2024.11.08
学部・大学院
樫山武浩ゼミ 空間情報の技術を学ぶ、産学連携ワークショップ
航空測量の先端技術に触れ、災害対策のアイデア創出に取り組む

経済学部の樫山武浩准教授のゼミ生は、2024年9月19日、アジア航測株式会社が主催するワークショップに参加しました。航空測量を中心とした業務を展開する同社と樫山ゼミが連携するワークショップは、昨年に引き続いて2回目の開催。今回は2年生12人、3年生12人の計24人が参加し、航空測量の技術について学び、「災害」をテーマとした社会課題解決のアイデア創出に取り組みました。

災害時にも力を発揮する、アジア航測の技術について学ぶ

データサイエンス分野の研究に取り組む樫山ゼミでは、統計データを用いた社会課題の解決を研究テーマとしています。樫山准教授は、「ワークショップでは、航空機を使用した空間情報について学びます。この取り組みを通じ、社会で活用されるさまざまな種類のデータの一端に触れてほしいと考えています。また、データが実際に社会でどのように活用されているのかを知り、学生たちが学んでいるデータサイエンスの技術の多様な可能性に気付いてくれることを期待しています」と、今回の取り組みの狙いを語ります。

アジア航測は、航空機やドローンなどを用いて空間情報を収集し、データ解析から、活用方法の提案、実施プランの策定まで一連の技術サービスを提供する企業です。ワークショップでは、災害時における航空写真測量、航空レーザ測量の技術について紹介されました。災害時に、深刻な被害を受けて人が足を踏み入れることができない場所でも航空機を使えば写真撮影ができるため、土砂崩れなどの地形の被害状況 を迅速に明らかにし、取り残されている人がいないかといった被害の予測も可能となります。

児玉雄介さん(3年生)は、「上空から撮影した写真で、地盤のゆるみなど地理状況まで分かるという技術の高さに驚きました。今まで災害対策のニュースを見ても、どのような会社の技術が活用されているのかといった背景まで意識したことがありませんでした。自分の知らない企業や技術について、もっと興味を持っていきたいと思いました」と話します。

若手社員のサポートを受け、課題解決のアイデアを提案

アジア航測の事業と技術の説明を受けた後、学生たちが災害対策のアイデア創出に取り組んでいきます。まずは、災害時の被害や課題を洗い出し、解決するためにはどのような技術、対策が必要なのか、学生一人一人が考えてアイデアシートを作成しました。次に、4~5人のグループに分かれてディスカッションしていきます。アジア航測の若手社員が1人ずつグループにつき、議論の進行をサポートします。個々のアイデアを共有した上で、一つの課題解決策を練り上げ、グループごとに発表しました。

児玉さんのグループは、瓦礫を排除したり、要救助者を運んだりするレスキューロボットを提案しました。「被災状況や地理情報を記録できるカメラも搭載した多機能ロボットです。今回のワークショップで学んだ空間情報の技術を取り入れたアイデアです」

要救助者を運ぶ担架型ロボットのアイデアを発表したのは、中谷拳翔さん(3年生)のグループ。また、要救助者に癒しの効果をもたらす顔をロボットに搭載することを提案しました。「災害現場でパニックになりがちな要救助者の心を和らげたいと考えました。グループ内でたくさんの意見を出し合い、案をまとめることができました。一つのテーマについて深く考える機会を与えてもらえたと感じています。企業の方の前で発表するので、普段の授業とは異なる良い緊張感で取り組むことができました」

尾崎一慶さん(3年生)は、「社員の方の言葉に後押しされ、提案内容を深めることができました」と話します。「避難者のメンタルケアを目的としたコミュニケーションロボットを避難所に設置するアイデアを提案しました。実現可能かどうかを検討していたところ、『今ある技術も初めからあったわけではない。実現性を考えてアイデアをなくすのではなく、可能にするにはどうすればいいのか考えればいい』とアドバイスしてもらいました。今回のワークショップにとどまらず、この言葉を心に留めていろいろな事に向き合いたいと思いました」

今後の学びや就活につながる収穫を得た、学生たち

空間情報について詳しく学んだことがなかった学生たちにとって、未知の業種や技術を知れる貴重な機会となった今回のワークショップ。まったく知らなかった業界の情報に触れることで、「知らなかったら自分に向いている仕事かどうかも判断できないと気付き、情報を得ることの大切さが分かりました」と、今後の就活にもつながる気付きも得られたようです。

学生たちの取り組みの様子を樫山准教授は、「情報技術を用いた社会課題解決について、しっかりと考えられていました。また、企業と連携した取り組みにより、学生たちは多くの刺激を受けたでしょう。学生と年齢の近い若手社員でも、社会に出てからの成長は大きく、学生との違いを感じたのではないかと思います」と振り返ります。

樫山ゼミでは今後も企業と連携した取り組みを継続する意向で、「今回はアイデアの創出段階で取り組みを終えましたが、企業からのフィードバックを受け、アイデアの具現化を考えるステップまで踏み込んでいきたいと考えています。ほかにも、データサイエンス関連のコンペティションへの参加協力など、多様な産学連携の取り組みを検討していきます」と、今後の展望を語りました。

学生たちが学びを得ただけでなく、アジア航測からも「学生の柔軟な考えに驚かされた」とのコメントがあり、双方にとって意義のあるワークショップとなりました。

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