2026.06.30
イベント・講演会
元バスケットボール選手・人間科学部 平地大樹客員教授による講演を開催
現役ビジネスリーダーが語る、スポーツマーケティングとキャリア形成

2026年6月11日(木)、人間科学部の「スポーツ健康科学概論」において、プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社代表であり、本学客員教授の平地大樹氏による特別講演が行われました。同科目は、毎回、外部から講師を招いて行われるオムニバス形式の授業です。

元プロバスケットボール選手である平地氏は、引退後に人材業界、Web業界でのサラリーマン経験を経て、スポーツマーケティング会社を創業。現在は日本全国のスポーツチームを対象に、ウェブやSNSなどのデジタルマーケティングを中心とした集客支援を展開しています。今回の授業では、「ようこそスポーツビジネスの世界へ」をテーマに、平地氏が手がけるスポーツマーケティング事業の紹介をはじめ、スポーツビジネス全般の動向、さらにスポーツに関わるキャリア形成について、ご自身の経験を交えてお話しいただきました。

[平地大樹氏プロフィール] プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社代表取締役。1980年、東京都生まれ。バスケットボール一色の青春時代を過ごし、大学卒業後プロを目指して渡米。帰国後プレイヤーとして活動し、引退後ウェブ業界へ。2011年、ウェブコンサルティング会社を起業。2016年、プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社を設立。現在164のプロスポーツチームを支援している。
ミッションは、日本のスポーツ全会場を満員にすること

平地氏はプロバスケットボール選手を引退後、ウェブ業界を経てスポーツマーケティング会社を創業。現在は日本に180前後あるプロスポーツチームのうち、164チームの集客支援に携わっています。「選手として結果を残せなかった」と語る平地氏は、ビジネスの世界で結果を残したい思いを強く抱いていたといいます。

平地氏の会社が掲げるビジョンは「スポーツに関わるすべての人がハッピーになる」。ミッションは「日本のスポーツ全会場を満員にする」と掲げています。平地氏の選手時代、試合に観客があまり入らず、選手やスタッフの収入は厳しいものだったといいます。「スポーツビジネスが盛り上がるためには人が集まらないといけない」と語る平地氏は、スポーツ会場を満員にするためのポイントを 4つ挙げました。

1つ目は、見ている人が心を動かされる “いい試合”をすること。2つ目のポイントは運営組織。「いい試合をするためにはお金が必要で、お金を生むには運営組織が重要です」と平地氏。3つ目のポイントは、いつどこで試合が行われるか知ってもらい、見に行きたいと思ってもらうマーケティング、ブランディング施策。4つ目は、スタジアムやアリーナなどのファシリティー(施設)。平地氏の会社では4つのポイントのうち、1つ目から3つ目のポイントで支援を行っています。

「マーケティング、ブランディングの観点から集客を提案する私の会社は映像などの広告コンテンツなどのクリエイティブが強みです。映像であれば、どういう映像を作りSNS のどこに投稿するか、またSNSでついた『いいね』 などエンゲージメント結果を報告し、改善策を伝えるなど『作る』『広げる』部分を担います」

スタジアム周辺のラッピング広告や、ファンクラブ会員を増やすためのプロモーション映像などの実例を交え、自身の仕事を紹介いただきました。

広がり続けるスポーツビジネス

次にお話しいただいたのが、スポーツビジネスの全体像と、スポーツに関わる職種です。プロスポーツ、アマチュアスポーツ、設備運営や周辺産業などスポーツ市場が広がっていることをスポーツ庁のデータを示しながら解説いただきました。

ここで、平地氏から学生への問いかけが。「国内にはどんなプロリーグがあるでしょう? 野球、バスケットボール、サッカー以外で挙げてください」との問いに、教室からはバレー、ラグビーという回答が。平地氏は、ほかにも卓球、バドミントン、女子サッカー、ハンドボールのプロリーグがあることを補足し、こうしたプロスポーツリーグやチームでの仕事についても解説しました。

