2026.09.08
学部・大学院
船旅の魅力を若者へ ― 新日本海フェリー・阪九フェリーに利用促進策を提案

2026年8月6日(木)、経済学部 臼田利之ゼミの3年生が、新日本海フェリー株式会社本社(大阪市北区)にて、SHKライングループの一角である新日本海フェリー株式会社と阪九フェリー株式会社に対し、「大学生のフェリー利用促進」をテーマにした提案を行いました。

学生たちは、フェリー会社の方々による講義やフェリー船内でのフィールドワーク、本学学生へのアンケート調査を通して、大学生がフェリーを利用する際の課題を分析。「フェリーのイメージ向上」「コストパフォーマンス」「移動時間の有効活用」の3つの視点から、大学生ならではのフェリーの利用促進策を発表しました。

新日本海フェリー株式会社・阪九フェリー株式会社関係者の皆さまへ発表
フィールドワークとアンケートから大学生の意識を分析

今回の取り組みは、大学生にフェリーをより利用してもらうための方策を考えることを目的に、臼田ゼミの3年生が春学期に進めてきたものです。

4月14日(火)には、新日本海フェリー株式会社の方々に本学大隅キャンパスにて臼田ゼミでフェリーについて講義をいただきました。学生とフェリーの利活用について意見交換をしました。

6月23日(火)には、臼田ゼミが阪九フェリー神戸乗り場(六甲アイランド)を訪問。船内の客室や設備などを見学し、実際のフェリーを体験しました。

現地調査のため阪九フェリー内を見学

見学前には「費用が高い」「船内は窮屈」「大人向けの乗り物」といったイメージを持っていた学生たちでしたが、実際に船内を見ることで印象が変化。宿泊費を含めて考えれば時間に余裕がある場合にはお得感があることや、想像以上にゆったりとした船内空間など、実際に足を運んだからこその気づきを得ました。

こうしたフィールドワークで得た気づきをさらに検証するため、7月16日(木)には「地域政策」の受講学生207人を対象に、フェリーの利用実態やイメージについてMicrosoft Formsを用いたアンケート調査を実施しました。

調査では、フェリーを「利用したことがない」と回答した学生が46%、「検討したことはあるが利用したことはない」が8%となりました。また、フェリーを利用しない理由では「そもそも選択肢として思い浮かばない」が最も多く、大学生にとってフェリーが旅行時の移動手段として十分に認識されていないことがわかりました。さらに、大学生が移動手段を選ぶ際には費用を重視する傾向がある一方、「船酔い」などフェリーに対するマイナスイメージも利用を妨げる要因になっていると分析しました。

学生提案資料より抜粋①
「イメージ」「コスト」「移動時間」の3つの視点から具体策を提案

調査結果やフィールドワークを踏まえ、学生たちは大学生のフェリー利用促進に向けた方策を、「フェリーのイメージ向上」「コストパフォーマンス」「移動時間の有効活用」の3つの視点から提案しました。

「フェリーのイメージ向上」では、まずフェリーの実態を大学生に知ってもらうため、YouTuberなどに実際に乗船してVlogを制作してもらうアイデアを提案。船内の様子や揺れ、Wi-Fiなどの通信環境を動画で紹介することで、フェリーを利用したことがない若者にも船旅を具体的にイメージしてもらうことを考えました。

さらに、停泊中の船を活用した船内見学イベントを開催し、実際に客室や船内設備を体験してもらうことで、「窮屈」「不便」といったイメージを払拭することを提案。Wi-Fiが利用できることをWebサイト上でより積極的に発信するほか、大学でのフェリーに関する講義や学園祭への協賛など、普段の学生生活の中でフェリーに触れる機会を増やすアイデアも示しました。

また、フェリー利用における「港からの移動」に着目し、フェリー会社が直営するレンタカー事業も提案。港からの移動に対する不安を解消するとともに、旅行先では自動車で移動する大学生にも利用しやすい環境をつくることを考えました。

