2024年8月20日から23日の4日間、民事手続法をテーマにした集中講義「法学特殊講義」を開講しました。この講義は、民事訴訟法を中心とした法体系を学ぶことを主な目的としています。民法、会社法などの実体法が裁判の場でどのような役割を果たすのか明らかにしながら、民事訴訟法、民事手続法の基礎理論を学び、紛争解決のための手続きにおける公平な手続保障の理念の重要性について理解を深めます。
21日には、法曹界の要職を歴任された吉野孝義氏を講師に迎え、民事裁判を中心とした民事紛争を解決する手続きについて講義を行いました。吉野氏は元大阪地裁所長であり、大阪大学大学院高等司法研究科の客員教授を務めています。本講義を担当する吉垣実客員教授は、「吉野先生は法律家としてだけでなく、研修所の教官や裁判官、研究者、企業のリーダーを指導する講師も行っており、教育者としても一流です。先生から直接指導を受けられる機会は、学生にとって素晴らしいチャンスになると考えました」と、吉野氏を招聘した理由を語りました。

講義で吉野氏は、企業内紛争、国際紛争などに関する具体的な例を挙げ、紛争の解決のためにはどのような法的手段を講じるべきか、分かりやすく解説。実務において必要とされる知識についても言及します。例えば、「中小企業における企業内紛争では親族間の争いが含まれる場合も多く、会社法以外に相続などに関する法の知識も必要」といったことなど、実務の現場で役立つ多くの情報が学生たちに伝えられました。
また、裁判以外の解決手段である仲裁や調停に関しても触れられたほか、裁判の進め方や手続内容、民事訴訟の現状などについても解説されました。
講義の最後には、法を学ぶ学生に向け、「法律の数は膨大で、しかもどんどん変わっていきます。法律のすべてを覚えている人は誰もいないでしょう。ただ、専門家として間違えるというのは大変なこと。間違えないために、地道に丁寧に学んでいくしかありません」と語りかけます。吉野氏も、今でも1日に1つずつでも新しいことを覚えていこうと心掛けているそうです。「私自身も必ず実践できているわけではありませんが、そうした意識を持つことが大切です」
そして、幅広い視野で学びや仕事に取り組む重要性についても語ります。「虫の目で細かく、鳥の目で俯瞰して見る。これは、法に関わる仕事に限らず、どんな仕事でも必要なこと。両方の目と考え方を備えて物事に取り組みましょう。多様な観点で学び、その力を活かして社会で活躍してくれることを願っています」と話し、講義を締めくくりました。
長く実務に携わってきた吉野氏の経験に基づいた講義は、学生たちにとって、今後の学びを進めていく上で有益な気づきをもたらし、将来仕事をする際の心構えも学べた貴重な機会となったのではないでしょうか。
講義後には、経営・ビジネス法情報センターが開催した座談会にも、吉野氏に参加いただきました。同センターは、経営およびビジネス法の側面から情報提供活動、調査活動の支援などを行っており、多様なゲストを招いて毎月研究会を開催するなど、活発な情報発信に取り組んでいます。座談会では、経営学部の本間利通教授(経営・ビジネス法情報センター長)や講義を受講した学生を交え、「法と経営の融合」をテーマに、裁判所の組織づくりや海外と日本の裁判所の違いなどについて語り合いました。
