2024.02.09
学生生活
地方創生サークル企画の「もち麦料理コンテスト」優勝メニューを学生食堂で提供
地域の特産品の魅力を発信する学食特別メニューを開発

2022年に発足した地方創生サークルは、過疎化地域の魅力を発信し、地方創生のムーブメントを創り出すことを目的に活動しています。現在25名が所属し、経営学部長の江島由裕教授が顧問を務めています。2023年5月には、岡山県西粟倉村で「もち麦料理コンテスト 」を開催。同コンテストの優勝メニューをアレンジした「岡山県美作市産もち麦健康カレー」を11月13日から17日までの5日間限定で本学学生食堂において提供しました。地域関係者や小学生・高校生、本学生活協同組合(以下、生協と記載)など、多くの人を巻き込んでプロジェクトに取り組んだ、地方創生サークルの活動をご紹介します。

地域の人々を巻き込んだ、地方創生の取り組み

地方創生サークルは、過疎化が進む岡山県西粟倉村の出身である宮本瑠士さん(経営学部4年)が代表を務めています。宮本さんの「衰退する地域のために自分ができることをしたい」という思いから、本サークルは生まれました。そして、地方創生の取り組みの第一歩として、村に隣接する美作市の特産品「もち麦」に関わるプロジェクトを始動。目的は、「もち麦」を地域内外にアピールし、地産外商(地域で採取・生産・製造された商品を地域外で流通・販売する取り組み)につなげることです。

まずは、美作市立大原小学校、西粟倉村立西粟倉小学校、岡山県立津山東高等学校の協力を得て、地域の特産品を使ったメニューを考案する「もち麦料理コンテスト」を実施。優勝メニューは、西粟倉村の渓流で採れるあまごのフライに、パプリカなど彩り豊かな野菜をのせた「あまごのキーマカレー」でした。コンテストの終了後、サークルのメンバーは引き続き、「もち麦」の魅力を地域外にも広めるために、優勝メニューを本学学食での提供に向けて取り組んでいきます。

生協の協力のもと、多くの課題を乗り越えてメニュー開発

一般飲食店とは異なり、学生たちの昼休み時間に大量の食事を提供する学食には、安い価格、早い提供を実現するための独自の規定やオペレーションがあります。そのため、学食を運営する本学の生協の担当者と何度も協議を重ねる必要がありました。統括現場責任者によると、優勝メニューには生協で取り扱っていない食材が多く使われており、仕入れやコスト面でそのまま再現したものを提供するのはかなり困難だったと言います。「どのぐらいのコストがかかって売値はいくらになるのか、なぜ実現するのが難しいのかといった現状を説明し、代替案を検討するなど、時間をかけて話し合いました」

川魚であるあまごを仕入れるのは難しい、コストがかかり過ぎる、調理工程が通常よりも多く手間がかかるなど、学生たちは想定していた以上に多くの課題があると知り、実現不可能ではないかと不安になったことが何度もあったと言います。宮本さんは、「アイデアを実現することの難しさを痛感しました。子どもたちが考案したメニューを再現したいという思いを伝えつつ、一つ一つの課題について生協の方とお互いの考えを擦り合わせ、一緒にメニュー開発を進めていきました。生協にとっては異例尽くしの取り組みだったと思いますが、真剣に向き合ってくださり、感謝の気持ちしかありません」と話します。

企画構想から学食提供まで約1年を要しました。地域関係者、生協担当者、サークルメンバーの間で行われた話し合いは、80~90 回にものぼったと言います。試行錯誤の末、あまごの代わりに白身魚を食材にするなどのアレンジを行い、「岡山県美作市産もち麦健康カレー」が誕生。ボリューム満点の上、食物繊維など栄養素が豊富で、独特の食感も楽しめる「もち麦」を使ったカレーが完成しました。「もち麦」は美作市役所の協力により、安価に仕入れることができました。「これまでの活動で信頼関係を築けていたからこそ、協力していただけたのだと思います」と、宮本さんは笑顔を見せます。

もち麦を使用した特別カレーが学食利用者にも大好評

学食提供時には、「岡山県美作市産もち麦健康カレー」をPRするポスターを学食入口に掲示しました。作成したのは、同サークルで広報を担当する中島彩恵さん(経営学部4年)です。「たくさんの人に食べてほしいから、見る人の視点を意識したポスターを作成しました。文字のフォントや写真の配置など、人の目をひきやすいように工夫しました。さらに、もち麦の特長が伝わるように説明も入れました」と、中島さん。1~2日目の売れ行きが思ったよりも伸びなかったことから、追加でPOPも作成して学食内に掲示しました。「プロジェクトのために、自分ができる限りの対応をしたい」という思いからの行動だったと言います。


5日間の提供期間中、1日の平均注文数は約30食。1日40食の目標には届かなかったものの、食べた学食利用者からは大好評だったそうです。「普段のカレーと違って豪華」「プチプチした食感のもち麦がおいしい」「毎日でも食べたい」「もち麦とカレーの相性がいい」といった感想が聞かれました。小学校とオンラインでつなぎ、メニューのアイデアを出した小学生が、リアルタイムで学食での提供の様子を見れる機会も設けました。サークルメンバーの楫千帆美さん(経営学部4年)は、「子どもたちの笑顔が見られました」と喜びます。「『おいしい』という学生のコメントを聞き、メニューを考えて良かったと話していました。自分たちの企画で、小学生に今回のような経験を提供できたことをうれしく思います」

取り組みを終え、生協の統括現場責任者は、「学生が主導するプロジェクトでメニュー開発に取り組んだのは、初めてのこと。地域を盛り上げるためのサークルの活動は素晴らしく、学生たちの熱意も伝わってきたので、生協としてもできるだけ彼らを応援したいという思いで取り組みました。今回の取り組みをぜひ次につなげてほしい」とエールを送ります。

活動を通じ、多くの学びを得たサークルメンバーたち

コンテストの開催、学食でのメニュー提供という長期間のプロジェクトに携わった地方創生サークルのメンバーたちは、達成感やさまざまな学びを得たと活動を振り返ります。中島さんは、「少しでも多くの人に『もち麦』を知ってもらえる活動ができたと思います。一人にできることは小さいけれど、まずは自分が行動しなければ何も変わらないのだと学びました。前に進むのをためらいがちな自分を変えるきっかけになりました」と、自身の成長を語ります。

楫さんは、「地域に賑わいをもたらすのが地方創生だと考えていましたが、地域外に魅力を発信するなどいろいろな地方創生の形があるのだと気づきました。また、実際に取り組むことの難しさも感じました。卒業後は、相手の立場に立つことを大切にしながら、仕事を通じて地方創生に携わっていきたいと考えています」と、今後も地方創生に向き合っていく意思を示しました。

サークル代表を務める宮本さんは、プロジェクトを通じて最も多くの人と関わり、「人のつながりの大切さを実感した」と言います。「たくさんの人のつながりがあったからこそ実現できた企画でした。その関わりの中で、自分自身の学びもたくさんありましたし、次世代を担う地域の子どもたちに自分たちの力でできることがあるのだと感じてもらえたことが良かったと思っています」

地方創生サークルでは、一過性の取り組みで終わらせず、今後も活動を継続させていく考えです。他大学や公共施設と連携して大阪エリアで「もち麦」の魅力を発信する活動や、他地域を対象にした地方創生プロジェクトなどを計画しているといいます。同サークルの今後の活動にもご期待ください。

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