2026.03.18
学部・大学院
税理士 遊津麗香氏による講演会「法人税実務の現場から―経営判断を支える税理士の役割」

2026年1月27日(火)、経営学部「法人税法特論Ⅰ」の講義(担当:古賀敬作教授)で、「法人税実務の現場から-経営判断を支える税理士の役割」をテーマに、講演会を実施しました。講師としてお迎えしたのは、本学大学院 税法務プログラム修了生で、現在は税理士として活躍する遊津麗香氏です。実際の事例にも触れながら、企業経営と税務とのかかわり合いについて学ぶ、充実した講演の様子をご紹介します。

【遊津麗香氏 プロフィール】
福井県出身。「女性の経済的自立」への関心や、
経営者という存在が身近な環境で育ったことから、
税理士を志す。
2025年3月大阪経済大学大学院経営学研究科
税法務プログラム修了。
現在はゆたか税理士法人(大阪市)で、
税理士として経営者に寄り添ったサポートを
提供している。

この仕事の本質は、不安と闘う経営者に寄り添うこと

税理士の主な業務として、確定申告の作成、各種税金の申告・届出、税務調査の立ち会いなどが一般的に挙げられます。しかし税理士に求められる業務は、それらだけではありません。
法律に基づく適切なアドバイスをする“税務相談”や、経営パートナーとして経営判断材料を提供する“経営サポート”なども、非常に重要な税理士業務であると遊津氏はいいます。

税務相談では、様々な角度からクライアントに助言を行います。「この取引の税金はどうなる?」といったクライアントからの質問に対して明確な説明をするのはもちろんのこと、合法的な範囲内で節税策を提案すること、将来発生する相続税を試算し、その事前対策を講じることなど、税理士だからこそできる具体的・多角的なアドバイスを提供します。
経営サポートについては、決算書・試算表の分析からスタートします。それらを十分に分析することで、会社の現状を正確に把握することができます。それを基に、資金繰りの助言なども行いながら、将来ビジョンを数値化し、目標達成に向けた道筋を示していくのです。

クライアントである経営者の数多くは、ビジネスに精通はしていても、税に関する知識は不十分であることがほとんど。それでも経営者として、会社を守っていかなくてはならないのです。そのようなクライアントの不安を汲み取り、知識で守るのが税理士の仕事の本質だと遊津氏は語ります。

変化する社会の中で、より良いルートに導く

次に遊津氏が取り上げたのは、社会の変化と税理士の役割についてです。
日本では人口減少・高齢化・不動産価格高騰という3つの構造的変化が同時進行しています。そしてそれらは、中小企業に深刻な影響を与えています。「若い働き手が集まらない」「高齢の社長が引退できない」といった問題に直面している中小企業は少なくありません。遊津氏は、そのような状況だからこそ、最も身近な存在である税理士の役割がますます重要になっていると語り、クライアントからの実際の相談内容を取り上げました。

相談者は黒字経営の会社の経営者。所持する不動産のうち、時価が最も高騰した1つを売却し、高齢の妻に現金として残したいというもの。単純に売却すると、売却で得た利益に対して多額の税金がかかります。さらに、会社が黒字経営であるため、税率も高くなってしまいます。
遊津氏は、学生たちと議論を交わしながら、税理士が実際に提案した別ルート“分割型分割”(※)について具体的に解説しました。不動産ではなく会社の株式を売ることで、税負担を大きく抑えることができるのだといいます。
(※)分割型分割:会社分割の一種。既存会社が保有する事業や資産を、新設会社へ承継させる組織再編手法。

遊津氏は「税理士の仕事はただ税金を計算することではありません。より良い方法を考え、ゴールまでの最適なルートを設計することです」と総括しました。

AI時代、税理士はどう在るべき?

講演の最後に、遊津氏は、AI(人口知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の進化に伴う、税理士業務の変化について言及しました。それらを活用することで、定型・反復作業の自動化や、従来時間がかかっていた文書作成などの効率化が期待できます。そのことについて遊津氏が主張するのは「AIによって仕事が消えるのではなく、仕事の質が変わる」ということです。

例えば、AIが苦手とする領域として、顧問先の経営背景の理解、個別の経営判断、法的にグレーなケースへの対応、税務調査対応・交渉・説明責任などが挙げられます。AIはツールとして活用することはできても、人間の最終判断に置き換わるものではないという見方が主流となっているのです。遊津氏は「AI時代であっても税理士はなくなりません。むしろ、より付加価値の高い仕事へシフトしていき、高度な判断・提案ができる人材が求められていくのです」と力強く語っていました。

学生の声

・経営者一人一人に寄り添い、それぞれの人生の選択に責任を持つという姿勢は、とても尊敬しました。
・経営は景気にすぐに左右されるという言葉が、とても印象に残っています。だからこそ、経営者を支える専門家として、税理士の存在は必要不可欠であると改めて思いました。
・人口減少・高齢化・外国人労働者といった問題が中小企業に影響を与えていることや、その中小企業の問題にも税理士が携わっていることを知り、驚きました。
・印象に残っているのは、相談事例の分割型分割。「何を売るか」という視点を変えることで、適用される税率が大きく変わることが理解でき、勉強になりました。
・私は留学生ですが、講義を通じて、税理士という職業に対する考えが大きく変わりました。税理士は、経営者の人生や会社の将来に深く関わる、重要な役割を担っていることを学びました。

この記事のキーワード
この記事をシェア