1946年創部の写真部は本学の伝統的な芸術会クラブで、現在は72名が所属しています。デジタルカメラだけでなく、フィルムの一眼レフでの撮影、暗室で現像という今では珍しい機材を使って活動しているのが特色。未経験からスタートする部員も多く、部員同士で協力しながら技術向上を目指して活動に取り組んでいます。年に4回作品展示会を開催するほか、学内外各所からの依頼を受けての撮影活動も行っています。今年度は新たな活動として、大阪府泉大津市議会「議会だより」に掲載する写真の撮影に、市議会事務局と共同で取り組んでいます。活動の経緯や取り組みの様子を紹介します。

この活動は、写真部副部長である池辺勇杜さん(経営学部3年)が写真を通じて地域振興に関わりたいと考え、自ら働きかけてスタートしました。行動を起こすきっかけとなったのは、経営学部 藤澤宏樹ゼミの合宿で訪れた東北での体験です。町の様子を見て現地の人の話を聞き、人口減少という課題を抱える地域の現状を目の当たりにし、当事者意識が芽生えたといいます。「もともと地域振興に興味を持って授業でも学んでいたものの、勇気が出なくて行動を起こすまでには至っていませんでした。でも、現実を見て意識が変わりました。自身の地元である泉大津市にとっても、将来は人口減少が他人事ではないかもしれません。まず、身近なところから自分にできることを探そうと考えました」と、池辺さんは話します。
クラブ活動で培ってきた写真の技術を活かして地元のために何かできないかと考え、市役所関係者の知人に相談したところ、「議会だより」の写真に困っていることを知りました。写真撮影は市議会事務局の職員が行っており、撮影の素材選びがワンパターン化しているのが悩みだとのこと。「ぜひお手伝いさせていただきたい」との提案は、「若い人の視点がほしかった」と快く受け入れられ、1年間、池辺さんを中心として写真部がボランティアで撮影活動に関わることが決定しました。
「議会だより」は、市議会が行ったさまざまな活動状況を報告するため、おおむね5・6・8・11・2月の年5回発行し、泉大津市の各家庭に配布されています。写真は、発行時期に合った風景やイベントなど、市内で撮影した複数枚を掲載します。池辺さんと写真部メンバーの藤田倖羽さん(情報社会学部3年)はさっそく5月号の撮影に臨み、「議会だより」には桜の花、幼稚園の入園式に参加する親子の写真が掲載されました。
「議会だより」の撮影は、配慮すべき点や撮影条件が多くあることに難しさを感じたと池辺さんは振り返ります。「撮影場所は市内に限られ、公的機関が発行する冊子なので背景や映り込みに注意しなければならず、紙面に合わせた構図を考えるなど、普段の自由な撮影とは違った視点が必要でした。こうした条件をクリアするのは難しかったですが、今までにない多角的な視点で撮影できたので勉強になりました。また、目的意識を明確に持って撮影できたのも良い経験です。『議会だより』を読んでみようと思えるのはどんな写真だろうかと考え、見る人の印象に残る写真の撮影を目指しました」
藤田さんも、「多くの人の手に渡る冊子の写真撮影を初めて経験し、依頼に対する責任の大きさを理解しました。依頼された条件のもと、依頼者側も自分も納得できる一枚を撮影することを意識しました」と、今回の撮影に参加したからこそ得られた気づきがあったと言います。

撮影した写真に対し、市議会事務局の担当者の方も好反応だったとのこと。池辺さんは、「紙面には『大阪経済大学写真部と共同制作しています』と記載され、自分たちの活動が形に残ったことがうれしかったです。家族にも自分の頑張りを喜んでもらえました。少しでも地域の活動に貢献でき、新しい活動にチャレンジできたことで、大きな達成感が得られました」と笑顔を見せます。
1年間の活動の成果次第で、次年度以降の活動継続も打診されているといいます。「他の部員からも参加したいという声があがっているので、一緒に協力して取り組んでいきます。また、泉大津市に限らず、他の地域にも活動を広げて地域貢献できればと考えています」と、今後の活動への意欲を語りました。
まずは一歩を踏み出し、自分にもできることがあるのだと実感できれば、また次の行動へとつながっていくのでしょう。これから、写真部ならではの地域振興、地域貢献を実現していってくれることを期待しています。
