2026.09.18
学部・大学院
浪速少年院見学と職員との対話から考える矯正施設の現状 ― 帝塚山大学との合同ゼミを実施

2026年9月1日(火)、司法・犯罪心理学を専門とする人間科学部・神垣一規ゼミの一環として、京都刑務所の見学および交流会を実施しました。本学からは神垣准教授とゼミ生13名、帝塚山大学からは心理学部・近藤隆夫教授とゼミ生8名が参加し、総勢23名での合同活動となりました。

1923年(大正12年)設立の浪速少年院は、創立100年を超える国内最古の少年院。少年たちが生活しながら矯正教育を受けている
職員との対話と見学を通じて見えた少年院の実像

はじめに、在院者の生活面や教育、社会復帰の指導を担当する少年院職員の法務教官から施設概要について説明を受けた後、普段立ち入ることのできない処遇区域を含む施設内を見学しました。直接在院者の様子を見ることはありませんが、その場所で実施されている取り組みの内容について説明を受けました。

見学先の一つである職業訓練施設には、ITや木工の実践的な技術を習得する訓練室が設けられています。出院後の社会復帰に直結するよう、実践的な教育が行われる場所です。特に電気工事に関する資格取得支援では、高い合格実績を維持しているとの説明がありました。

学生からは「社会で役立つ技能を身に付けることは、就労や再犯防止につながるだけでなく、自信の回復にもつながる重要な取り組みだと感じた」との感想が聞かれました。

展示室には、過去に在院していた少年たちが制作した木工品が展示されていました。日本地図のパズルやテーブルなど、複雑で完成度の高い作品も多く、学生のひとりは「自分が抱いていた非行少年のイメージとは異なっていた」と振り返ります。作品からは、技術の習得だけでなく、物事に粘り強く取り組む姿勢もうかがうことができます。これらの作品は、近くの商業施設で展示が行われることもあるそうです。

社会全体のライフデザインについて考える現代心理を専攻する学生からは、「こうした取り組みを通して矯正施設への関心が高まっていくとよいと思う 」との声も聞かれました。

また、寮では少年たちの生活環境について説明を受けました。生活上のルールとして、私語が制限されていることなどが紹介されました。トラブル防止のため施設設備の工夫がなされており、規律ある生活環境の実態に触れた学生は、プライバシーの保護と安全確保のバランスについても考える機会となりました。

職員への質疑応答から得られた学び

続いて行われた質疑応答では、法務教官から日頃の業務や少年たちとの関わりについての説明を受けました。学生から「仕事のやりがい」について質問が寄せられると、法務教官は「入院当初は反抗的な態度を示していた少年が、指導を重ねる中で成長し、『ありがとう』『これから頑張ります』という言葉を掛けてくれたときに、大きなやりがいを感じる」と述べました。少年に寄り添いながら更生を支える職員の姿勢は、参加した学生にとって強く印象に残ったようです。

見学前、多くの学生は少年院について「問題行動を起こした少年が厳しい環境の中で反省する場所」という印象を持っていたようです。しかし実際には、資格取得のための職業訓練に加え、年金制度や選挙制度など社会生活に必要な知識を学ぶ機会も設けられており、更生後の生活を見据えた支援が重視されていました。

また、栄養管理の行き届いた食事の提供や、法務教官が少年一人ひとりと丁寧に向き合い信頼関係を築いていることを知り、想像していたよりも良好な生活環境が整えられていることに驚いた学生も少なくありませんでした。

見学後の振り返りと交流

見学後は参加学生同士で振り返りを行い、それぞれの気づきや学びを共有しました。

今回の見学に参加した学生からは、「普段立ち入ることのできない場所で、少年たちがどのような環境の中で生活し、どのような指導を受けているのかを知りたいと思って参加した」との声が聞かれました。実際に現場を訪れたことで、ニュースや講義だけでは得られない具体的な理解につながったようです。

帝塚山大学近藤ゼミの学生とともに振り返りの時間が設けられた。昨年度の京都刑務所への見学にも参加した学生からは両者を比較して分析する声も聞かれた

昨年度実施された京都刑務所見学にも参加した本学4年生は、被収容者同士の関わり方の違いについて、両施設を比較することで見えてきたことがあるといいます。

刑務所では一定の場面で受刑者同士の会話が認められていた一方、少年院では犯罪に関する情報交換などを防ぐ観点から、少年同士の私的な会話が制限されていると説明を受けました。こうした運営方針の違いからも、少年院が再非行防止や教育的指導を重視していることがうかがえたと語りました。

学生たちは、今回の活動を通じて、司法・犯罪心理学の学びを実際の矯正教育の現場と結び付けて考える貴重な経験を得ました。少年たちの更生と社会復帰を支える多様な取り組みに触れることで、非行や犯罪を個人の問題として捉えるのではなく、社会全体で支えていくことの重要性について理解を深める機会となりました。

学生の声

大阪経済大学 人間科学部4年 正野貴夕さん

普段接することのない少年院を、合同ゼミという形で見学できる貴重な機会だと考え参加しました。昨年見学した刑務所や少年鑑別所との違いを知りたいという関心もありました。ゼミで学ぶ中で、家庭内トラブルの被害を受ける子どもへの支援の重要性を強く意識するようになりました。家庭や学校だけでなく行政も積極的に関与して、子どもや周囲の人が助けを求めやすい環境をつくることが必要だと感じています。見学で特に印象に残ったのは、「1年後には同じ電車に乗り、同じ街で暮らしているかもしれない」という職員の方の言葉です。犯罪や非行を自分とは無関係な問題と考えがちですが、決して身近な社会と切り離されたものではありません。社会全体が矯正施設や再犯防止への理解を深め、必要な支援や環境整備を進めることで、再犯防止や治安向上につながると感じました。先入観を持たず、多くの人に関心を持ってほしいと思います。

大阪経済大学 人間科学部4年 森本芽生さん

神垣ゼミでは、普段事例検討やロールプレイなどを通して犯罪や非行について学んでいます。このゼミの魅力は、知識を学んだり考えたりするだけでなく、今回の少年院見学のように実際の施設を見学し、その様子を見たりそこで働く方から直接お話を伺える機会があることです。犯罪の現状や傾向、施設での生活の様子など、普段の授業だけでは知ることのできないリアルを知ることができます。実際に自分の目で見て話を聞くことで、これまで持っていたイメージが変わったり、ニュースや資料だけでは分からなかったこと気づいたりすることもできます。このような経験を通して、今社会で起こっている多様な犯罪について様々な視点から考えられるようになることが魅力だと感じています。

関連リンク:
都刑務所見学と職員との対話を通じた学び ― 帝塚山大学との合同活動(2025/9/26発信)

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