2026年10月14日(水)、URコミュニティ千里住まいセンターと東淀川警察署が共催する「特殊詐欺被害防止対策教室(防犯スマホ講座)」が、UR新豊里団地(大阪市東淀川区)で開催されました。当日は、人間科学部の髙井逸史教授と髙井ゼミの学生約20人が協力し、団地に居住する高齢者を対象に特殊詐欺被害防止に向けた啓発活動を行いました。
近年はSNS型投資詐欺やロマンス詐欺、闇バイトによる強盗事件など、スマートフォンを通じた犯罪が増加しています。大阪府警では被害防止を目的に、学生ボランティアによるサイバー防犯活動や啓発教室を積極的に展開しています。
髙井ゼミでは2020年から、高齢者を対象にしたスマートフォン講座を関西各地で実施してきました。認知症予防やデジタル格差の解消、社会的孤立の防止を目的としており、2025年には兵庫県警主催の防犯スマホ教室にも協力しています。今回の講座は、昨年同団地で実施したスマホ講座が好評だったことを受け、「防犯」をテーマに内容を発展させて開催されました。
教室前半では、東淀川警察署の担当者がSNS型投資詐欺やロマンス詐欺、闇バイトなどの発生状況について説明しました。大阪府内では特殊詐欺による被害が深刻化しており、2026年8月末時点で被害件数は2,782件(被害額:約215億円)、東淀川区内だけでも40件の被害が発生しています。参加者はその後、大阪府警制作の啓発動画「AI(あい)子署長の防犯教室!動画で学ぶ詐欺対策」を視聴。セキュリティアプリや特殊詐欺で悪用されることの多い国際電話の利用を停止できる無料サービスなどが紹介されました。
後半では、髙井教授が急増するSNS型詐欺をテーマに講話を行いました。犯罪の背景や被害者心理について解説したほか、犯人とのやり取りを疑似体験できるLINEサービスも紹介。兵庫県でも被害件数・被害額ともに増加傾向にあるといい、投資への関心の高まりや生成AIによるなりすましの高度化が被害増加の一因であると分析しました。また、被害額が高額化する背景としてインターネットバンキングの悪用にも触れ、防止策の一つとして国際電話番号の発着信を停止する無料サービスの活用を呼びかけました。
講話では、被害者の多くが「自分は詐欺に遭わないと思っていた」とされる点にも言及されました。髙井教授は、誰もが「楽観バイアス※」に陥る可能性があると説明。一人暮らしなどで周囲と情報共有する機会が少ない場合は、状況によって判断力が低下しやすくなると指摘しました。防犯意識の高い人でも冷静な判断ができなくなることがあるため、普段から家族や知人と防犯情報を共有し、相談しやすい環境を整えておくことが重要だと呼びかけました。
※楽観バイアス:根拠なく「自分は大丈夫」「悪いことは起きない」と過信して将来のリスクを低く見積もってしまう心のくせのこと
また、50~60代は過去の投資成功体験を持つ世代が多いとして、実在する投資アプリに似せた偽アプリで利益が出ているように見せかける手口も紹介。近隣警察署の電話番号を登録しておくことが有効な対策の一つと紹介されると、参加者がその場で電話番号を確認する姿も見られ、防犯意識の高さがうかがえました。
警察担当者は、「国際電話の停止サービスや警察庁推奨の防犯アプリを活用し、知らない相手からの連絡には十分注意してほしい。学んだ内容を家族や友人、職場の同僚にも伝えてほしい」と協力を呼びかけました。最後に髙井教授は、「詐欺の手口は常に変化している。『自分だけは大丈夫』と思わず、日頃から周囲とコミュニケーションを取り、最新の防犯情報を共有することが大切」と締めくくりました。
講話終了後は、髙井ゼミの学生が参加者に対してマンツーマンでスマートフォンの操作を支援しました。LINEの機能や注意点を説明したほか、希望者にはSNS型投資詐欺やロマンス詐欺、闇バイト応募トラブルを疑似体験できるアカウントの登録や操作方法も案内しました。
参加した学生の多くは4年生で、中にはスマホ講座に10回以上参加している学生もいます。学生たちはスマートフォンの相談対応だけでなく、日常会話を通じて参加者との交流を深め、高齢者の防犯意識や行動について実践的に学びました。参加者からは、「子どもとはこうした話をする機会がないので参考になった」「自分では警戒して見ることのない画面を体験できて勉強になった」「前回も楽しかったので参加した」といった声が聞かれました。
アンケートでも「生活の張り合いになった」「今後の生活に役立てたい」といった感想が多く寄せられ、終了後も学生との会話を楽しみながら帰る参加者の姿が見られました。
継続してスマホ講座に参加している4年生に話を聞くと「地域に出て直接声を聴き学べる活動に惹かれて髙井ゼミに入りました。今回担当したのは防犯意識の高い方だったので、どのような会話から詐欺につながっていくのか体験できて興味深かったようで、楽しくお話しできました」と振り返りました。
今回の取り組みは、高齢者にとって防犯知識やデジタルリテラシーを高める機会となっただけでなく、学生にとっても地域住民との対話を通じて社会課題を身近に捉える貴重な学びの場となりました。今後も地域社会や行政機関と連携しながら、研究・教育活動を通じて社会課題の解決に貢献していきます。