
経済学部で開講している全学オープン科目「海外実習(フランス)」では、現地の農業セクターの経済実態を実践的に学びます。温暖化、過剰生産、人員不足といった経済を取り巻く様々な社会問題がある中で、フランスの農場や工場へ赴き、ワインやリキュール、チーズなどの生産における経営戦略を知り、グローバルな観点から経済を考えるための知見を培います。

現地での学びをより深められるよう、本学での事前授業(全15回)と京都大学木津農場での事前研修が設けられています。農場へ足を運び、ブドウ樹をはじめとした果樹一般について、栽培から商品流通までの一連の流れを学ぶ総合的な内容です。
また、現地での実習にかかる費用を一部補助する制度もあり、学生たちのグローバルな学びを後押ししています。
2025年度は、パリ・ブルゴーニュ地方ディジョン市・南仏モンペリエ市で8月30日〜9月10日に海外実習を実施しました。主な実習先は、フランスの最高学府グラン・ゼコルに属する農業系の政府機関アンスティチュ・アグロのディジョン校とモンペリエ校です。世界各国からの留学生も多く、講義はすべて英語で行われます。
本実習は京都大学・摂南大学との合同で実施しています。今年度、本学からは学生9名が参加し、経済学部の鈴木隆芳教授が引率しました。
実習前半はディジョン市で、同地域の農業セクターの商品の特色、およびマーケティング戦略について学びました。リキュール工場では、製品としての品質を維持管理するための施策についてレクチャーを受けました。ここで造られるリキュール類は日本のサントリーも輸入しており、少し高級感のあるバーでも使われています。

後半は南仏のモンペリ校での実習です。地中海性気候特有のカラっとした晴天に恵まれました。
モンペリエ校の授業では、現地学生らとのディスカッションやプレゼンテーション、散策ワークショップなどを行い、学生同士で積極的にコミュニケーションを図りながら取り組みました。実習中のプレゼンやコミュニケーションは全て英語です。当初、日本語の通じない環境での作業に学生も困難を感じたようですが、日を重ねるにつれて、しだいに外国語の環境にも慣れてきたようです。
初日に行われた現地学生との共同プレゼンでは、日仏の伝統料理をアレンジした新レシピを提案しました。限られた時間内にレシピを練り上げ、粘土でお手製の模型を作り、供出環境や経済効果に至るまでを考察し、パワーポイントで発表します。なかなかハードな内容でしたが、全グループが英語でプレゼンをやりとげました。

モンペリエ校での実習最終日には、実習の総括としてプレゼンを行いました。会場にはモンペリエ校の学生や教員の皆さんが大勢駆けつけました。その分緊張も感じながら、学生たちは日仏の経済や文化の違いなど、現地での学びを発表。本学学生の中には、フランス語でのプレゼンに挑戦した学生もいました。
他にも同校での流通経済に関する授業や、モンペリエ大学でのレクチャーなどにも出席し、充実したプログラムの実習となりました。
モンペリエではキッチン付きのホテルに宿泊し、スーパーで購入した現地の食材を使ってオリジナル料理にチャレンジした学生も多くいます。

帰国後の9月13日(土)、鈴木教授が講師を務めるワイン講演会「第8回 ワインはなぜわかりにくいのか 続ワイン神話の解剖学」の中で、一般の来場者向けに実習の成果を報告しました。
実習参加者9名全員が登壇し、英語もしくはフランス語で発表します。緊張しながらも、一切原稿を見ずに懸命に話す学生たちの表情は真剣そのもの。発表後には来場者の方々から大きな拍手が贈られました。来場者アンケートには「精一杯の発表に感動した」など、学生の発表に対する好評の声が寄せられています。

海外実習で引率も担当した鈴木教授は「今回の経験を通じ、外国語でのコミュニケーションは、話せるか話せないかという能力の問題ではなく、話すか話さないかという意志次第、ということも実感してもらえたら嬉しいですね」と語っていました。