経営学部では、2024年9月9日(月)~ 14日(土)にかけて、「地域ビジネス研修」を実施しました。本研修の目的は、学生たちが日本各地の地域資源や課題、文化を知り、地方の魅力を最大限に引き出す新規ビジネスを開発することです。第1回目となる2024年度のミッションは「和歌山が生んだ世界的博物学者・南方熊楠の魅力を世界に発信するゲストハウスを企画せよ」。1~4年生の13名が参加し、熊楠×ゲストハウスをテーマにビジネスプランを考案しました。
9日(月)の学内事前研修では、ゲストハウス運営を手掛ける株式会社フィルド・齋藤貴之社長、経営コンサルタントの株式会社インサイト・関原深社長、日本政策金融公庫大阪創業支援センター・髙上勝彦所長を迎え、ピッチプレゼンを行いました。ここで得た助言をもとに、フィールドワークで調査する項目を整理したうえで10日(火)~ 12日(木)にかけて熊楠ゆかりの地である和歌山県田辺市と白浜町を訪問し、南方熊楠顕彰館や南方熊楠記念館をはじめ現地を視察。また、地元経営者らとの交流として、三村宜敬氏(南方熊楠記念館学芸員)からは熊楠と紀伊半島をめぐる諸問題を、多田稔子氏(一般社団法人田辺市熊野ツーリストビューロー会長)、芝三千哉・ゆかり夫妻(V COFFEE)からは田辺市のビジネスの現状と課題を、那須正樹氏(和歌山県立神島高校教諭)からは地元の神島高校の高校生が取り組んでいる商品開発に関するお話を聞かせていただきました。これらの様子は、地元紙『紀伊民報』(9月19日付)でも報じられています。
14日(土)には、フィールドワークで得た情報を反映して作り上げたビジネスプランを、ゲスト講師(齋藤社長、関原社長、髙上所長)に向けて発表しました。各チームの発表内容は以下の通りです。
チーム1は、地域の活性化と高齢者の雇用促進を目的とした「田辺駅近くの空き家を活用したインバウンド向けゲストハウス」を提案。このゲストハウスは、熊野古道を訪れる外国人観光客にもう一泊してもらうことを狙い、地域住民も利用できる共同スペースを備えています。ゲストと地域の人々との会話を通じて南方熊楠の魅力を発信し、地域産業を体験できる場として機能する点を訴求していることから、ソーシャルビジネスとして高く評価されました。
チーム2は、旧田辺町に人を呼び込むことを目的とした「扇ヶ浜でチルする(リラックスする)日本人富裕層向け二階建てゲストハウス」を提案しました。一階には誰でも利用できるカフェを併設し、南方熊楠に関連したメニューを提供。二階には扇ヶ浜の絶景を独り占めできる客室を設けます。少々高くても「泊まりたい」と思わせる特別感を演出するプランは、将来的に大きなビジネスチャンスになる可能性が評価されました。
チーム3は、今回のミッションである熊楠の魅力を発信することを目的として「熊野古道×熊楠をテーマにした中辺路のゲストハウス」を提案。内装に粘菌アートを取り入れ、熊野古道の観光客に熊楠のエコロジー活動を知ってもらう他、サブターゲットとして関西圏の小中高生を想定し、遠足や校外学習での利用も視野に入れています。また粘菌採集ツアーや熊楠ウォークを定期的に開催し、ファン層を拡大するプランも発表しました。研修テーマにしっかり沿ったプラン内容である点、すぐにビジネス化できる点が高く評価され、1位に選ばれました。
参加学生たちは、約1週間の研修の中で、事前準備や現場をしっかり見ることの大切さを実感し、フィールドワークやビジネスプランを作り上げていく過程で、チームで協働することの難しさや楽しさを感じたといいます。指導教員の辻晶子講師は、今回の研修について「熊楠×ビジネスは難しいテーマでした。にも関わらず、学生が果敢に挑戦してくれたことを熊楠研究者の一人として誇らしく思います。これを機に、熊楠や紀南の魅力が広まっていくことを期待しています。」と振り返りました。