組織調査に関する専門的アドバイス『意識調査コンサルテーション』

企業や労働組合におけるアンケート調査は,正しく活用すれば職場の活性化や問題解決に役立ちますが,そのためには専門的な調査方法論の知識が必要不可欠です。本研究室は,組織での調査への専門的なコンサルテーションを行い,調査の設計,実施,分析などのお手伝いをすることができます。

現在までに,人材派遣会社における派遣労働者の職務態度についての調査,鉄道会社における乗務員の行動と乗客の反応についての実験,会計士の転職支援会社における性格診断ツールの作成,自動車レンタル企業におけるストレスチェックの集団分析,メーカー企業労働組合における職務態度についての調査などに関わっています。

何故コンサルが必要なのか

質問を考え,アンケート用紙を作成し,社内で配布・回収し,データからグラフを作成してプレゼン資料にする。表計算ソフトなどがあれば,多くの人がこうした一連の手続きを自力でできるように思えます。しかし,専門的知識に基づかない調査には多くの失敗のリスクがあり,そのリスクを無視して実施した場合,組織実態と異なる結果が出てしまう可能性があります。しかも,実態と異なる結果が出ていることに気付くことは非常に困難で,最悪の場合は無駄な改善施策に人や金を浪費してしまうことになりかねません。専門的なコンサルテーションがあれば,こうしたリスクを軽減することができます。

以下に,調査における主な失敗要因と,それを防ぐためのコンサルテーションのポイントを示しておきます(e.g. 高原, 2012)。

段階 調査におけるリスク コンサルテーションのポイント
契約 意識調査の過大評価/過小評価
調査では明らかにできない問題意識
組織の問題となっている事柄は意識調査を用いて解決できるか
受託調査よりコンサルテーションが適切か
調査計画 不適切なサンプリング
実現不可能なスケジュール
コストの超過
対象者(サンプリング率,サンプリング方式,比較対象の確保)
調査の媒体(質問紙/Web/インタビュー)
データ入力(アウトソーシング/インハウス,パンチ入力/OCR)
スケジュールの立案
役割の確認
実施コスト
仮説検討・設計 問題意識に基づかない仮説
実証不可能な仮説
共有されていない個人的な仮説
標準化された尺度の見落とし
仮説の検証に必要な項目の不足
不適切な項目
必要以上に詳細な/簡略化されすぎたデモグラフィック項目
多すぎる設問
回答しにくいインターフェース
仮説の適切さ
過去調査での使用項目
既存の理論や尺度
新規項目の設計方法
デモグラフィック項目の設計方法
質問紙/Web調査インターフェースの構成
調査実施 依頼時における誤解やトラブル
低回収率
回答の歪み
調査員(依頼者)の手続きや意識の統一
回収率・有効回答率
データ入力 分析に適さないデータ形式やコーディング
誤入力/誤読
入力,コーディング基準
誤入力率/誤読率
集計・分析 誤った集計・分析
結果の誤解
集計・分析手法
結果の解釈
活動 結果に基づかない対策
対策が行われない
不都合な結果の秘匿
対策立案会議
対策案と調査結果の整合性
調査対象者や組織幹部への報告
現場への介入方法

コンサルテーションによる関わりの例

コンサルテーションは,実施する調査の目的,対象,期間などによって様々な形態を取ることができますが,調査のプロセスにおける代表的な関わりの例としては以下のようなものがあります。

段階 関わり 期間の目安
計画 問題意識と調査という手段の適合性確認 数時間〜1日
対象者のサンプリングへのアドバイス・代行 数分〜1日
関連研究者・業者の紹介 数分〜1日
設計 調査設計に関するレクチャー 数時間〜2日
仮説整理のワーク 数時間〜2日
項目設計へのアドバイス,既存の理論や項目の紹介 1週間〜1月
質問紙のチェック 数日〜1週間
分析 仮説検証の代行 数週間〜数ヶ月
簡易分析用ツールの作成 数週間〜数ヶ月
調査報告書の作成 数週間〜数ヶ月
調査結果報告 数週間(準備)
活動 活動計画立案会議でのアドバイス 数時間〜数日
活動計画と調査結果の適合性確認 数時間〜数日
活動の評価・見直し 数時間〜数日

ご興味をお持ちの方は,以下までご連絡ください。

大阪経済大学 経営学部 高原龍二
〒533-8533 大阪市東淀川区大隅2-2-8
E-mail: takahara[atmark]osaka-ue.ac.jp
TEL: 06-6328-2431(代表)

研究成果

高原 龍二・上田 真由子・中村 志津香 (2021). 災害発生時の鉄道利用者の交通情報取得行動: 大阪モノレール利用者を対象とした大阪府北部の地震に関する調査 産業・組織心理学研究, 35(2), 263-274.
大阪府北部の地震の際に鉄道利用者がどの情報源から交通情報を取得し,どの情報源が役立ったのかを調査によって検討しました。