「コストパフォーマンス」の視点では、大学生協と連携したフェリー旅行プランを考案しました。単純に運賃を値下げするのではなく、大学生限定の宿泊・食事付きプランや、旅行先で利用できるクーポン付きプランなどを設けることで、学生にとっての「お得感」を高めることを提案。生協を通じて申し込めるようにすることで、フェリーを学生にとってより身近な存在とし、手続きを簡単にすることも狙いとしています。

学生提案資料より抜粋②

さらに学生たちが着目したのが、フェリーの「移動時間の長さ」です。飛行機や新幹線のように移動時間そのものを短くすることは難しいからこそ、その時間を楽しめるものに変え、「フェリーに乗ること自体」を旅の目的にすることを考えました。

具体例の一つが「聖地巡礼の船旅」です。九州や北海道にアニメ作品の舞台となった地域があることに着目し、フェリーと聖地巡礼を組み合わせるものです。九州方面では、現在の大学生が小学生の頃に人気を集めた「妖怪ウォッチ」を例に、船内でのアニメ上映やコスプレイベント、限定グッズの販売など、目的地に到着する前から作品の世界観を楽しめる企画を考えました。

この発想をさらに広げ、船内での推し活イベントや、Wi-Fiと客室を活用したオンラインゲームイベントも提案しました。

また、長時間の乗船時間をサークルやクラブの練習などに活用するアイデアも提示。デッキでのダンス練習などを例に、移動時間を活動時間として利用することで、飛行機や鉄道との差別化を図ることを考えました。学生団体にSNSのダイレクトメッセージなどで直接利用を呼びかける方法まで検討しています。

このほか、海を眺めながら楽しめるバーやクラブイベントなど、船上ならではの開放感や非日常感を生かした企画も提案。学生たちは、フェリーの弱点と捉えられがちな「長い移動時間」を、ほかの交通機関にはない魅力に転換するさまざまなアイデアを発表しました。

学生提案資料より抜粋③

こうした取り組みにより、「フェリーを認知してもらう」「旅行の移動手段として選んでもらう」「利便性や楽しさを知ってもらう」「その魅力を広めてもらう」という好循環を生み出し、さらなる利用者の増加につなげることを提案しました。

フェリー会社と実現可能性を交えて意見交換

発表後には、新日本海フェリー株式会社と阪九フェリー株式会社の皆さまと、学生の提案をもとに意見交換を行いました。

船内イベントについては、「実際に運航している船の中でどこまで実施できるのか」という実務的な視点やキャラクターを活用した企画や大学生との共同企画などについて話が広がりました。周辺自治体のキャラクターと連携した実績も紹介され、学生のアイデアを実際の取り組みに照らし合わせながら意見が交わされました。

中でも、アニメや「推し活」と船旅を組み合わせるアイデアについては、乗船時間が長いフェリーだからこそ船内イベントが重要であるとの意見があり、学生ならではの企画として関心が寄せられました。

一方、実際の船旅ならではの課題についても具体的な意見が寄せられました。Wi-Fiは航行する場所などによってつながりにくい場合があることや、屋外では強い風の影響を受けることなどが紹介され、学生が考えるイメージだけではなく、実際の運航環境も踏まえて企画を検討する必要性について意見を交わしました。

意見交換では、学生の提案について「こちらが思いつかないアイデアが多々あった」との評価もありました。

発表後の意見交換の様子

臼田准教授は、実現の可否を最初から考えるのではなく、まず既成概念を取り払い、大学生ならではの自由なアイデアを出すことを重視したと説明。学生自身が「大学生ならどのような企画を好むのか」を考えたことで、今回のさまざまな提案につながったと振り返りました。

学生からは「初めて企業の方に提案する機会で緊張したが、とても良い経験になった。貴重な意見をいただいたので、さらに提案をブラッシュアップしていきたい」との声が聞かれたほか、「これまでは新幹線や飛行機を利用していたが、学生にもフェリーを使ってほしい」「今回の取り組みを通してフェリーへのイメージが変わり、自分自身も乗ってみたいと思った」といった感想がありました。

フェリーに関する意見交換とフィールドワークによる現状把握から、アンケート調査、課題分析、具体策の検討、企業への提案までを実践した学生たち。フェリー会社から実務的な視点でフィードバックを受けることで、自らのアイデアを社会で実現するために必要な視点についても学ぶ機会となりました。

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