2026年7月16日(木)、人間科学部の講義「スポーツ健康科学概論」において、「トップアスリートを取り巻く環境 ~最高のパフォーマンスを支える多様な要素~」をテーマに講演会を実施しました。講師としてお迎えしたのは、本学客員教授で女子柔道オリンピック金メダリストの谷本歩実氏です。
谷本氏は、オリンピック選手が背負う「日の丸」の重圧について、選手や指導者が極限のプレッシャーの中で闘っている実例を交えながら語りました。恩師・古賀稔彦氏から学んだ「金メダルを目指す覚悟」と同時に持つべき「負ける覚悟」について解説し、挑戦には成功と失敗両方の覚悟と心構えが必要なのだと述べました。
谷本氏は、「努力が必ずしも結果につながるとは限らない――。そんな底知れぬ重圧や緊張と闘うトップアスリートたちを支える活動に携わっています。選手たちは競技こそ違えど、共通して『常に最悪の状態を想定し、心身の両面で最高の準備を徹底する』という姿勢を大切にしている」と語りました。またドーピング検査の厳密さには、学生たちから驚きの声が上がりました。
医科学的な観点で推奨される日々の生活スタイルや、試合当日の過ごし方はもちろん、日頃から何でも相談できる「環境づくり」が重要で、感謝の気持ちを口にできる環境下ではパフォーマンスが向上するのだそうです。そのために日々アスリートは、仲間や応援してくれる人への思いを力に変えながら、限界への挑戦を続けています。
「強いチームには一体感があり、役割を担い合うことで仲間を支えています。誰も一人にしないことが大事!」 と谷本氏は強く訴えました。
さらに学生たちに向けて、仲間が何か勝負に挑むとき自分ならどんな声をかけるか、考える時間が設けられました。学生たちは、自分の身に置き換えて考えることで、挑戦する側だけでなくサポートする側の抱える難しさも実感したようです。
極限状態でも平常心で戦うためには、究極の集中力が要求されます。谷本氏は現役時代、本番で実力を発揮するために、内なる不安に目を向けるのではなく、やるべきことへ目を向ける――つまり「心の矢印を外へ向ける」ことを心掛けていたといいます。
応援の声は力になる。スポーツを観る時は結果だけに左右されず、ぜひ温かい目で応援してほしいと谷本氏は締めくくりました。
● この授業を通じて、スポーツの公平性を守るには選手だけでなく家族や指導者、医療関係者にも正しい知識が重要だと学んだ。ドーピングは故意に行われるものだけでなく、化粧品やペットの薬など身近で微量の成分の付着だけでも起こり得ることを知り、競技の価値や信頼性を守るスポーツ・インテグリティの大切さを実感した。
● 中学から6年間陸上競技に打ち込み、ケガや手術による苦難を乗り越えて復帰・記録更新を果たした経験から、「選手一人ひとりに物語がある」という言葉に深く共感した。
● 何かを背負って勝負するときには、自信を持つための努力だけでなく「負ける覚悟」を共存させることも必要なのだと学んだ。オリンピック選手はさまざまな恐怖と戦っているのだと知って、結果だけを見て安易に非難すべきではないと感じた。