2025.06.19
国際交流・留学
「人生が変わる3週間」―ハワイ短期留学で見つけた国際共創学部の学び
異文化に触れ、自分が変わるきっかけに

国際共創学部では、1年次の年度末(春期休暇中)に必修科目としてハワイ大学マノア校への短期留学を実施しています。3週間の留学で学生たちは何を学び、どのような気づきを得て帰ってくるのでしょうか。
第1期生としてハワイ短期留学に参加した留森萌々香さん、村口咲希さん、留学をサポートした国際共創学部の藤枝豊教授、島村幸忠講師にハワイでの経験や学びについて語り合っていただきました。

お話を伺った皆さん
藤枝豊先生
 国際共創学部教授(学部長補佐)。専門は英語教育学。
 特に、学習者の感情をもとにした効果的な英語ライティング教授法の開発、提案を目指す。
島村幸忠先生
 国際共創学部講師。専門は日本文化。
 近世後期の文人文化とその後世への影響関係や日本の喫茶文化に関する研究を行っている。
留森萌々香さん
 国際共創学部2年生。もともとは地方公務員志望。
 国際共創学部ではローカルな学びもグローバルな学びもできることに魅力を感じた。
村口咲希さん
 国際共創学部2年生。英語はそれほど得意ではなかったが、
 ハワイ短期留学が必修科目であることに興味を持って国際共創学部へ。

1年次に3週間、ハワイで暮らし、学ぶ

――まずは留学先の大学で、どんな授業を受けたのかから教えてください。

村口
私たちが受けたハワイ大学のN.I.C.E.(ナイス)プログラムでは、最初の面接でベーシックやアドバンスドなど5つのレベルにクラス分けされます。1つのレベルでも複数クラスがあって、自分の英語力にあったクラスで学べるようになっていました。

留森
授業は月曜日から金曜日の12時半から16時半まで、1日4コマ。ハワイの文化や歴史、食べ物などについて学ぶほか、ハワイ大学の学生とフリーに話したり、フィールドワークで学外に出て町の人と話す授業もありました。クラスごとに授業内容が違っていて、感情表現を勉強するクラスもあったと聞いています。最終課題はプレゼンテーションでした。

島村
プレゼンテーションの課題は何だったんですか。

村口
私のクラスの課題は、ハワイでの3週間で学んだことやその学びをどう活かしたいかなどを3分間のスピーチをするというものでした。私自身は、日本では食べられないマラサダやポキといったハワイの食文化について取り上げたり、ダイヤモンドヘッド(オアフ島にある火山)や海がすぐそばにあって自然を身近に感じられたことを話しました。

留森
私のクラスでは、ハワイの思い出について8分間のスピーチをしました。きっかり8分間でないとダメで、原稿を読んだり暗記するのもダメ。その場で思ったことを話し続けるんです。私は、カハラビーチなど、ローカルな人が知っているハワイのおすすめスポットについて話しました。

(右)ホストファミリーとカハラビーチに遊びに行った時の写真
現地の人々とも積極的にコミュニケーションを

――ハワイ短期留学で印象に残っていることは何ですか。

村口
ハワイではバス移動がメインなんですが、バスに乗っているときに隣の席のおじさまが急に話しかけてきたんです。何とか対応していたら、「君、英語できないね」みたいなことを言われて、「あはっ!ソーリー」と(笑)。その場を友だちに見られていて、随分と笑われてしまいました。ハワイの人たちはフレンドリーで、誰とでも話します。

留森
とってもフレンドリーですよね。「そのネイル、かわいいね」などと気軽に話しかけてくれます。私は、バス停で待っていたときに話しかけてきた人と仲よくなって、ハワイにいる間も一緒に遊びに行きましたし、今も連絡を取りあっています。

島村
楽しそうですね。留学経験がないので、率直にうらやましいと思いました。20歳前後のときに、ある程度の期間を海外で過ごすのはいいですね。ただ、自分の若いときだったらどうだったかなあ。しんどいと思ったかも?!