高原 龍二・釘原 直樹 (2021). ワンマン運転の鉄道におけるトラブル対処チェックリストの有効性の検討: モノレール乗務員を対象としたシミュレーション実験 産業・組織心理学研究, 34(2), 115-132.
モノレール乗務員を対象にトラブル対処チェックリストの効果を検証しました。チェックリストは行動の適切性を高めるものの,そのためには運用に工夫をする必要があることが示されました。

高原 龍二・上田 真由子・中村 志津香 (2019). 災害発生時の交通情報取得: 大阪府北部地震時の大阪モノレール利用者調査 日本心理学会第83回大会発表.
2018年の大阪府北部の地震発生の際に大阪モノレールの利用者がどの情報源に期待し,どの情報源を活用していたのかを調査した結果を発表しました。

高原 龍二・釘原 直樹 (2018). モノレール緊急停止時の適切な案内方法の検討: チャネルと案内間隔を要因としたシミュレーション実験 産業・組織心理学研究, 32(1), 43-54.
モノレール緊急停止時に乗務員から乗客への案内をどのように行うことが望ましいかを検討した研究を論文にまとめました。

高原 龍二・釘原 直樹 (2018). モノレール運転士のチェックリスト活用行動の促進: 運輸指令からの指示に着目して 日本心理学会第82回大会発表.
モノレール運転士のトラブル対処時のチェックリスト活用に運輸指令からの指示が影響する可能性を明らかにしました。

高原 龍二 (2018). ストレスチェックによる退職予測モデル 対人社会心理学研究, 18, 1-9.
ストレスチェックの結果や残業時間などの客観指標を用いることで退職行動が8割程度予測できることを示しました。

高原龍二 (2017). ストレス反応としてのストレスチェック低回答率 第25会日本産業ストレス学会発表.
ストレスチェックの分析において,回答をしない従業員の仕事の負担が大きいことを実証しました。

高原 龍二 (2017). モノレールにおける運転士のトラブル対処行動へのチェックリストの影響 日本心理学会第81回大会発表.
大阪高速鉄道株式会社様との共同研究において,2016年度に実施したチェックリストの効果検証を発展させた実験を行いました。

高原 龍二 (2017). ストレスチェックデータの分析における階層構造考慮の必要性: 多店舗型サービス業企業のデータを用いた検討 第58回日本社会医学会総会発表.
ストレスチェックの分析において,部署レベルと個人レベルの階層構造を考慮する必要があるかを検討しました。

高原 龍二・釘原 直樹 (2016). 正確性と好印象のジレンマ: モノレール車内における運転士のトラブル対処行動に関する検討 産業・組織心理学会第32回大会発表.
大阪高速鉄道株式会社様との共同研究において,モノレール車内での運転士のトラブル対応にチェックリストが役立つかを検討しました。

高原 龍二・釘原 直樹 (2015). モノレール緊急停止時の適切な案内間隔の検討 日本心理学会第79回大会発表.
大阪高速鉄道株式会社様との共同研究において,モノレール緊急停止時の案内放送の間隔が乗客の一時的気分などに与える影響を検討しました。

高原 龍二 (2014). 産業組織の心理的問題解決に向けたアクション・リサーチ: 組織風土の独自性を視野に入れた意識調査の活用 大阪大学大学院人間科学研究科博士学位論文.
それまでの研究をまとめて,博士論文として提出しました。

高原 龍二・釘原 直樹 (2014). モノレール緊急停止時の案内方法による乗客の心理の違い―適切な案内方法の検討― 日本パーソナリティ心理学会第23回大会発表.
大阪高速鉄道株式会社様との共同研究において,調査コンサルテーションの視点も活用した関わりを行い,モノレール緊急停止時の適切な案内方法を検討しました。

高原 龍二・本田 豊輔 (2014). 就業形態による労働意識の違いの検討 日本社会心理学会第55回大会発表.
パナソニック エクセルスタッフ株式会社様への調査コンサルテーションにおいて,正規労働者と非正規労働者の労働意識の違いを検討しました。

高原 龍二 (2014). 職場風土の短期的変化要因 対人社会心理学研究, 14, 53-60.
数ヶ月の短期的な期間における職場風土の変化と,変化の要因を検討しました。

高原 龍二 (2013). 製造業間接系部門における職場風土の変化要因 日本心理学会第77回大会発表.
製造業の関節系部門における職場風土の変化要因を検討しました。

高原 龍二 (2012). 意識調査に関するコンサルテーションの枠組み及び実践 産業・組織心理学研究, 26(1), 63-75.
組織の調査に関する専門的なコンサルテーションの有効性について,検討を行った論文です。


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