地方創生のムーブメントを創り出すことを目的に、過疎地域の魅力を発信する各種イベントを企画・実施している、地方創生サークル。今回は福井県越前市白山地区において無農薬無化学肥料で育てられる「コウノトリ米」のPR活動に、地元小学生と共に取り組みました。2024年11月30日、道の駅「越前たけふ」で実施したイベントでは訪れた人々に、簡単なゲームを楽しんでもらいながら白山地区の特産品や豊かな自然環境について紹介しました。

越前市白山地区は、豊富な湧き水と緑に恵まれ、希少な生物も生息する自然豊かな地域。日本でコウノトリが最後まで生息していた地域の一つであり、多様な生き物を育む里山環境の保全・再生に、現在も地域全体で取り組んでいます。地域で生産されるコウノトリ米もその取り組みの一つ。農薬や化学肥料を使用せず、コウトノリのエサとなる小魚・カエル・ドジョウなどが生きていける環境で作られています。
今回の企画は、サークル前・副代表の小泉竣徳さん(経済学部4年)が自身の出身地である白山地区で活動をしたいという思いを持ったことからスタートしました。白山地区での活動を模索する過程で、白山小学校の校長先生から「小学生が作っている白山の特産品を活用した取り組みができないか」という働きかけがありました。
白山小学校では、5・6年生が田植えから稲刈りまでの工程を担うコウノトリ米づくりのほか、地域に生息する生き物や特産品について学ぶ里地里山学習に力を入れています。校長先生は、「小学生が自分たちも地域創生に携わっているという実感を持てるように、これらの活動を学校内で終わらせるのではなく、外部にも発信して広げていきたい」という思いを持っていたそうです。
小学校と協力してイベントの実施に動き始めたサークルメンバーは、白山で地方創生に取り組んでいる学校外の人々からも地域の現状や課題を聞き取り、企画内容を練り上げました。イベントの目的の一つは、豊かな自然環境と、その環境で育まれる特産品をより多くの人に知ってもらうこと。その過程で、小泉さんがこだわったのは、小学生と一緒にイベントを作り上げることです。
「都心と比べて地方の子どもたちは、外部の幅広い年代の人と関わる機会が少ないです。自分自身、大学に進学してから、いろんな人と関わる中で刺激を受け、学びを得て成長できたので、地元の小学生にもそんな経験をしてほしいと思いました」と、小泉さんは語ります。この目的のもと、小学生が来場者とゲームを楽しみながら交流できる企画を考え、会場は幅広い世代が訪れる道の駅「越前たけふ」に決定しました。
イベントに参加するのは、コウノトリ米づくりに取り組んでいる小学5・6年生です。担任の先生と打ち合わせを重ねると同時に、オンラインで小学生とお互いの活動を紹介し合い、準備を一緒に進めていきました。イベントに向け、白山に関するクイズや風景画、パンフレットの作成を担当した小学生たちは、楽しんで準備に取り組んでいたといいます。PRするコウノトリ米について知り、小学生との交流を深めるため、サークルメンバー数名が現地に赴いて稲刈りも体験しました。
イベントは主なターゲットをファミリー層に設定し、小さな子どもでも楽しめるコイン落としゲーム、クイズラリーなどを企画しました。ゲームの成功者には、コウノトリ米、本学キャラクターの「はてにゃん。」グッズをプレゼント。イベント参加者にはもれなく、小学校で作ったコウノトリ米を原料にした米粉煎餅と、小学生自作の白山地区パンフレットを配布します。会場内には、小学生の普段の活動や白山の魅力が分かる写真も展示します。

イベント当日はサークルメンバーと小学生が共に、呼び込みや受付、ゲームの説明を行い、来場者に白山の魅力や小学校の活動について伝えました。イベントスタッフとして参加したサークル代表の菰田瞳さん(経済学部3年)は、「私たち大学生だけではなく、小学生の参加メンバーにも積極的にイベントに関わってほしいと考え、自発的な行動につながるような声掛けを意識して小学生と接していました。すると、初めは恥ずかしくてお客さんに声も掛けられなかったのに、最終的には元気に声を出してくれて、『チラシを全部配り切る』と頑張ってくれたのが、とてもうれしかったです」と話します。
来場者の反応にも手応えを感じたと菰田さんは続けます。大阪の大学生と福井県の小学生が一緒に活動していることで興味を持ってもらえたのか、来場者と話が弾む場面も多かったようです。「なぜ大阪の大学生がこんなイベントをしているのかと、サークルの活動にも興味を持ってもらえました。何より白山地域の魅力を直接、自分たちの言葉で伝えられたのが良かったと思います」
道の駅で他のイベントが開催されていたこともあり、想定を超える170人近くがイベントに参加してくれました。地域外の人はもちろん、地元住民からも「こんな魅力があったんだと再発見できた」という声を聞くことができ、白山の魅力を発信するという目的も達成されました。

小泉さんは今回の取り組みを振り返り、「地方創生といっても、僕たち大学生には人口減少を食い止める、特産品の売上を拡大するといった大きな力はありません。でも、小さくてもムーブメントを起こしたり、地域の子どもたちにこんな活動が地方創生につながると知ってもらったり、活動の楽しさを伝えるのは、僕たちにもできること。イベント当日の小学生参加は任意でしたが、ほとんどの児童が参加してくれたうえ、積極的に関わってくれたし、担任の先生からも『イベントを楽しんでいた』と聞きました。子どもたちと一緒に取り組んだ今回のイベントに意義があったのではないかと感じています」と話します。
菰田さんも、「今回は同じ県内でのPR活動でしたが、県外に向けての発信も検討していきたいと考えています。県を超えての活動だといろいろな課題も出てくると思いますが、経済大学の学生ならではの知識を活かして、分析・検討して実践していきたいです」と、今後の活動への意欲を語りました。次はどのようなムーブメントを創り出すのか、これからの地方創生サークルの活動に期待が寄せられます。