2026.10.01
学部・大学院
ひきこもり支援×ボードゲーム ― 地域の「居場所づくり」を実践的に学ぶ

2026年9月16日(水)、大阪市東淀川区の大隅西会館で「ひきこもり・居場所づくり支援サポーター養成講座」が開催され、人間科学部・岩田光宏ゼミの学生が参加しました。

講座には、大学生から70代まで幅広い世代が参加。ボードゲームを活用したワークショップを通じて、世代を超えて参加者同士が交流しました。学生も地域の人々と関わりながら、ひきこもり支援や居場所づくりについて実践的に学びました。

ボードゲームを通じて「居場所づくり」を体験

今回の講座は、「こころの健康えとせとら」が主催し、人間科学部・岩田光宏ゼミが協力して、ひきこもり・居場所づくり支援のサポーターを養成することを目的に実施されました。ゼミ生も地域の人々とともに講座に参加し、居場所づくりについて学んだ後、参加者は3つのグループに分かれ、「犯人は踊る」「ito」「ストライク!」「ハゲタカのえじき」「ドメモ」などのボードゲームを囲んで交流しました。

「こころの健康えとせとら」は、岩田光宏准教授が2020年に発足したコミュニティ支援チームです。ひきこもりや不登校などによって生じる孤独・孤立状態から、人々が地域の中でつながることのできる環境づくりを目指して活動しています。岩田准教授は公認心理師・臨床心理士として、これまでひきこもりなどの支援に携わり、現在も地域での居場所づくりやコミュニティ支援に取り組んでいます。

ボードゲームは、単に楽しむだけでなく、人と人との距離を縮めるきっかけにもなっていたようです。主催者が講座終了後に実施したアンケートでは、「様々な出自の方と楽しく交流できた」「色々な価値観にも触れることができた」「普段考えない話を聞けて、とても良かった」といった感想がありました。

なかでも、自己紹介を兼ねたゲーム「佐藤です。好きなおにぎりの具は梅です。」については、「初対面のアイスブレイクに最適」「名前をすぐに覚えることができ、その人の人となりをある程度知れる」といった感想がありました。また、「ito」についても、参加者それぞれの価値観の違いを知りながら、協力して交流できるゲームとして受け止められていたようです。

講座全体については、「サポーターの模擬体験をできた気がする」「活動時と同じように、体験しながら取り組めた」という感想のほか、「盛り上げなければというプレッシャーはなく、色々なゲームを楽しめた」「穏やかな雰囲気で無理なく活動できる」といった声もアンケートに記されていました。主催者によると、講座全体の満足度を5段階で尋ねた項目では、回答者の平均は4.55点だったとのことです。

ゲームを楽しむことそのものが交流となり、無理に会話を盛り上げなくても自然に人と関わることができる。今回の講座では、そうしたボードゲームを介した交流のあり方を、参加者自身が体験する機会にもなったようです。

「うまく説明できないこと」から生まれた交流

岩田ゼミ3年生の松浦侑真さんは、3つのグループのうち一つでファシリテーターを務めました。特に難しさを感じたのが、初めてゲームをする参加者へのルール説明でした。自分では理解しているルールでも、それを一から分かりやすく伝えることは簡単ではありません。しかし、説明がうまく伝わらない場面では、同じグループの参加者同士が「こういうことではないか」と確認し合い、一緒にルールを理解しようとする姿が見られました。

当初は「ファシリテーターである自分がきちんと説明して進めなければならない」と考えていた松浦さん。しかし、みんなでルールを理解しようとする過程そのものが自然な会話を生み、それ自体が交流になっていることに気づいたといいます。

また、講座で紹介された「3H」の考え方も印象に残りました。「Head(その人が知っていること)」「Hands(その人ができること)」「Heart(その人が大切にしていること)」という視点から、その人が持つ知識や経験、好きなことに目を向ける考え方です。

松浦さんはこれまで、支援とは「困っている人に何かをしてあげること」というイメージを持っていました。しかし今回の経験から、できないことや困りごとだけを見るのではなく、その人が知っていること、経験してきたこと、大切にしていることにも目を向け、「その人自身を知ること」の大切さを学びました。

地域の人との交流を、ゼミでの学びにつなげる

今回の講座では、参加者から今後のサポーター活動についてもさまざまな声が寄せられました。「機会があれば参加したい」「もっといろんな人と交流したい」といった声に加え、「スマホ苦手当事者」が互いに教え合える勉強会や、働いている男性向けの居場所づくりなど、参加者自身の経験や関心を生かした具体的な活動案も挙がりました。

こうした声からも、「支援する側」と「支援される側」を固定するのではなく、それぞれが持つ経験や得意なことを生かしながら、人と人がつながる居場所づくりの可能性が見えてきます。

講座に参加したゼミ生にとっても、地域のさまざまな人と同じ場を共有し、実際に交流することは、「居場所」や「支援」について考える機会となりました。ボードゲームを楽しむこと、相手の話を聞くこと、その人について知ろうとすること。そうした日常的な関わりも人とのつながりを生み出す一歩になることを、地域での実践を通じて学びました。

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