「珈琲倶楽部」は現在、70名以上のメンバーが所属する学生サークルです。豆の焙煎からドリップコーヒーの抽出まで自ら行い、本格的なコーヒーを楽しんで知識を深めると同時に、サークル内外の人との親睦を図っています。月2回の活動日には、豆や焙煎度合いの違いを味わう飲み比べ、お菓子とのペアリング、コーヒーの淹れ方を学ぶなど、さまざまな角度からコーヒーに親しみ、美味しさを探究しています。
はじめはコーヒーに詳しくなかったというメンバーも多く、副代表の藤原仁さん(経営学部2年)もその一人。「インスタントしか飲んだことがなく、サークルに入ってから先輩に一から教わりました。豆選びやブレンド、淹れ方と、コーヒーには味わいを変える要素がたくさんあり、自分好みの味を探せるのが楽しいです」と話し、今ではすっかりコーヒーに魅了されているようです。

メンバー内で楽しむだけでなく、コーヒーを通じて人との縁を広げていくのが「珈琲俱楽部」の活動方針です。学内外と連携した企画、イベント出店にも積極的に参加しています。代表の池本愛花さん(経営学部3年)によると、「サークルを立ち上げた先輩の思いをしっかりと受け継いでいます」とのこと。「私自身が人との縁の大切さを感じたのは、情報社会学部の浅田ゼミから連携を提案され、福祉事業所で販売するオリジナルブレンドコーヒーの開発に携わった時。今まで関わりがなかった人と出会ったおかげで知見が広がったし、一緒に新しいものを作り出せて、やってよかったと思えました。この経験をきっかけに、イベント出店時に他団体と交流するなど、率先して人と関わるようになりました」
副代表の上野茜さん(経営学部3年)も、元々は人と話すことに消極的でしたが、イベントで初めて出会った人とも楽しそうに接する先輩の背中を追いかけ、徐々に人と関わる楽しさを知ったと言います。「コーヒーが本当に好きで熱心に味を追求し続ける人をかっこいいと思ったり、遠方からのイベント参加者と知り合うなど、サークル活動をしていなかったら出会えなかった、いろいろな人たちとの関わりを今は楽しんでいます。思いきって話しかけてみると、新しい世界が広がると感じています」と話します。
これまでに、学生を中心とした若い世代による食フェス「GAKUSEI FoodFes」、個性豊かな豆を学生たちが焙煎・抽出するイベント「VOLCAFE COFFEE EXPO」などに出店し、こだわりの一杯を提供してきました。これらイベントの参加も、コーヒーを通じて出会った人との関わりから実現したといいます。
5月18日(土)、19日(日)には、一般社団法人日本コーヒーフェスティバル実行委員会が主催する「Japan Coffee Festival」に出店しました。同イベントの参加は3回目。今回は「まちとコーヒーと商店街」をテーマに、大阪府吹田市にある旭通商店街と新旭町通り商店街で開催されました。関西を中心に14の学生団体が出店し、それぞれが選んだドリップコーヒーを提供します。
「珈琲倶楽部」は、商店街内の和菓子店「鼓月」の軒先を借りて出店。選んだ豆は、コーヒー豆を実から取り出す過程であえて発酵させる特殊な生成方法(アナエロビック)によって生まれた「ルワンダ カリシンビ アナエロビック」です。ワインやラム酒のような華やかな香りと洋菓子のような甘味が特色です。伝統と新しさの融合をテーマにしている和菓子店のイメージを表現しました。豆の焙煎から抽出温度まで試行錯誤の末、完成した味わいのコーヒーです。
注文を受けるとコーヒーミルで豆を粉砕し、ケトルやドリッパーを使ってハンドドリップで、来店客の目の前でコーヒーを淹れていきます。まずはお湯の温度を調節。甘みを出すため、低めの温度でゆっくりと抽出します。あえて時間をかけて抽出するので、一杯を淹れるのに10分ほどかかります。その間は、来店客との交流タイム。今回のコーヒーの説明をしたり、時にはコーヒーに詳しい来店客から新たな知識を教わることも。

参加メンバーは、自分たちのコーヒーの特色を来店客にきちんと伝えられるよう、事前に知識を頭に入れて準備してイベントに臨んだといいます。「今年のテーマは、“特別な一杯を提供する”。味の美味しさはもちろん、そのコーヒーの背景を知れば、より味わいが深まって特別なコーヒー体験になると思うので、お客さまとの会話を大切にしています」と、池本さんは話します。
「珈琲倶楽部」は2日間で、106杯のコーヒーを提供しました。大学生たちが思いを込めて提供する一杯は人々の心をひきつけ、商店街を訪れたたくさんの人たちがコーヒーを味わってくれました。コーヒーと大学生、商店街の縁がつながることで、いつもとは違う商店街でのひと時を楽しんでいただけたのではないでしょうか。
メンバーたちは、「もっとコーヒーの知識を深めたい」「いろいろなコーヒーの楽しみ方を見つけたい」「後輩たちにもコーヒーを通じた人との関わりを楽しんでほしい」と、今後の活動にも意欲的。イベントで出会った他大学の学生と、交流の場を設けようという話も持ち上がっているといいます。前向きにサークル活動に取り組んで、自分自身を成長させ、人との縁を大切に広げていく「珈琲倶楽部」が、これからどのような活動を展開していくのか楽しみです。