2026.08.03
学部・大学院
外国人ゲストへの調査から探究した「ベストゲストハウス」の条件
GRAND HOSTEL LDK 大阪心斎橋 × 大経大経営学部 江島ゼミ

経営学部・江島由裕ゼミでは、西日本最大級のゲストハウス「GRAND HOSTEL LDK 大阪心斎橋」と連携し、外国人ゲストへのインタビューをもとに、「ベストゲストハウスとは何か」を探究しました。

2026年7月22日(水)に行われた最終報告会では、約半年間にわたる調査・分析の成果として、学生たちが交流促進や空間設計などの施策を提案。ゲストハウスの運営主体である株式会社フィルドと、事業主体である大和ライフネクスト株式会社の担当者との意見交換を通じて、実社会に求められる視点や考え方を学びました。

画像引用:GRAND HOSTEL LDK 大阪心斎橋 公式サイト
3チームが独自の視点から「ベストゲストハウス」を探究

約半年間にわたり、学生たちは外国人ゲストへのインタビューや現地調査を重ねながら、「ベストゲストハウスとは何か」という問いに向き合ってきました。ゲストの価値観や行動、滞在中の体験を丁寧に分析し、その結果をもとに課題を整理。最終報告会では、3チームがそれぞれ独自の視点から導き出した仮説や具体的な施策を発表し、企業担当者との意見交換を通じて提案内容をさらに深めました。

現地インタビューの様子

チームA「交流スタイルが違っても、会話を楽しむのは共通点」

Aチームが外国人ゲストへのインタビュー調査から見えてきたのは、「施設よりも、そこで出会ったゲストの方が印象に残っている」「他のゲストと話したことで新たな価値観を知れた」といった、宿泊先で生まれた交流の思い出でした。

そこから導き出した仮説は、「ゲスト同士の交流がベストゲストハウスにつながるのではないか」というものです。「会話や違いを楽しむ」「一緒に食事や観光を楽しむ」「長く交流が続く友人を作る」など、交流スタイルはさまざまですが、「会話を楽しむこと」が共通点であり、まずは気軽に話しかけられる雰囲気づくりが重要だと、交流レベルの違いを整理した図を用いて説明しました。

交流レベルを表現した図

そこから生まれたコンセプトは、「一瞬が一生の思い出に」。同じ場所に宿泊しているからこそ生まれる偶然の出会いや体験に価値があるという考えから、3つの施策を提案しました。

1つ目は、ゲストが自由に撮影したり黒板にメッセージを書いたりできる「チェキスポット」の設置です。2つ目は、円卓を囲むレイアウトによって自然な会話を促す空間づくり。そして3つ目は、「おすすめの飲食店」などの話題が入ったカプセルを引く「トークテーマガチャ」です。

これらの施策により、ゲストがリビングで過ごす時間が長くなり、新たなコミュニケーションが生まれるのではないかと発表を締めくくりました。

株式会社フィルドの担当者は「交流の促進は私たちとしても課題と捉えている。事業上のリスクヘッジとの兼ね合いも考えながら、提案を参考にしたい」と述べました。また、大和ライフネクスト株式会社の担当者からは、インタビューした外国人ゲストの交流レベルについて質問が寄せられ、調査結果をさらに深掘りする意見交換が行われました。

講評では、株式会社フィルド代表取締役社長の齋藤貴之氏が、交流スタイルを整理した図について「分析が分かりやすい」と評価。また、「『一瞬が一生の思い出に』というコンセプトは共感を生みやすく、その言葉のもとに人が集まれることに価値がある」とコメントしました。

チームB「ベストゲストハウスの主体はゲストである」

Bチームは、「宿泊先が主催するイベントはなかったが、自らパブクロール(複数の飲食店やバーを巡りながら交流を楽しむイベント)を開催したことが良い思い出になり、自分にとってのベストゲストハウスになった」という外国人ゲストの声に着目し、「ベストゲストハウスの主体はゲストである」という独自の考え方を示しました。

一方で、スタッフへのアンケートでは、「ゲストとの交流機会を増やしたい」と考える人は多いものの、現場への負担が大きいことから、イベント開催の頻度を増やすことには消極的であることも分かりました。そこでBチームは、「ゲストの主体性をLDKが支援する」という方針を掲げ、大きく2つの施策を提案しました。

1つ目は、世界各地でホステルを展開する宿泊ブランド「Selina」のプロフィールサービスを参考にしたオンラインプラットフォームです。宿泊中のゲストのプロフィールや交流希望度を確認できる仕組みとすることで、スタッフの負担を最小限に抑えながら、ゲスト主体のイベントを増やせるのではないかと説明しました。さらに、プラットフォームには「今日したいこと掲示板」を設け、ゲストが企画したイベントを告知できる機能や、イベントの様子を共有できるアルバム機能も提案しました。

