2025.01.07
学部・大学院
藤原忠毅ゼミ 150人を集客!千林商店街活性化プロジェクトの舞台裏
地域活性化の課題に取り組む「千林推しメシ祭り」

2024年9月21日~23日の3日間、経済学部の藤原忠毅ゼミの3年生4名が中心となり、千林商店街(大阪市旭区)で「千林推しメシ祭り」を開催しました。このイベントは、ゼミでのグループ研究において地域活性化の課題に取り組む中で実現したもの。千林商店街に関わる地域の人たちの協力を得てイベントの企画から運営まで学生が主体的に行い、3日間で約150人を集客しました。

衰退する商店街を盛り上げるために、できることを模索

藤原准教授のゼミではグループ研究に取り組んでおり、各グループは自分たちでテーマを決めて研究を行います。研究テーマを決定したのは2年の秋頃。グループごとに話し合って研究活動を行い、約3週間に1回のペースでゼミ内での発表を繰り返して研究を進めていきます。

伊藤優汰さん、平松一真さん、川田麻以さん、奥田蒼太さんのグループは、「空き店舗の多い“シャッター商店街”が増え、地域の活力が衰退しているというニュースを何度か見て気になっていたため、調べてみたい」という伊藤さんの提案に他のメンバーが賛同し、地域活性化を研究テーマに選びました。

研究を進める中で、本学からほど近い「千林商店街」を研究対象に選定。全長660mに及び、220軒以上の店舗が並ぶ歴史ある商店街です。現地調査をしてみたところ、大阪三大商店街の一つと呼ばれているにも関わらず、空き店舗も多いという実態を目の当たりにします。「実際に行ってみたら商店街の衰退を感じる一方、安くて美味しいグルメが楽しめるといった魅力もあることが分かりました。そんな商店街がどんどん衰退していくのは残念という思いから、自分たちができることを模索し始めました」と、平松さんは話します。

商店街でのイベント開催を検討して現地調査を進めていくうちに、「1000ピースプロジェクト」という団体があることを学生たちは知ります。千林商店街を盛り上げるために活動している非営利団体で、商店街組合と協力しながら夏祭りやフリースペースを活用したイベントなどを開催しており、商店街周辺に住む有志が参加しています。

早速「1000ピースプロジェクト」にコンタクトをとると、月例会議に招待され、快く学生たちを迎えてくれました。会議の場でイベントを開催したいとの意思を伝え、プロジェクトメンバーに協力を依頼。月1回の会議に参加し、アドバイスを受けながらイベント開催に向けた準備を進めていきました。

商店街に関わる人々の協力を得て、企画内容を深化

学生自身が商店街の大きな魅力の一つだと感じた“グルメ”をピックアップしたイベントを企画。準備を進める中で、「1000ピースプロジェクト」メンバーからのアドバイスに助けられる場面も多かったと言います。

「1000ピースプロジェクトの十数人のメンバーは、年齢は10代から60代、小学生から店舗オーナー、教員、一般企業社員と職業も幅広く、話し合いの場では多様なアイデアや意見が出てきます。商店街と普段から密接に関わっている団体なので、僕たちにはない視点で助言をしていただきました」と、伊藤さんは振り返ります。

当初は参加店舗の中でグランプリを決めるという企画を考えていましたが、競い合うイベントだと結果によって不快な気持ちになることもあるし、参加してくれない店舗が増えるかもしれないとの指摘があったそうです。「いただいたご意見を参考に、店舗オーナーに自慢の一品を紹介してもらい、参加者には“推し”の商品を見つけてもらう『千林推しメシ祭り』へと企画を変更しました」

平松さんは、「店舗と参加者の双方にメリットがある企画を」とのアドバイスが役立ったと話します。「実際に店舗オーナーと接してみても、利益についてシビアに考えておられることが分かり、店舗に必要経費の負担をお願いしようと考えていた自分たちの甘さに気づかされました。イベントに関わる人みんなが良かったと思える企画にしたいと考えられるようになり、計画を改善していきました」