留森
なかには帰りたいと言っている学生もいましたよ。

村口
ホームステイ先によっては食文化があわなくて大変という声も聞きました。私のホストファミリーはインド系の人だったので、毎晩カレーでした(笑)。留学生は私を含めて6人いて、福岡や東京の大学の学生がいました。

留森
友人のところは留学生が8人いたそうです。私のホストファミリーは日本人で、「おかえり!」と日本語で迎えてくれました(笑)。家でも英語で会話したかったので、そこはちょっと残念だったかな。

藤枝
コロナの後、ハワイだけでなく、世界的にホストファミリーをやめてしまう家庭が多くなったと聞いています。本当なら1ファミリーに学生1名が理想で、週末などはホストファミリーと一緒に過ごすという経験ができればよいのですが、現実にはなかなか難しいですね。今後、どこまでホストファミリーを増やせるかが課題です。

――先生としては、現地の人との交流を通して何を感じてほしいですか。

藤枝
今、ハワイを含めて英語圏でネイティブスピーカーの区別が難しいと思います。例えば、オーストラリアやカナダの都市部にはアジア系の人が多いし、ハワイでもベトナム系や中国系、日本系が多い。私たちがイメージしていた英語圏は、実際にはイメージと異なることが多く、どんどん多言語化しています。そうした地域の英語にはいろいろなイントネーションがあります。昔は訛りのある英語はバカにされましたが、今は訛って当然。アメリカ英語でもイギリス英語でも訛りがあります。正しい英語とは何だろうと考えると、結局はそれぞれの英語があるということに行き着きます。学生には、多言語化している世界を感じ、また、自分が持っている英語を使って表現する方法を見つけてほしいと思います。

村口
アロハやマハロ、オハナなど、英語のなかにハワイ特有の言葉が混じっていたりしました。

留森
たしかに、ローカルの人が使う英語はちょっと違うなあと感じました。ハワイにはいろいろな国の人がいて、日本より異文化への理解が進んでいる気がします。

――カルチャーショックを受けたり驚いたことはありますか。

村口
人気の観光地に行くと、結構ホームレスが多いんです。帰国後、家族に話したら「ハワイにいるんだ!」とビックリしていました。夜に行くと危ないと言われている場所もありましたし。

留森
ビーチでもスリ被害があるといいますし、楽しい場所なんですけど、気を抜いてはダメだなと感じましたね。

島村
それもひとつの経験といえるかもしれません。

藤枝
日本とは環境も法律も違いますから、危機意識を持つことはとても大切ですね。

海外での経験で考え方が大きく変わることも

――ハワイ短期留学を経験して、自分が変わったと感じますか。

留森
実は、留学での経験が忘れられなくて、4月末にもプライベートでハワイに行きました。もともとは地方公務員を目指していましたが、今はハワイに長期留学したり、将来的にはハワイで働いたり住んだりしたいと思っています。それに留学後は、自分で動こうという気持ちになりましたね。例えば、受け身ではなく積極的に授業に取り組もうとしたり、語学をもっと勉強するためにどうすればよいか考えたり。そういうことが増えたような気がします。日本では就職のためや、みんなが進学するからという理由で進学する人もいますが、ハワイの学生は「自分が勉強したいから大学に来ている」という意識が強く、それがかっこいいんです。

村口
私は、もっといろいろな国を見てみたいと思うようになりました。自分はきっと国内で就職して平凡な日々を送っていくのだろうと思っていましたが、ハワイを経験したことで、海外に住んでみたいなという気持ちが少し出てきました。これからもいろいろな国でいろいろな景色を見てみたいです。英語についても苦手意識があったのですが、翻訳機に頼らずに、自信を持って英語で話してみようと思っています。それと、ハワイの人たちは、知らない相手でも気軽にスモールトーク(雑談や世間話)をします。日本でも、もっと挨拶してもいいのかなと思いました。

