2026.01.16
学部・大学院
東淀川区創設100周年記念講演会の会場で、学生が未来のまちづくりを提案するパネルを展示
地域の未来を考える、講演会とパネル展示

本学は東淀川区役所と、まちづくりや地域福祉などの分野において連携・協働する協定を結んでいます。東淀川区が2025年に創設100周年を迎えることを記念し、2025年12月6日(土)、本学キャンパスにて記念講演会が開催されました。

当日は、本学経済学部の臼田利之准教授の司会のもと、これからのまちづくりについて専門家による講演が行われたほか、座談会が実施されました。臼田ゼミの学生たちは、受付や会場整理など講演会の運営に協力するとともに、会場前に「東淀川区の未来のまちづくり」をテーマに考察・提案したパネルを展示し、ゼミでの研究成果を発表しました。

災害にも強いまちづくりを進めていくために

今回の講演会は、「変わりゆく東淀川区 未来へつなぐ『ひと』『まち』の知恵」と題し、防災やまちづくりについて考える場として開催されました。はじめに、2人の専門家による講演が行われました。

1人目の講演者は、災害への危機管理対応や防災教育に携わってきた、東京大学大学院情報学環 特任教授の片田敏孝氏です。「荒ぶる自然災害と向き合う地域防災のあり方を考える」をテーマに、命を守るためには、個人・家庭・地域が主体的に災害と向き合うことが重要であり、互いに思いやりながら取り組んでいくことが防災の実効性を高める鍵であると語られました。

続いて、都市計画の専門家としてまちづくり活動や市民活動の支援を行ってきた、近畿大学 名誉教授の久隆浩氏が、「住民主体のまちづくりの意義と方法」をテーマに講演されました。新しい考え方や仕組みを取り入れながら、住民やNPOが主体となって公共サービスを担っていく動きが、今後さらに広がっていくことへの期待が述べられました。

講演に引き続き、臼田准教授がファシリテーターを務め、参加者からの質問に答えながら座談会が行われました。臼田准教授からの「町会などの地域組織がどのような活動をしているのか分からないと学生たちが話していますが、若者世代も含めて地域住民のコミュニケーションを深めていくにはどうすればよいのでしょうか」という問いかけに対し、久隆浩氏は「若者の中にも地域と関わりたいと考えている人はいます。それぞれの得意分野で関われる仕掛けを数多く設けることで、関係を築いていけるのではないでしょうか」と話されました。

また、「地域活動に参加しない住民が増えている中で、どのように地域の防災意識を高めていけばよいのでしょうか」という会場からの質問に対しては、片田敏孝氏が「地域の人々とできるだけ多くの接点を持ち、地域に存在する災害リスクを共有することが重要です。防災をコミュニティづくりのツールの一つとして活用していくことも有効だと考えます」と答えられました。

これらの意見を受けて臼田准教授は、「学生たちにとっても、地域住民と触れ合いながら防災活動などに取り組むことで、自分たちが将来、高齢者や要支援者になったときに住みやすいまちとは何かを考えるきっかけになります。本学としても、地域住民と関われる場づくりを考えていかなければならないと感じています」と語りました。

さまざまな立場で地域活動に関わる人々が集まった今回の講演会は、防災やコミュニティづくりにおける多様な課題を共有し、今後の活動に向けた多くのヒントが得られる機会となりました。

地域を知り、魅力と改善点を考察

会場前に設置されたパネルは、臼田准教授担当の基礎ゼミを履修する1年生と、臼田ゼミの3年生が作成しました。講演会の前後に、来場者の方々にも学生たちの学びの成果を見ていただきました。

臼田ゼミは、「縮小時代のまちづくり」を研究テーマとしています。1年生の場合、大学生になってから東淀川区を訪れ、通学路周辺しか行き来しないという学生が少なくありません。そこで、今回の取り組みでは、本学が所在する地域について知ることから始めました。

1年生は複数回のフィールドワークで、大学周辺エリアを調査し、まちの魅力と改善点を考え考察しました。4つのグループに分かれて、検討考察結果をパネルにまとめました。各グループは、都心からのアクセスが良く、緑豊かな河川敷や歴史ある寺といった魅力がある一方で、一部エリアではゴミの放置や違法駐車が見られ、高齢化の進行、子どもや大学生世代が楽しめる施設が少ないことなどを改善点として挙げました。

課題解決法としては、シャッター街となっている商店街や鉄道高架下を活用した賑わいの創出、大学生ボランティアを活用して清掃を行う「クリーン作戦」、さまざまな世代の住民が交流できる各種イベントの開催などを提案しました。

臼田准教授は、「地域を知る中で自分たちが過ごしている場所に愛着を持ち、地域のために何かできるような人材に育っていってほしい。こうした取り組みを通じて、自分たちもまちづくりの当事者であるという意識を持ってくれることを期待しています」と、話します。

大学生ならではの視点でまちづくりを提案

一方、3年生は、1年生よりも範囲を広げて東淀川区全体をフィールドに、学生たち自身でテーマを設定してパネル作成に取り組みました。フィールドワークを行い、大学内や区内の施設でアンケート調査を実施しました。大学内では400人もの学生にアンケートをとり、多くの意見を集めたといいます。また、区役所職員の方に、まちづくりの考え方や仕事内容についてのインタビューも行いました。

高架化工事が進む淡路駅周辺の高架下の利用案では、アンケートによる学生の声を活かして案を考えました。飲食・商業施設、スポーツなどの娯楽施設で賑わいを向上させ、人々がのんびりと交流できる憩いのスポットの整備を提案し、生成AIで未来予想図も作成しました。東淀川区で訪れたいおすすめ場所マップは、アンケートで観光スポットの知名度が低かったことから、創設100年の歴史を感じさせる場所を中心に紹介しました。身近な公園の魅力向上案では、子どもの遊び場、憩いと防災の公園、運動の公園と、3つの視点からリニューアル案を示しました。

学生たちは取り組みを通じ、「同じ大学生でも学年によって求める施設の傾向が異なり、価値観の変化が感じられたのは新しい気付きでした」「パネル作成は初めての経験。先生の助言を受け、限られたスペースの中で情報を分かりやすく伝えるための方法を学べました」と、さまざまな学びがあったと言います。

取り組みの成果は、区役所職員の方に向けて発表し、「未来を感じさせる提案内容でした」と評価されました。臼田准教授は、「アンケート調査結果などのデータに基づいた提案ができていました。学生ならではの視点は、まちづくりに関わる行政や事業者にとっても有益な情報となるでしょう。今後さらに、実際に地域や事業者の方々と学生たちが協議する場を設けるなど取り組みを深めていけば、地域にも学生たちにとっても有意義な研究になっていくと考えています」と語りました。

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