2025年8月8日、大阪市住之江区のインテックス大阪で日本経済新聞社大阪本社主催の「日経STEAM2025シンポジウム」が開催され、本校からも情報社会学部の学生チームや人間科学部スポーツ科学コースが参加・出場しました。このシンポジウムは、社会課題を解決して新しい未来をデザインできる創造的な人材育成をめざしたイベントで、エントリーした高校生や大学生が課題解決のためのアイデアを披露しました。

発表コンテスト「DiS STEAMゼミ」では、「ICTの普及により、学びのシーンはどう変わるべきか?」というテーマのもと、参加した22の学生チームがそれぞれのアイデアを提案します。本学からは情報社会学部の井上晴可ゼミに所属する「井上ゼミ第1班」「井上ゼミの6人」の2チームが出場し、「井上ゼミ第1班」が見事審査員特別賞を受賞しました。
[発表内容]
井上ゼミ第1班
「AIを用いた部活動の未来」
部活動の顧問の負担を軽減し、生徒の自主練習を効率化するアプリを提案。学校の部活動においては、顧問の先生の半数以上が担当する競技について未経験であることや校務の忙しさで指導ができないこと、その結果自主練習に不安を持っている生徒が少なくないといった課題がある。そこで、動画撮影した自分のフォームとお手本のフォームをAIによる骨格推定技術を用いて比較分析することで自主練習の効率化を図れるようにする。また、練習試合や合同練習のスケジューリングをサポートする学校マッチング機能で顧問の負担軽減を目指す。

発表を終えて、「井上ゼミ第1班」チームのトップバッターを務めた上田晴夏さん(3年)は、「今日の発表に向けて、課題の背景の調査や資料作り、原稿の執筆など、みんなで一所懸命取り組んできました。発表では緊張もしましたが、チームが持つ本来の力を発揮でき、これまでの努力の成果を出せたと思います。チームで取り組むのは楽しく、同じ目標に向かって切磋琢磨できるので、一人で取り組むよりも自分の成長につながっていると実感しています。原稿もみんなで確認したほうが完成度が上がるので、チームの大切さを再確認しました」と振り返りました。
またチームリーダーの宇治田善明さん(3年)は、「リーダーとして、みんなが集まって準備するスケジュールの管理などのほか、仕事にあぶれたメンバーがいないよう常に気を配っていました。発表に使ったスライドは図や絵を入れるなどして誰が見てもすぐにわかるよう意識して作っています。発表時の話し方も工夫できればよかったのですが、内容が多く時間内に収めることでいっぱいでした。他校には話し方の上手なチームもあったので、参考にして次につなげたいと思っています」と発表へのこだわりを話しました。
[発表内容]
井上ゼミの6人
「もっと!便利に!履修登録」
大学の講義と受講生たちの進路の関連性を見える化したWebサイトを提案。将来に不安を感じている高校生が多く、大学低学年においても卒業後のキャリアの方向性が定まっていない学生の割合が半数を超えている。こういった状況に対し、オープンキャンパスや授業計画書であるシラバスといった既存の情報発信は十分に応えられていない。そこで、卒業生の進路・取得資格と履修科目の情報を活用し、実際の大学の講義と進路・資格とのつながりを伝えるWebサイトを作り、学生の将来に対する不安の解消を目指す。

「井上ゼミの6人」のチームリーダーを務めた増田充貴さん(3年)は、「リーダーとして特にこだわったのは、取り組む内容がたくさんある中で、メンバーそれぞれの気持ちを尊重すること。もし嫌な思いをしているメンバーがいればそれを解消して、チーム全体で動けるように意識しました。今回のアイデアは、学生の目線で身近なものから取り上げましたが、具体化していくのに苦労しました。井上先生からは提案内容以外にも、見やすい資料の作り方やチームでの動き方などについてご指導いただき、将来社会に出た後にも必要な知識がたくさん得られたと思います」と話します。
質疑応答を担当した岡田兆さん(3年)は、「質疑応答については、予想される質問に対しては答えを準備し、もし難しい質問が来ても何かしらの答えを出そうという心がけで臨みました。一人目の質問者の方から予想外の質問がありましたが、答えられる内容だったので問題ありませんでした。高校に比べて大学では専門的な先生と一緒に、より深い研究ができるので、受賞の有無にかかわらず今回のコンテストへの参加は今後の人生にとっても大事な経験になったと思います」と振り返りました。
井上准教授は「学生主体で進めつつ、行き詰まったときには助言などして、学生が自分たちで壁を一つずつ越えていけるよう意識していました。今朝はあいさつの顔がこわばるほどみんな緊張していましたが、本番では学生たちが堂々と発表する姿を見られて嬉しく思いました」と学生たちの成長ぶりを喜んでいました。
会場の「大学体験コーナー」には、本学の人間科学部スポーツ科学コースが参加。来場者はマーカーの取りつけられた野球のバットをスイングして、バイオメカニクスにおける最先端機器「光学式モーションキャプチャシステム」を使った打撃動作解析を体験できます。
「銀色の反射マーカーを体やバットに取りつけ、複数台の赤外線カメラで撮影することで、反射マーカーの位置(三次元座標)を取得することができます。位置が分かれば速度や角度などの物理量を求めることができるので、そこから運動のメカニズムを調べたり、選手の動きの特徴や課題を抽出したりします。近年、プロスポーツの現場では、このような計測・分析が行われるようになってきており、選手のパフォーマンス向上に役立てられています」とスポーツ科学コースの森下義隆准教授。今回の体験コーナーでも、バットをスイングすると即時にバットスピードとスイング角度を算出し、フィードバックがもらえます。
森下准教授は、「科学技術の進歩によって、スポーツにおいてさまざまなデータを計測・評価できるようになってきています。そのため、効率良く選手のパフォーマンスを上げるためにはデータの活用が不可欠です。来場している高校生や大学生には最先端機器を実際に体験してもらい、スポーツ技能のメカニズムを追求することや、スポーツにおけるデータ活用の面白さや魅力を知ってもらいたいですね」と話します。アシスタントとして参加した瀧尾涼佑さん(3年)は、「授業では普通のビデオカメラで体の動きを撮影し、パソコンのソフトで解析しているので、今回最新の機器に触れられたのは貴重な機会で、卒論などにも役立てたいと思っています。僕自身、将来はスポーツの指導者になりたいと考えているので、その点からも最新機器のデータ解析による選手のサポートというのは興味深いですね」と今回の参加が自身のよい経験となったようです。

今回見事受賞したチームも残念ながら受賞を逃したチームも、また体験コーナーに参加した学生も、このイベントへ向けた取り組みの中で多くを学び経験しました。それは学問や研究内容に限りません。井上准教授は、「今回のコンテストでは学外の方々と関わる機会もあり、たとえばメールのマナーなど今後の就職活動の中で必要となることが学べたのもよかったと思います」と話します。
また、学生たちの視線は、秋に学内で開催されるZEMI-1グランプリへと向かっています。「今回の反省点は改善し、良かった点はさらに伸ばして次のコンテストに生かしたいと考えています」と次への意欲を語る声が聞かれました。学生たちのさらなる活躍が期待されます。