スポーツマーケティングに関わりの深い仕事としては、チケット販売、広報、地元自治体との連携を担う地域振興担当、そしてスポンサー営業があります。平地氏は「一般に日本のプロスポーツにおいて、収益の半分以上はスポンサーからの収益で、チケットによる収益は30%から35%、その他はグッズ販売による収益などです。スポンサー営業は地味だけど重要な仕事なので、もっと日の目を浴びる存在になれば」と紹介しました。

選手に直接関わる仕事としては、プロの場合は選手、監督、コーチ、トレーナー、アナリスト (データ分析)など。アマチュアの場合は自治体のスポーツ課や観光課など、公務員としてスポーツに関わる仕事があります。その他、学校の先生やアマチュアのコーチ、各競技の協会のスタッフやスポーツ用品メーカー、記者やカメラマンなどの仕事もあります。
「スポーツにはいろんな形で携わることができること、いろんな仕事があることを認識してもらえば」と、多様な職種があることを紹介いただきました。

キャリアは「点」。「線」ではない

最後にお話しいただいたのが、スポーツに関わるキャリア形成についてです。スポーツビジネスで道を拓いた平地氏も、この仕事に一直線にたどり着いたわけではありませんでした。

「キャリアは右肩上がりに上がっていかないということを皆さんにお伝えしたい。スポーツそのものを仕事にすることもできるし、スポーツ以外のことを仕事にして収入を得るという選択肢もあります。やりたい仕事に到達する途中に、そういうタイミングがあってもいいと認識してもらえれば」と、平地氏がこれまでに経験した仕事と収入との関係を示しながら自身のキャリアを振り返りました。

平地氏は選手兼リーグスタッフだった時代、“やりたい指数” は高かったものの収入面は厳しく、選手前に入ったアパレルの会社では給料は上がりませんでした。選手引退後に入った人材紹介会社の仕事では、うつやリストラも経験。その後に入ったウェブ業界は成果を出せば給料が上がる世界で平地氏の肌に合い、マネジメントなども経験して、3年半後に起業。さらに4年後にはスポーツマーケティングの会社を立ち上げ、「やりたいことで納得のいく収入が得られるようになった」といいます。

「キャリアは『点』。『線』ではない。第一候補の仕事につけなかったとしても、第3候補でも気にする必要はないと伝えたい。いろんなことを経験しながら、できることが増えてくると、『こんな未来もありそうだ』と、次のキャリアを描きやすくなります」

一般に、キャリア形成の考え方としてwill(未来像)からはじまる「will→ can(資格やスキル)→ must(今、するべきこと)」と言われることがありますが、mustからはじまる「must → can → will」もあることを、松井秀喜氏とイチロー氏を例に挙げて紹介。松井氏は大きな目標を掲げず一打席一打席を頑張るというタイプ(must型)。イチロー氏は1シーズンの打撃目標を公言して実行するタイプ(will型)です。

平地氏の場合、最初は選手としての未来像を掲げたwill型で、選手引退後はできること、するべきことを積み上げるmust型に。ビジネスマンとしてできることが蓄積され、次の未来像を実現することにつながりました。

「will型とmust型、どちらの型でもいいし、型が途中で変わってもいい。実際、私の場合も、今はまたwill型に変わってます。ただ、できることをやるときも、やりたいことがあって頑張るのと、そうでないのとでは全然違います。大事なことは今、ここで全力を尽くすことだとお伝えしたい。線になっていなくてもいい、それぞれのところで、点を濃く打ってくださいね」

最後に学生たちへのメッセージとして、平地氏の会社がロゴを手がけ、事務局の支援もしている「TOKYO UNITE」(東京を拠点とするプロスポーツチームが協力し、子どもに未来を見せるプロジェクト)の映像を視聴し、講演を締めくくりました。

授業を受けた学生からは「多様な職種がスポーツを支えていることを知り、選手以外の形で競技に関わりたいと感じた」「遠回りに見える経験も将来につながることを知ることができ、自分の可能性を狭める必要はないと感じた」「置かれた状況や環境を、すべて自分の生きていく糧にしようと考えることができた」などの感想が寄せられました。

さまざまな経験を経て現在の仕事にたどりついた平地氏の講演は、学生たちの視野を広げ、将来に向かって前向きに歩むエールとなったようです。

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