2025.03.14
学部・大学院
経済学部から飛び級で大学院に進学し、最短で税理士資格取得へ
福山そらかさん(経済学研究科2年)
大学入学後に見つけた、税理士という将来の目標

本学大学院 経済学研究科の修士課程を修了し、今春から税理士法人で勤務予定の福山そらかさん。学部・院に在学しながら税理士試験(※)の学習を進め、資格取得に必要な5科目のうち3科目に合格しました。大学院の学位取得による試験科目免除制度を利用することで、税理士資格を取得できる見込みとなっています。

経済学部に入学した当初の福山さんは、税理士資格の取得をまったく考えていなかったと言います。経済学部を選択したのは、数学と国語が得意という単純な理由から。コロナ禍で始まった学生生活では空き時間が多く、何かしないと時間がもったいないと焦りを感じ、独学で簿記検定にチャレンジして合格したのが税理士を目指すきっかけとなりました。

「簿記の勉強は得意分野の知識・スキルが活かせて、難しいより楽しいと感じました。もっとステップアップできる資格がないかと考え、進路支援センターを訪れて資格支援担当の職員さんに相談。何度も相談を重ね、実際に資格を持つ先生や講師の方を紹介していただいて話を聞くこともできました。その中で、一番興味を持ったのが税理士でした。得意分野を活かせるだけではなく、人と深く関われる仕事だと分かって魅力を感じました」と話します。

税理士資格取得を決意した福山さんは、学部生2年次の冬から、本学と資格スクール(資格の大原)が連携する税理士講座「簿記論」を受講しました。この講座では奨励金制度があり、合格後に本学後援会からの給付金を受けることができます。簿記論では、企業活動の記録を集計・計算する方法について学びます。福山さんは資格スクールでの授業や大学の授業、課題、アルバイトの時間を除いた一日の空き時間のほとんどを学習時間に充てました。「『簿記論』試験の開始時間が朝の早い時間だったので、それに合わせて早起きの習慣を身につけるため、毎朝5時に起きて勉強しました。参考書を使って繰り返し演習問題に取り組みました。年1回の試験日までに時間的な余裕がない中での学習は大変でしたが、3年次の夏の試験で合格できました」

※…税理士試験は年1回実施されます。科目合格制で一科目ずつの受験が可能。会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)の2科目と、税法に関する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち3科目(所得税法、法人税法のいずれかを含む)の計5科目に合格し、2年以上の実務経験を積むと税理士登録できます。会計・税法に属する修士・博士の学位取得者を対象にした、試験科目免除制度があります。

教員の助言を受けて、飛び級で大学院に進学

資格取得に取り組む福山さんに、もう一つの転機が訪れたのは3年次のこと。所属したゼミの担当教員、小川貴之教授に税理士を目指していることを話したところ、大学院に進学して科目免除制度を利用するという選択肢を示されたのです。この制度は、試験の分野(会計学科目・税法科目)ごとに一科目を合格している者が、会計・税法に属する修士・博士の学位を取得し、学位論文が国税審議会で認定されれば、残り科目の試験を免除されるというものです。

「小川先生に教わるまでそうした制度があることを知らず、学部を卒業したら就職して働きながら残りの試験科目に取り組むつもりでした。また、取得単位数や成績などの基準をクリアして学内特別入試に合格すれば、3年次修了時点で大学院に飛び級で進学できる制度があることも知りました。飛び級で進学するには学部を退学しなければならず、迷う気持ちも大きかったです。先生にも相談した結果、仕事をしながら試験に取り組むのは難しいと考え、できるだけ早く税理士資格を取得するために飛び級での大学院進学を決意しました」

大学院進学に向けては、小川教授のサポートに助けられたと福山さんは話します。学内特別入試では研究計画書に基づいての口頭試問が課されますが、小川教授の指導を受けて研究計画書を書き上げることができました。また、大学院経済学研究科の塚谷文武教授と話す機会を設けてもらったことで、大学院での学びをしっかりと理解した上で進学できたと言います。

目標の実現へと突き進んでいった福山さんですが、挫折しそうになったこともあったそうです。「小川ゼミでは3年次のうちに先行して一定水準の卒業論文を書きます。飛び級を予定している私は、研究計画書に関連した論文を仕上げる必要がありました。おまけに、税理士試験の『財務諸表論』の勉強のために資格スクールに通い、院試の準備もしなければなりません。キャパシティがオーバーし、もう進学をやめたいと先生に弱音をはいたこともありました。しかし『やれるだけ頑張ってみよう』と励まされながら、なんとか乗り切ることができました」