もう1つは、Instagramの共同投稿機能を活用した情報発信です。ゲストが交流の様子を投稿する際にLDK公式アカウントを共同投稿者として設定してもらうことで、施設側の負担を増やすことなく、交流の魅力を発信できるとしました。

さらに、大和ライフネクスト担当者は、宿泊施設側が支援する立場という前提でオンラインプロフィールを活用する仕組みの独自性に注目。フィルド担当者からも、調査内容や提案の具体性を高く評価するとともに、「Instagramの共同投稿はすぐにでも取り入れたい」と前向きなコメントが寄せられました。

齋藤氏は、「ゲストハウスの主体はゲストである」という考え方について、「施設設計者はつい施設そのものに目が向いてしまうが、交流が全てだと割り切る考え方もあっていい」と評価。また、スタッフの視点を取り入れた分析や具体的な提案内容も印象に残ったと話しました。

チームC「『LDKだから泊まりたい』とゲストが思う理由が必要」

Cチームは、「自分から声をかけることはしなかったが、共有スペースで声をかけてもらった人と一緒に観光をした」という外国人ゲストの声から、「社交的な人が交流を促している一方、内向的な人同士では交流が生まれにくい」という視点に着目しました。

現在のLDKの交流は社交的なゲストに支えられている面があると分析した上で、「LDKだからまた泊まりたい」とゲストに思ってもらえる理由をつくる必要があると考え、ポルトガル・リスボンにある交流型ホステル「Goodmorning Solo Traveller Hostel」を参考に4つの施策を提案しました。このホステルは、宿泊者同士が自然に交流できるイベントや共用空間づくりに定評があり、世界中の旅行者から高い評価を得ています。

1つ目は、大学の留学生と交流するスポーツイベントです。「Friendship Card」を一人10枚配布し、自己紹介した相手とカードを交換することで交流を促します。
2つ目は、共用キッチンで参加者同士が朝食を作る「グッドモーニングデー」です。短時間で調理できる朝食を通じて、情報交換や自然なコミュニケーションのきっかけをつくります。
3つ目は、「たこ焼きパスポート」を持って周辺のたこ焼き店を巡る食べ歩きイベント「MISSION TAKOYAKI」です。SNSに投稿してもらうことで、ゲストの思い出づくりだけでなく、LDKの認知向上や他施設との差別化にもつなげることを狙いました。
4つ目は、一人で訪れたゲストが孤立しにくいラウンジの設計です。全員の顔が見える丸テーブルを中心に配置するほか、「トークエリア」「ワークエリア」「イートエリア」といった目的別の空間づくりや、照明の明るさにグラデーションをつけることで、自然な交流を促す空間を提案しました。

フィルド担当者からは、イベントの運営方法やエリア分けの考え方について具体的な質問が寄せられました。また、大和ライフネクスト担当者は、「2026年6月にオープンした『GRAND HOSTEL LDK 大阪新世界』でもエリア分けを取り入れている」と紹介し、「実際に採用している考え方と重なる提案が出てきたことは素晴らしい」と学生たちの着眼点を評価しました。

齋藤氏は、「選ばれ続ける理由」という宿泊業だけでなく、あらゆるビジネスに共通するテーマに向き合った点を評価。また、他のホステルをベンチマークとして分析を進めた姿勢や、施設設計にまで踏み込んだ提案内容を「印象的だった」と述べ、「学生の皆さんならではの視点を大切にしてほしい」とメッセージを送りました。

ゲスト視点から経営視点へ

最後の全体講評で、齋藤氏は「学生の皆さんの視点を大事にしたい」というメッセージとともに、「少し厳しい話をさせてもらいたい」と前置きし、「『ベストゲストハウス』という言葉をどこまで深く考えたか」と学生たちに問いかけました。

学生たちの提案はいずれもゲスト視点に立ったものでしたが、「ゲストの満足度が向上した結果、ビジネスとしてどのような成功につながるのかという経営側の視点が不足している」と指摘。「それはゲストハウスに限らず、あらゆるビジネスに共通する視点です」と学生たちへアドバイスを送りました。

株式会社フィルド代表取締役社長の齋藤貴之氏

江島教授は、「このプロジェクトはプロセスの一つ。今回の発見や課題について考え続け、今後に生かしてほしい」と学生たちへ呼びかけ、約半年にわたるプロジェクトは一区切りとなりました。

実際のゲストハウスや外国人ゲストへの調査を通して課題を発見し、自ら考えた解決策を企業へ提案し、現場からフィードバックを受ける――。一連のプロセスを経験した学生たちにとって、経営を実践的に学ぶとともに、課題発見力や提案力を養う貴重な機会となりました。

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