留森
私もです! 近所の方々にもよく挨拶するようになりました。

島村
2人の話を聞いて納得したんですが、たしかに新学期になったあたりから、学生から挨拶されるようになりましたね。あと、人前で話すことへの抵抗感が減ったりしていませんか? オープンキャンパスでハワイ短期留学について話してほしいと頼んだら、全員が「やりますよー」と答えてくれたんです。意外でしたね。もしかしたら、それぞれの中で、何か変わったのかもしれません。

藤枝
これから楽しみですね。必修科目ではありませんが、2年次にはタイやデンマーク、高知県、島根県での研修があり、3年次にはベトナム研修があります。そうした研修で化けてくる学生が出てくるかもしれません。海外研修やインターンなど、何かをきっかけに大きく変わる学生がいます。海外に行ってみようとか地元でボランティアをしようとか、自主性が出たりするんですね。そういう学生が一人でも多く出ればうれしいです。

留森
ハワイで同じクラスだった友人も、授業の内容が自分の英語レベルより少し高くて難しかったみたいで、少しフラストレーションを感じている様子でしたが、「悔しいから絶対に英語を話せるようになる!」と話していました。ハワイ短期留学の影響は大きいと思います。人生が変わると思います。

藤枝
ハワイは観光地だからこそ、はじめて長く過ごすにはよいのかもしれません。留学先としてはどうかなと心配する部分もあったのですが、偏見でした。今回、私も気づきがありました。

――国際共創学部でハワイ短期留学を必修科目にした狙いは何でしょうか。

島村
留学によって国際的な経験をしてもらいたいと考えています。ハワイ研修の狙いは、語学力を上げるだけでなく、異文化の人々と交流して異文化への理解を深めたり、コミュニケーション力を高めてもらうことです。本学には大阪出身の学生が多いのですが、大阪は狭いし日本も狭い。外に出て世の中の広さを感じてもらいたいと思っています。

藤枝
2年次以降に留学を行う大学が多い中、本学のように1年次の終わりに実施するところはあまりありません。今、スマホやPCの画面上で擬似的な体験ができる時代ですが、実際に海外に行って自分の肌でいろいろなことを体験し、言葉や文化の壁を感じたうえで、どのように自分で解決していくのかを考えてほしい。若い方々は感性も解決法も違いますから、早いうちに海外を経験した方がよいと思っています。

島村
ぜひ学生たちには、1年次に留学を経験することで、残りの3年間をどう過ごすかを考えてほしいです。

――留学を控えている後輩へアドバイスをお願いします。

留森
海外留学と聞くと、言葉が通じるのか心配になったり躊躇してしまうかもしれませんが、がんばって思いを伝えるようにすれば理解してもらえます。ハワイは日本人も行きやすい場所ですし、病院も日本語が通じたりするし、敷居は高くないと思います。怖がらなくても大丈夫です。

村口
私はあまり英語が話せなかったんです。その立場からアドバイスをすると、ひとつでも多く単語を覚えてから行ってほしい。そうすれば、会話のキャッチボールができて楽しいと思います。それにハワイで過ごすうちに、だんだん耳が慣れてくると思います。

――最後に、ハワイ短期留学をひとことで表現すると?

留森
私の場合は「人生のターニングポイント」です。

村口
私は「世界を知るきっかけ」です。いろいろな国を知りたいと思えるようになったプログラムでした。

島村
「将来の糧」ですかね。楽しかったにせよ、苦しかったにせよ、この経験は必ず将来の役に立つと思います。

藤枝
ひとことでいえば「チャレンジ」かなあ。長く海外で暮らすのがはじめてという学生がほとんどでしょうから、チャレンジングですよね。

島村
そうですね。挑戦する心を養ってほしい、それに尽きると思います。

ハワイでの出会いや経験は、これからの学生生活を豊かにしてくれる大きなヒントになりそうです。
そこで得た気づきや変化が、今後の学びにつながっていくのではないでしょうか。

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