2024.05.07
研究・産官学連携
大阪経済大学×かみしんプラザ 来館調査データを基にレストスペースをリニューアル
学生のアイデアを活かして生まれ変わった憩いの空間

本学大隅キャンパスに近接するショッピングセンター、かみしんプラザ(大阪市東淀川区大隅1-6-12)は、本学と産学連携協定を締結し、相互に協力して多様な活動を行っています。今回のプロジェクトでは、経済学部 樫山ゼミの学生がかみしんプラザとタッグを組み、かみしんプラザ地下1階レストスペースのリニューアルに2023年春から取り組んできました。そして、2024年3月28日、学生のアイデアを取り入れた新たな憩いの空間が誕生しました。

来館調査データを分析し、枠にとらわれない多様なアイデアを提示

従来のレストスペースはベンチを配置したシンプルなスペースで、利用者も少なかったことから、かみしんプラザではリニューアルを計画。より良いスペースを作り上げるために学生と連携したいというかみしんプラザからの相談を受け、本プロジェクトは2023年4月にスタートしました。プロジェクトに参加したのは、樫山ゼミの3年生(現4年生)13人。ゼミでは、データを用いて課題解決に必要な知見を引き出すデータサイエンス分野の研究に取り組んでいます。

学生たちはまず、かみしんプラザから提供された来館調査データをもとに、来館者の動向やニーズを分析。分析結果から、高齢者と子ども連れの主婦層にターゲットを絞ってアイデアを出し、提案内容をまとめました。ところが、かみしんプラザ担当者の反応は、「幅広い人に利用してもらえる場所にしたい」とのこと。提案内容とかみしんプラザが求める方向性との違いが明らかになりました。

かみしんプラザ担当者と意見交換した後、学生たちはデータを参考にしつつ、新たな視点で案を練り直しました。「データから見える事柄と、かみしんプラザさん側の要望との間に隔たりがある中で、どのような案を出したらいいのか悩みました」と話すのは、三谷逸星さん。「現実社会では、データだけに注目すれば良いのではないと実感し勉強になりました」と、現実の課題に取り組む上での気付きがあったと言います。

施設側と意見交換を重ね、リニューアル計画を作成

3グループに分かれてアイデアを練り、ゼミ内で発表を繰り返して提案内容を深めていきました。樫山武浩准教授は学生の自由な発想を重視しながらも、データの見方や提案、発表のポイントなどの助言を適宜行ったといいます。深町晃大さんは、「樫山先生からの言葉で印象に残っているのは、思いつきのアイデアにとどまらず、根拠をしっかり示すことの大切さ。根拠がないと説得力をもって相手に伝わらないと学びました」と話します。

それぞれのグループは、自然の要素を取り入れて安らぎを感じさせる「リラックス」、環境や社会の未来に興味を持ってもらうきっかけづくりを行う「SDGs」、大人も子どもも楽しめる「あそびゴコロ」というテーマを設定。テーマに沿ったアイデアを提示しました。

学生たちのアイデアをもとに、かみしんプラザ側が具体的なリニューアルプランを立て、さらに意見交換を重ねてプランをブラッシュアップしていきました。「天井にもカラフルな色を取り入れたい」「座席数を増やす」「子どもや高齢者も安全に利用できる椅子を採用する」など、学生からはたくさんの意見が出され、プランの完成度は高まっていきました。その過程で、大前俊介さんは、「アイデアを実現することの難しさを知りました」と言います。「機能、安全面、予算など、さまざまな点を考慮しなければならないのだと気付きました。かみしんプラザさんの担当者の方は、私たち学生のアイデアを現実的な形にしてくださいました」

約3カ月に1度のペースでかみしんプラザの担当者と打ち合わせを行う中で、学生と社会人の力の差を感じる場面が多くあったと学生たちは口を揃えます。「工夫された資料や話し方で、プレゼンの伝わりやすさがこれほど変わるのだと驚きました」「どんな質問にも丁寧な説明が返ってきて、提案内容について細部まで詰めて準備されていることが分かりました」と、その仕事ぶりに大きな刺激を受けたようです。

環境問題にも配慮し、明るくリラックスできる空間に

完成したレストスペースは、グリーンをベースとしてカラフルながらも落ち着きを感じさせる色調でデザインされ、明るく楽しい色と形のソファやスツールを配置。休憩時間に気軽に楽しめるゲームツールを設置し、ベンチの天板・側面の一部には廃棄衣料を原料としたサスティナブルボード『PANECO®』を採用しました。明るくリラックスできる雰囲気で人々を迎え、環境問題にも配慮した空間に生まれ変わりました。

レストスペースを訪れた学生たちは、「以前よりも若い世代が利用している」「利用者が増えているのが嬉しい」と、笑顔を見せます。自分たちでアイデアを出せたことが楽しく、それが実現したことに達成感を得られたと言います。「それぞれの長所を活かしてチームで協働できた」「現実のビジネスの場に触れられた」「課題解決に実践的に取り組めた」と、多くの学びと経験をもたらしたプロジェクトであったと振り返りました。

樫山准教授は、「データを活用しつつ、何を求められているのかを考え、課題解決に取り組む一連の過程を経験する良い機会になりました。かみしんプラザさんからも、根拠に基づいた提案ができていたと評価していただきました。今回のプロジェクトは学生にとって、何より外部の企業の人と関わり、実際に来館者が利用する施設のプラン作成に携われたことに意義があったと思っています。今後も、学生たちのアウトプットに対して、何らかのフィードバックが得られる取り組みを増やしていく考えです」と話しました。

本学学生たちが関わり、生まれ変わったレストスペースが、地域の人たちに長く愛される場所になることを願っています。

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