2025年12月17日(水)、2025年度「北浜・実践経営塾」の第3回講義が開催されました。北浜・実践経営塾は、岡田晃特命教授のコーディネートにより、第一線の経営実務から学ぶ講座です。今回は、大阪の町工場からスタートし、現在は世界3極体制で事業を展開する共英製鋼株式会社の取締役相談役で本学特命教授の廣冨靖以氏を招き、事業戦略から組織改革まで幅広いテーマで講演いただきました。
冒頭では共英製鋼の事業について紹介されました。同社は国内鉄鋼、海外鉄鋼、環境リサイクルの3事業を軸に、鉄筋棒鋼では国内約2割のシェアを持つ電炉メーカーです。鉄筋は建物や橋、道路などに使用され、社会インフラの基盤を支える素材です。
製造方式として採用する電炉法は、高炉法と比べて需要変動に対応しやすく、CO₂排出量が少ない点が特徴。廣冨氏は「鉄スクラップは何度でも鉄に戻せる」と述べ、鉄鋼業が資源循環型ビジネスとして機能すると説明しました。電気炉の熱を活用した医療・産業廃棄物などの無害化溶融処理など、環境価値と事業価値の統合にも取り組んでいます。
共英製鋼は創業以来、ニクソンショック、オイルショック、バブル崩壊など経済ショックの影響を受けながら事業を継続してきました。廣冨氏は生き残りの背景として3点を挙げました。
一つ目は、創業者が「理念」や「夢」を言語化し続けたことです。戦後復興、公害問題、国際展開と時代に応じて会社の存在意義を示し、本業に集中した姿勢が金融機関や社員の共感につながったといいます。廣冨氏は「トップが夢を語ることは、組織の方向を決める」と語り、理念の役割を強調しました。
二つ目は金融機関・商社など支援者の存在、三つ目は社員の挑戦と粘り強さです。海外市場での事業黒字化や現地対応の積み重ねが、企業の実力となりました。
危機をどう乗り越えるかは、企業研究やキャリア形成を考える学生にとっても示唆に富む内容です。
2010年代以降、国内の鉄筋需要は長期縮小局面にあり、大株主の変更も加わって、経営統合か自主独立かの判断が求められました。廣冨氏は全国の事業所を回り、幹部や現場との対話を通じて成長可能性を検証。その結果、同社は「自主独立」を選択し、日本・ベトナム・北米の3極展開を戦略の柱として再構築しました。
その後、ベトナムでの事業再編、北米への再進出、カナダ企業の買収などを行い、現在では海外の売上・出荷比率が5割を超える体制となっています。地産地消型の生産・販売モデルは、国内市場縮小に対応する一つの解として紹介されました。
同時に、ガバナンス強化、人材採用の多様化、組織制度改革など、上場企業としての基盤強化も進められました。
講演の終盤では、廣冨氏がりそな銀行時代の「りそなショック」から得た教訓が語られました。
不良債権処理や人件費削減など厳しい意思決定が求められる中で、「課題を先送りせず、会社の存在意義と将来像を示すことが不可欠」だと実感したといいます。危機対応は特別な局面に限らず、企業経営における普遍的課題であることが示されました。
最後に同氏は「グローバルに考え、ローカルで実行し、ニッチで戦う」という言葉を紹介し、資源循環型産業の将来性と100年企業を目指す姿勢を示して講演は締めくくられました。
本講義は、実務家にとっては経営判断や組織改革の事例として、学生にとっては産業構造や事業戦略を生きた事例として学べる内容となりました。