2025.09.05
学部・大学院
「人的資源管理」をテーマに経営学を“体験”する一日 ~高大連携ワークショップ~

経営学部では、8月9日(土)にオープンキャンパス3日目のプログラムとして「高大連携ワークショップ」を開催しました。本取り組みは昨年度にスタートし、今年度で2年目を迎えます。高校生約30名が参加し、矢野良太教授(経営学部)が講師を務める中、矢野ゼミの学生とともに10班に分かれて議論を展開しました。

身近なテーマでディスカッション

テーマは「人的資源管理(働く人の管理)」。高校生にとって理解しやすい題材として設定され、参加者は事前に説明動画を視聴し、ワークシートに記入したうえで当日に臨みました。当日はグループごとに大学生が進行役を務め、アイスブレイクを経てフラットな雰囲気で意見を交わしました。会社組織を部活動に置き換えて考えるなど、高校生ならではの発想も多く見られ、活発な議論が繰り広げられました。

各班の発表内容

グループワーク後、10班それぞれが議論の成果を発表しました。どの班も独自の視点から「働き方」について考え、多様な結論に至りました。

1班:働く上で最も大切なのは「仕事と給与の安定」であると議論がまとまりました。昇進や昇給の目標を明確に制度化することで、従業員が意欲的に働ける環境が生まれると結論づけました。

2班:「達成感」と「自己成長」を重視しました。チームで目標達成を目指す仕組みや、個人ごとの目標達成度に応じたボーナス制度を設けることで、やる気を高められると発表しました。

3班:「時間を選べる働き方」に注目しました。お金と時間の優先度は人によって異なるため、企業は多様な働き方を認め、柔軟な勤務形態を導入する必要があると指摘しました。

4班:「協力し合える職場環境」の重要性を強調しました。人間関係が良好であれば業務上の悩みも相談しやすくなり、新しい発想も生まれやすいことから、職場の人間関係づくりが企業にとって大切であると結論づけました。

5班:「体調や家庭の都合に合わせて休みやすい環境」が必要だと発表しました。適度な休憩を取りやすくしたり、体調について気軽に話せる雰囲気を整えることで、従業員が前向きに仕事に取り組めるとしました。

6班:「ノルマを設ける働き方」により達成感を促す方法と「雰囲気の良い職場づくり」によって助け合いを促し、モチベーションを高める方法が挙げられました。ただ両者をどう両立させるかが課題として示されました。

7班:「福利厚生の充実」と「公平な評価制度」に焦点を当てました。過剰な残業をなくし、有給取得を推進すること、さらに従業員の声を集めて反映する仕組みを取り入れることが、納得感のある働き方につながると提案しました。

8班:「長く働き続けられる職場づくり」をテーマにしました。成果を正しく評価し、透明性のある賃金制度を整え、仲間意識を高めることで従業員の定着率が上がり、企業の利益にもつながると発表しました。

9班:「時間と人間関係の両立」を取り上げました。勤務時間を柔軟に選べるようにしながらも、全員が顔を合わせ交流する時間を設けることで、職場の一体感を高められると結論づけました。

10班:「賃金の引き上げ」の必要性を強調しました。働く上でお金を最も重視する意見が多く、副業を容認することで所得を補う仕組みを提案しました。ただし、その場合の人材流出リスクを防ぐため、副業収入に制限を設けることが必要だと指摘しました。

高校生と大学生それぞれの学び

各班の発表後には、矢野教授や全体統括を務めたゼミ生から「その考え方では、こうした課題も生じるのではないか」「別の角度から見れば、こういう解釈もできる」といったコメントが寄せられました。これにより、それぞれが導き出した結論は単なる答えにとどまらず、さらに掘り下げて考える契機となり、議論の奥行きが広がりました。

さらに矢野教授からの統括では、「今回扱った内容は経営学のほんの一部であり、経営学には他にももっと多様な視点や研究がある」との説明がありました。高校生たちは、自分たちの議論を起点にして、大学で学ぶ経営学の幅広さと探究の魅力を垣間見ることができました。

矢野ゼミの田中詩多楽さん(経営学部3年)は「身近な事例を通じて高校生が考えを広げていく姿が印象的だった」と振り返ります。また、同ゼミの富永航太郎さん(経営学部3年)は「分からないからこそ自由に意見を出せる場になり、就職活動を控える自分たちにとっても学びが大きかった」と語りました。

今回のワークショップを通じて、高校生は経営学を「楽しい」「身近」と感じるきっかけを得るとともに、グループで意見をまとめる経験を通してリーダーシップや協調性を知る機会となりました。一方、大学生にとっても、共通の話題を見つける難しさや異なる意見を調整する力を培う場となり、就職活動を前にした大きな成長の機会となりました。

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