大経大ENT(アント)塾は、起業や事業創造を志す学生のための課外プログラムです。単なる起業ノウハウの習得にとどまらず、「守りではなく攻め」「分析より行動」「既存より新規」「正確さよりスピード」といったアントレプレナーシップ・マインド(起業家精神)を育むことを重視しています。講義や起業家との対話、ビジネスプランづくり、実践的な挑戦を通じて、参加者は自ら考え行動する力を身につけます。スタートアップから個人事業まで幅広い挑戦をサポートし、学生一人ひとりが成長できることを目指しています。

2025年7月22日、大経大ENT塾塾長補佐の水野未宙也講師(経営学部)と、昨年度の同塾修了生である経営学部3年生の和田愛さん、坂口萌さんが本学に集いました。
起業家育成を目的に始まったENT塾は、今秋から第3期を迎えます。水野塾長補佐には塾の魅力や今後の方向性を、修了生のお二人には経験から得た学びや気づきを語っていただきました。

――ENT塾はどのように始まったのでしょうか。
水野 2023年1月に、経営者OB・OG組織である大樟春秋会のご支援を受け、経営学部でアントレプレナーシップ(ENT)研究を専門とする江島由裕教授を塾長に迎え立ち上がりました。資格取得のような短期的な成果にとどまらず、学生が自ら考え、経験を重ねながら未来を切り拓く力を育む学びの場としてENT塾は設立されました。
――ENT塾の強みは何でしょうか。
水野 ENT塾には二つの軸があります。ひとつは、起業を志す学生が集い、学び合えるコミュニティの形成です。他大学では部活動のように運営されている例もありますが、ENT塾でも主体的な活動の場として、学生同士がつながれる環境づくりを目指しています。そのため、参加者を広く募り、活動の間口を広げていきたいと考えています。将来的には、全国の本学OB・OGへとこの輪を広げ、誰もが大経大ENT塾のコミュニティに参加できる「場」をつくることを、塾長は構想しています。
もうひとつは、個人の夢に寄り添う起業支援です。大きなスタートアップだけでなく、「自分のお店を持ちたい」「自分らしい働き方をしたい」といった身近な起業も後押しします。副業や個人事業主としての第一歩を支援し、夢の大小を問わず「自分の人生を自分で切り開く力」を育む場でありたいと考えています。
さらに、ENT塾の強みは「考え、動き、試す」という実践的プロセスを重視している点にあります。学部横断の教員協力体制や、卒業生ネットワークを活用した起業家・投資家との連携も充実しており、すでに1期生から起業を果たした卒業生も誕生しました。

――昨年度まではどのように実施されていたのでしょうか。
水野 ENT塾は、基礎から応用、そして実践へと段階的に学びを深めていけるよう、3つのフェーズで構成されていました。
・フェーズ1「基礎編:広く学ぶ」
講義や起業家との対話を通じて、起業や事業創造について幅広く学びます。
・フェーズ2「応用編:深く学ぶ」
ビジネスプランコンテストへの参加を視野に、グループで事業計画をブラッシュアップします。
・フェーズ3「実践編:テイクオフ」
完成した事業計画を実装し、学内外のメンターの伴走支援を受けながら実践へと踏み出します。
――今年度の流れについて教えてください。
水野 これまでのフェーズ制を見直し、今年度は毎月1回程度、外部起業家を招いた少人数セミナーを実施します。学生と起業家が直接交流できる機会を増やし、対話や個別相談を通じて「起業は特別なものではなく、自分にもできる」と感じてもらえる場にしていきたいと考えています。塾長、内外のメンターと日々議論を重ね、プログラムは未来志向で、毎年進化していきます。
――実際に参加したお二人の経験を教えてください。
和田 1年生のとき、関西外国語大学の学生とチームを組み、ビジネスアイデアコンテストに挑戦する「ミラエガプロジェクト」に参加したことがきっかけで知りました。ENT塾では、コンテストのテーマ決めも学生主体。私は「睡眠に関するビジネスプラン」を提案し、立命館大学主催の「学生ベンチャーコンテスト」で入賞できました。大勢の前で発表できた経験は大きな自信になりました。
坂口 私は学内のポスターを見て参加を決めました。起業や新規事業に興味があり、実際に挑戦できる環境に身を置き大学生のうちから知識や経験を積みたいと考えたからです。チームで「眠っている特許を活用した地域観光促進」をテーマに取り組み、先生のアドバイスを受けながら議論を重ね、実現性の高いプランに仕上げました。

――ENT塾で得られた学びはどんなものでしたか。
和田 ゼロから生み出す難しさと面白さを実感しました。同時に、既存のものを磨き上げる力を養う必要があると感じました。修了後は課題解決に直結する資料づくりがスムーズになり、成長を実感しています。また、コンサルタントという職業にも関心が広がりました。また、ただ憧れを抱くだけであった「起業」も選択肢のひとつとして前向きに捉えられるようになったのは、大きな変化です。
坂口 私は協調する力です。異学年の仲間と議論を繰り返し、合意形成する難しさを経験しました。さらに、起業家の方々の話から新しい発想を得られたことは大きな刺激でした。授業への取り組み方も変わり、実家の果物販売サイトを自作するなど行動力が身についたと感じます。今後は、まずは社会で力を発揮し、その後セカンドライフでは実家の農業支援にも携わりたいと考えています。

水野 ENT塾は、起業家や教員など多様な人と出会える刺激的なコミュニティです。少人数だからこそ生まれる創発があり、気軽に話せる距離感も魅力です。「専門知識がなければ起業できない」という先入観を取り払い、誰もが挑戦できる環境を整えていきたいと考えています。
和田 ENT塾は、同じ熱量を持つ仲間と出会える場所です。先生や起業家から直接アドバイスを受けられる環境もあり、挑戦したい人には最高の場だと思います。
坂口 私にとって一番の収穫は「人との出会い」でした。少人数だからこそ深い話ができ、授業では得られない学びがあります。興味がある人はぜひ参加してみてください。