授業、論文作成と資格試験の学習を両立して目標達成

大学院進学を実現した福山さんは、経済学研究科「税理士養成コース」で授業や修士論文の作成に取り組むと同時に、税理士試験の学習も継続します。学部生3年次に「簿記論」、院生1年次に「財務諸表論」の試験に合格し、引き続き「消費税法」科目に取り組みました。「消費税法」は、これまでに受験した科目の中で最も難しかったと言います。学習内容が一気に増えることに加え、学んだ知識に基づいて文章を作成する問題も多く、より深い内容理解が必要とされるからです。修士論文の作成にも取り組み始めた時期で、その両立にも苦労したそうです。

「一日のスケジュールを決めて時間配分をし、メリハリをつけて学習しました。朝に頭の中を整理すると、スムーズに取り組みやすくなります。学習を継続する中で、同じ税理士資格の取得を目指す仲間の存在も助けとなりました。分からないところを教え合い、大変な思いを共有でき、みんなの頑張る姿が自分の励みになります。大学院に進学して良かったと思った理由の一つは、そうした仲間と出会えたことです」

修士論文の作成では、塚谷教授の手厚い指導が心強かったと言います。税理士試験との両立を前提とし、丁寧に指導してもらえたおかげで資格試験の勉強時間を確保することができたそうです。「先生がフランクに接してくださるので疑問点があればすぐに質問でき、一人で悩む時間が少なく済んで論文作成がスムーズに進みました」

消費税法の試験に1回目のチャレンジで合格し、修士論文も書き上げ、この3月に大学院を修了する福山さん。すでに会計科目「簿記論」「財務諸表論」、税法科目「消費税法」に合格しており、国税審議会での論文審査によって税法の残り2科目の試験免除が認定されれば、2年の実務経験を経て税理士登録が行われる予定です。

学部と大学院の学びを振り返り、「税の知識だけではなく、保険など幅広い知識を学ぶことができました。経済や財政について学ぶ中で政治にも興味を持つようになるなど、視野も広がったと感じています。また、専門的な知識に加え、論文の作成に取り組んでいくうちに論理的な思考力が身につきました。人とのコミュニケーションの場でも、頭の中で伝えたいことを論理的に組み立てて話せるようになりました。この力は、社会に出ても必ず役に立つでしょう。資格試験に取り組むだけでは身につかなかった力だと思います。もうこれほど集中して勉強する期間はないはず。とても貴重で充実した時間でした」と話します。

大学生活と資格試験学習を両立して濃密な5年間を過ごした福山さん。「気になることや疑問があれば、すぐに行動する性格です。その結果が今につながっていると思います。大変なことも多かったけれど、勉強するのが楽しいと思えたから、勉強を続けられました」と振り返ります。そして、「税理士は、一生勉強し続ける必要がある仕事です。これからも幅広い知識を身につけ、お客様のために活かしていきたいです。お客様に寄り添う姿勢も大切にし、信頼される税理士を目指します」と、仕事への意欲を語りました。

自ら道を切り拓いて目標を実現してきた福山さんは、社会でも新たなチャレンジを続けていくでしょう。その力を存分に発揮して活躍する未来が楽しみです。

経済学部長・指導教員の声

小川貴之 経済学部長
福山さん、税理士資格取得(見込み)おめでとうございます!飛び級で大学院に進学し、羽ばたいて行った福山さんの更なる飛躍を耳にし、とても幸せな気分です。いつも悩みながらも、ひたむきに努力を重ね、次々と壁を乗り越えてきた姿は、後輩たちの目標となることでしょう。税理士になられてからの益々のご活躍を祈念しています。本当におめでとうございます!

塚谷文武 教授
福山さんは、とても真面目で自主性に富んだ大学院生でした。学部のゼミナールで研究に必要な基礎的な力を着実に培い、修士課程では先を見据えながら論文作成に主体的に取り組んでくれました。大学院生時代に得たさまざまな経験は、今後の社会での活躍にも必ず活かされると思います。これからの更なる飛躍を心より期待しています。

【画像追加:2025/3/15更新】

2025年3月15日(土)、卒業式・学位授与式後に記念撮影。左から小川経済学部長、福山さん、塚谷教授
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