しています。政府の対外直接投資促進政策(「走出去政策」)の効果と、国有企業、大型民営企業の海外進出が注目されています。
しかしながら、直接投資のデータからは中小民営企業の直接投資額の伸びが企業全体のそれを上回っていることが分かります。先行研究によれば、政府の対外直接投資促進政策の効果が小さい中国の中小民営企業が企業買収を含む海外進出を推し進めている要因を見出すことが本報告の主眼点です。 
 本来、中国の中小民営企業は税制面でも融資面でも国有企業、大型民営企業に比して大きな政策的制約を受けています。また、中小民営企業に対する政府の支援策も不十分です。改革開放政策以降、相対的に技術水準の高い外資を中央政府と地方政府が積極的に誘致したため、中小民営企業は技術の低い、低賃金に依存した労働集約的な事業に従事せざるを得なく、技術・経営ノウハウを蓄積する資金も時間ももつことができないでいます。すなわち、国内市場においては「所有優位」にない(競争力がない)状態にあるのが中小民営企業です。
 このように制度的に厳しい環境におかれている中小民営企業は、制度的制約を回避するため相対的に制約の少ない海外に進出し、海外企業の買収を通じて戦略的資産(技術・経営ノウハウ・ブランド)を獲得しようとするのです。そして、企業買収によって得られた戦略的資産を中国国内の自社にも適用し国内的発展をはかろうとするものです。
 中国の中小民営企業の対外直接投資の要因は、日系企業や台湾企業とは全く異なるものです。


以上
中小企業・経営研究所