また、「1000ピースプロジェクト」の協力により、夏祭りにミニゲームのお店を学生たちが出店することで、イベント開催に必要となる経費も調達できました。

資金集めのために参加した夏祭り「千林まつり」でのひとコマ

イベント内容は、スタンプラリーとグルメを掛け合わせた『千林推しメシ祭り』に決定。3日間のイベント期間中に3つの店舗を利用してスタンプを集めると抽選会に参加でき、参加店舗のグルメ引換券が当たるチャンスも。外れた場合もお菓子のつかみ取りができます。

そうして練り上げた企画書を持ち、学生たちは店舗オーナーに直接協力の要請をしていきました。「イベント準備で一番大変だったのは、飛び込みで一軒ずつ店舗に協力をお願いして回ったこと」と、川田さんは言います。大学の夏期休暇期間中にも店舗を訪問したそうです。「すぐに快諾してくれる店舗ばかりではありませんでしたが、丁寧に企画内容やメリットを説明し、明るく接することを心がけました。最終的に、25店舗がイベントに参加してくださいました」

イベントを告知するポスターやチラシも学生たちの手で作成しました。最終確認を怠ったために、印刷した後にチラシの一部に掲載内容の間違いが発覚するという失敗もありました。5月に準備をスタートして9月に開催するという短いスケジュールの中で焦る気持ちがあり、他にも反省すべき点が多々あったと言います。しかし、学生たちは「失敗しながら学べた」とその経験を前向きに受け止めています。

学生が企画・制作したチラシ
約150人を集客し、新規顧客獲得にも貢献

3日間のイベント参加者は150人を超えました。そのうち、約60人はこれまで千林商店街を利用したことがなかった人たちで、新規顧客の獲得に寄与することができました。学生たちの狙い通り、3つの店舗を回るスタンプラリー方式にしたことで、参加者が広い商店街のあちこちを周遊する様子が見られたといいます。

「目的の店舗に行く途中でも、いろんな店があることを知ってもらえたのではないかと思います。また、商店街の既存利用者からも、これまで利用したことがなかった店舗に行ってみるきっかけになったという声がありました」と、学生たちはイベントの効果を感じられたようです。また、店舗オーナーから「普段よりも来店者が多かった」と評価されたことがうれしかったと、学生たちは口を揃えます。

学外の多様な人と関わりながらイベントを開催した学生たちは、対人スキルやイベント運営手法など、多くの学びが得られたと言います。

今回の経験を通じて卒業後の希望進路が明確になったと話すのは伊藤さんです。「もともと不動産業界を志望していましたが、イベントをやってみて、地域に密着した不動産開発に興味を持ちました。将来は地域のシンボルとなるような不動産開発に関わっていきたいです」

藤原准教授は、「今回の取り組みによって繋がりができた千林商店街とは、何らかの形で今後も継続し、ゼミ生の研究に活かしていくことを考えたい」と語りました。

指導教員の声

藤原 忠毅 准教授
学生たちの取り組みについて、定期的に報告は受けていたものの、ほとんど口を出すことはありませんでした。彼らは自分たちで考え、行動にうつせていたので信頼して任せていました。しかも、千林商店街に関わる人たちが彼らに必要な気づきを与えてくれていました。学生たちが何かを企画する時、自分たちがやりたいことだけを考えて突き進んでしまいがちですが、助言してくれる人たちのおかげで、関わる人みんなのメリットを考えたイベントが開催できたと思っています。また、これまでのグループ研究では、データやアンケート結果などを使い、物事を外から観察して分析するという研究スタイルがほとんど。彼らのように研究対象の中に入り込んでの活動は、おもしろい試みだと感じました。その活動の中で副次的に、社会に出てからも役立つ力を身につけることができたと思います。

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