研究関連

眞島宏明

競争優位をもたらすブランド戦略として商標を考える

実務経験を生かした知的財産権の研究

弁理士として平成3年から活動してきた経験をもとに、現在は商標などの知的財産を中心に研究しています。商標とは、自分が取り扱う商品やサービスを、他人が取り扱う商品やサービスと区別するためのマークです。

私は商標法の解釈を組み込んだブランド戦略の構築を主な研究テーマとしています。製造技術の向上やサービスに関する情報の拡散によって、各企業の製品やサービスの相違点は見分けにくくなっています。そのなかで、自社商品のブランドイメージを確立し、他社との差別化を図るためのブランド戦略は、年々重視されてきています。

商標登録された商品名やサービス名、図形マークといったブランドは、権利者だけが独占使用することができます。しかしどんな名前でも商標登録できるわけではなく、対象商品の一般名称は登録することができません(例えば腕時計に「watch」)。また、「マグマックス」と「マグナックス」など、他人の登録商標と類似する商標も登録されません。商標登録には法律上さまざまなハードルがあり、それがブランド戦略を左右する一面があります。

情報化、グローバル時代における商標の意味

最近の動向としては、特許庁が商標の登録料を下げ、権利を取得しやすいようにしている点が挙げられます。また類似の範囲も狭く解釈する傾向が見られます。これは後から出願した側にすれば、ありがたいことなのですが、昔から権利を持っている側から見れば、権利の範囲が狭まっているということになります。類似範囲の変動は実務に与える影響が大きいので、今後もこの問題に注目していきたいと思います。

また近年、商標の国際化が進んできました。昔は海外で商標権を得ようと思えば、それぞれの国の弁理士に頼んで権利取得の手続きを踏むことが必要でしたが、今はマドリッド協定プロトコル(通称 マド・プロ)という条約がありますから、日本での国際出願が可能になっています。英語で書類を作る必要がありますが、国を指定して日本の特許庁に国際出願できますので、手続的・費用的にも敷居が低くなりました。しかし海外ブランド展開をめざす場合には、国ごとの事情を検討しなければなりません。例えば、日本で使っている商品名が外国ですでに商標登録されている場合、その国だけ別ブランドをたてる必要が生じます。

弁理士に求められる能力は時代とともに変化

私は弁理士試験の合格者に対する実務講習にも携わっています。商標に関する弁理士の仕事は、特許庁に書類申請をして登録するところまでで、登録された後にどのように活用されるかは、商標の権利をとった企業の領域であると考えられがちです。しかし最近は弁理士の仕事領域が拡大し、商標をブランド戦略に結びつけ、企業経営という「攻め」の部分にまで踏み込んで企業にアドバイスできる専門家が求められています。

合格者によく言っているのは「弁理士に必要な力は1.論理的思考力、2.文章表現力、3.依頼人への説得力の3つだ」ということです。かつては、特許庁に提出する書類はわざと難しく書く傾向がありましたが、今は難しい内容を簡単にわかりやすく書くことが重要です。このように弁理士に求められる能力も仕事の内容も時代の流れとともに変化してきています。私も知財の現場に従事してきた経験を生かし、今後の産業の発展に貢献していきたいと考えています。