経営学部の戸田信聡ゼミでは、企業と連携したPBL(=Project Based Learning:課題解決型学習)に取り組んでいます。実際の企業が抱える課題の解決に向けて様々な角度からアプローチし、具体的な解決案を練り上げていきます。ゼミ生たちはその取り組みの中で、日頃の経営学の文献研究やデータ分析を活用すると共に、独創性や協調性、プレゼン力をはじめとした実践力も身につけることを目指します。
今年度は、戸田ゼミの2年生が4社とタッグを組み、それぞれグループに分かれ、約半年間のPBLに取り組みました。中間発表を経て、2026年1月15日・22日に最終報告会を実施。企業担当者の前で、自分たちのアイデアを発表しました。
2年生という早い段階でPBLに取り組む背景として、就職活動が早期化している状況も考慮されています。担当教員の戸田信聡准教授は「過去には、2年生で準備学習を行い、3年生でPBLを実施していたこともありました。しかし、就職活動が年々早期化する中で、3年生になってから初めて企業の方々と接するのでは遅く感じられるようになったのです。2年生のうちから企業の方々とPBLに取り組み、その経験を生かしてさらなる文献研究、実証研究、そして早期化する就職活動に対応してほしいと考えています」と話します。
環境・省エネソリューションを推進する総合商社、株式会社たけでんからは「企業ブランディング(学生からの認知度向上)」および「ウェルビーイング経営(意見箱や新オフィスの有効活用)」に関する課題が提示されました。
同社は “66年続く黒字経営”や“高い技術力”といった魅力をもっています。しかし、それらが十分に学生に伝わっていないのが現状でした。そこで、担当チームの学生たちが提案したのは、学生目線から考案したインスタグラムの広告機能と4コマ漫画を組み合わせた親しみやすいPR施策。学生たちはこの最終報告に向け、同社へのインタビュー調査に基づく、リアルな情報を組み込んだ4コマ漫画を制作。生成AIを補助的に活用しながら、大学生により伝わる内容になるよう何度も作り直して完成させ、4コマ漫画をツールにするメリットを具体的に説明しました。
ウェルビーイング経営の施策については、エイミー・C・エドモンドソンが提唱する概念「心理的安全性(Psychological Safety)」の重要性を示しました。“会社をもっと良くしようという思いからの意見であれば、自由に言えて、建設的な話し合いができる”___そのような安心感こそが、社員のウェルビーイングにつながると考えたのです。
具体的には、意見箱は匿名性を確保し、意見を出しても人事評価に影響しないことを明確にした上で運用すること、そして、意見を出す際に社員がハードルを感じないよう、LINEやQRコードを活用した意見箱の仕組みを構築することなどを提案しました。また、新オフィスのリフレッシュスペースの活用策については、他社事例だけでなく本学のリフレッシュスペースも紹介。本学の学生ならではの提案となりました。
食の安全や衛生管理を支える洗剤・植物油脂メーカー、セッツ株式会社からは「BtoBビジネス(法人向けビジネス)における知名度向上と売上アップ」の課題が提示されました。
担当チームは、同社の製品を直に体験してもらう機会を設けることが重要だと考え、企業向けの洗浄系専門展示会への出展に加え、自社での開催も提案しました。自社開催の際に必要となる会場使用料などのコストについても丁寧にまとめ、具体的で実現性をもった提案となるよう工夫を重ねました。
また、知名度向上の有効な手段として、CM作成やYouTubeショート動画の活用を提案しました。特にCMについては、キャッチーなフレーズや起用するタレントに至るまで、非常に具体的なプランを提示。その完成度に、会場が思わず笑いに包まれる場面も。企業担当者からは「耳に残りました」と高評価でした。その他、BtoBビジネスに特化したメールマガジン配信システムの導入など、認知拡大から顧客獲得に至るまでの具体的なマーケティング施策を、詳細な費用対効果のデータとともに発表しました。
パーテーションのトップメーカーとして、人々の快適な空間づくりを追求するコマニー株式会社からは、「学生に魅力的な会社説明資料の作成」「ブランディング」「新規事業の提案」の3つの課題が提示されました。
会社説明資料の作成にあたり、担当チームの学生たちはまず、本学学生72名を対象に「会社説明会でどのようなことを知りたいと思うか」というアンケート調査を実施。その結果を分析し、福利厚生や若手社員の紹介に重きを置いた会社説明資料を作成しました。
次いでブランディングに関する提案では、SNSを活用した短編ドラマや公式マスコットキャラクターの制作を提案しました。学生たちは、架空の公式マスコットキャラクター「こまニャン」の制作にも取り組み、アニメーションで紹介。キャラクターの愛らしさが場を和ませ、ユーモア溢れる発表となりました。
また、パーテーションのトップメーカーである同社に向け、新規事業を2つ提案しました。1つ目は「香り付けパーテーション」による空間演出。香りの感じ方に個人差がある点も考慮しながら、自分たちのアイデアを形にしました。2つ目は、「おうちに間づくり」と題した個人住宅向けリフォームです。BtoBビジネスが基盤の同社にとって、学生たちのこのアイデアは斬新でユニークなものだったようです。
リネンサプライ業界の最大手で、医療・福祉現場の環境づくりを支えるワタキューセイモア株式会社からは、「採用目線で考える企業のブランディング」と「高齢化社会を見据えた支援×ビジネス」に関する課題が提示されました。
学生たちは、まず現役就活生へのインタビュー調査を実施。その中で見えてきたのは、業界内だけでなく学生にも知名度を上げることの重要性です。そのための実践例として、合同説明会への参加強化や、医療・福祉系専門学校への積極的な訪問、事業に関連したノベルティの配布などを提案しました。また、すでに存在する同社の強みとして、パンフレットや企業HPを自社制作している点に言及。就活生にとって企業のそうした姿勢は好印象であることをインタビュー結果から示し、今後も自社制作を継続することが、同社にとってプラスになると述べました。
そして高齢化社会に即した新規サービスとして、「退院後1〜2ヶ月間のサブスクリプション型アフターサービス」を提案。退院直後の患者や家族の不安に寄り添い、寝具や食事の提供、生活支援をワンストップでサポートします。医療福祉事業をはじめとする、様々な事業を手がけている同社ならではのサービスとして、具体的な多角化戦略の提案を行いました。
各企業の担当者からは、「短期間でありながらアンケートやインタビュー、そして具体的な費用対効果も調べて根拠を示した点が高く評価できる」「社内ではなかなか思いつかないような学生独自の新鮮な着眼点に驚かされた」といった温かい講評があり、学生たちの自信にもつながりました。
最後に、指導にあたる戸田准教授は、「理論を実践につなげ、企業の方々の生の声とデータを照らし合わせて読み解く重要性を学んだはずです。このPBLの経験を忘れないうちにガクチカ(学生時代に力を入れたこと)としてまとめると共に、今後の研究にもつなげてほしい」と総括しました。
大阪経済大学では、今後も企業と交流・協働した実践的な学びの場を、学生たちに提供していきたいと考えています。