2026年10月1日(木)、人間科学部の藤本倫史准教授と田島良輝教授が担当する「スポーツ実務実習a(企業PBL型)」の最終報告会を実施しました。
本授業は、PBL(Project Based Learning:課題解決型学習)の手法を用いた、3ヵ月間の実践型プログラムです。経営学部長の江島由裕教授からご紹介いただいた、本学客員教授であり株式会社One Bright KOBE代表の渋谷順氏のご協力により、昨年(2025年)に続き、今年度も実施することとなりました。
学生たちは自ら調査や情報収集を行い、現地で運営ボランティアを経験した上で、企画立案から検証、改善提案までを担います。企業と協働し、直接指導を受ける中から、現場で求められる思考力や発信力を養成することを目的としています。
関西最大級の収容人数を誇るGLION ARENA KOBEは、プロバスケットボールチーム「神戸ストークス」のホームアリーナです。株式会社One Bright KOBEは、兵庫県神戸市中央区新港町のウォーターフロントエリア「TOTTEI※」で、アリーナを拠点に「スポーツ×地域」をテーマとしたまちづくりやイベント運営を展開しています。
※TOTTEI:2025年4月4日新港第二突堤エリアにオープンした複合エンターテインメントエリア。ジーライオンアリーナを中核に、270度を海に囲まれた芝生エリアや、緑の丘共用ホール、10以上の飲食店が含まれる
実習では、「GLION ARENA KOBE」を運営する株式会社One Bright KOBEの協力のもと、学生たちが同社の課題解決に取り組みました。最終報告会当日は、実習期間を通じて指導いただいたコミュニティマネージャーの馬場胡々路氏を招き、成果を報告しました。
学生たちは、7月に3回実施された課題設定を含めた事前学習と講義を通じて、神戸ストークスやアリーナ周辺地域の現状について学びました。さらに8月には2日間にわたってアリーナで行われたボランティア研修に参加。ファンクラブやアプリ※ブースでの来場ポイント付与などの来場者案内業務やVIP対応などに携わり、試合運営の現場を体験しました。
2回目の参加となる学生の中には、7月から始まる実習に先駆けて、3月に行われたフェスイベントにもボランティアスタッフとして参加し、試合運営だけでなく音楽興行の舞台裏を経験した学生もいたといいます。
※TOTTEIアプリ:「TOTTEI」で行われるイベントを盛り上げるコンテンツや神戸市内で使えるクーポンの他、おすすめスポットや周遊コースなどのマップ情報や決済機能も搭載する観光アプリ
学生たちはボランティア研修のあと調査・検討を重ね、8月下旬にオンラインで中間報告会を実施。学生たちは現地で感じた会場の熱気やアプリの活用事例を踏まえ、他社事例も参考にしながら企画を発表しました。
実習参加者は4年生2名、3年生5名、2年生1名、大学院生1名の計9人で、2チームに分かれて提案を作成。報告会ではOne Bright KOBEの担当者や神戸ストークスの社員6名から、「収支面を含めたKPI設定」や「提案の具体性向上」など実務的な助言を受けました。
学生たちはこれらの指摘を踏まえて企画を大幅に見直し、より実現可能性の高い内容へと磨き上げました。
最終報告会当日は、2チームが各テーマに沿った提案を実施しました。学生たちは中間発表で受けたフィードバックを基に、提案内容をより現実的かつ魅力的な形へと磨き上げて臨みました。
第1班:「地域×観光」 ― アリーナを中心とした周遊バスを活用するスポーツツーリズム
アリーナを中心とした周遊バスを活用するスポーツツーリズムを提案しました。神戸ストークスのファン層拡大と20~30代の神戸へのリターン来訪促進を目的に、観光シャトルバスとTOTTEIアプリを連携させたデジタルスタンプラリーを企画。主要駅とアリーナを結ぶコースのほか観光地を巡るコースを設定し、車内では選手によるアナウンスや映像コンテンツを提供します。さらに限定グッズの配布など特典を設けることで、利用価値を高めました。他社バスの利用ルートとは異なるルートをターゲット層に合わせて設置。アウェイチームとの交流も生み出せる利便性で地域経済に貢献し、既存ファンの利用拡大にも寄与する企画です。
既存スポンサーとの連携も視野に入れた提案で、実現性の高さが評価されました。
●講評
「神戸市と神戸ストークス双方の課題を結び付けたストーリー構成が分かりやすく、既存資源を活用した実現性の高い企画だった。一方で、収支計画の根拠やターゲット設定については、さらに他社事例を参照して入口と出口の動線を考え、精度を高める必要がある」との指摘がありました。
第2班:「スポーツ×教育」 ― 苦手意識をなくす「ゆるスポーツ」コミュニティ
スポーツが苦手な子どもたちを対象とした「地域ゆるスポーツコミュニティ」を提案しました。神戸市では部活動の縮小により運動機会の減少が課題となっていることから、大学生が主体となって一般社団法人を運営し、誰もが気軽に参加できるスポーツ教室を開催する構想を発表。アリーナで月2回活動し、バスケットボールやバレーボールを遊び感覚で体験できるプログラムを提供します。また、QRコードを活用したスタンプラリーや試合招待特典を設けることで継続参加を促し、地域に根差したスポーツコミュニティの形成を目指しました。
地域課題を明確に捉えた企画として評価を受けました。
●講評
「『ゆるスポーツ』という分かりやすい言葉で目指す姿を表現した点が評価できる。一方で、土日の音楽興行などアリーナの稼働状況を踏まえると、定期開催の実現には課題があり、会場費の試算や事業継続の仕組みについても具体化が必要」との指摘がありました。
馬場氏は全体を振り返って「時間がない中で、自分たちなりに中間報告でのフィードバックに挑んで頑張ってくれた。先行事例を収集して比較・分析すると提案として質が高まる。問いを考える際には、スポーツが盛り上がっている町では、どのように組織を持続させ利益を生み成果を出しているか、都市規模の違いからくる地域課題にどう影響しているのか、価値を提供するためになぜこの形が必要なのか、理由まで考察してほしい。その目を鍛えておくと入社時に違ってくる」と激励しました。
学生リーダーも「アイデアは増やすだけでなく削る勇気も必要だと学んだ。ターゲット設定や収支面を踏まえた実現可能性の検討、仕組みづくりの重要性を痛感した」と振り返ります。
学生たちは企業と協働するなかで、収支や持続可能性といった現実的な課題に挑み、仲間と議論し、 社会へ提案する力を培いました。社会の声と向き合う実践的な学びが、 一人ひとりの成長を力強く支えています。
第1班代表:人間科学研究科1年 平山俊太さん
見学やボランティア活動を通じて、グッズ販売やアプリ活用などアリーナ運営の工夫を学びました。その経験を生かし、バス限定グッズの販売やフォトスポットを取り入れたデジタルスタンプラリーを企画しました。もともとは神戸ストークスのファン同士が交流できる場をつくりたいという思いからスタートしましたが、メンバーとの議論を重ねる中で、観戦と観光を組み合わせたバスツアーへと発展しました。ターゲットを神戸ストークスのファンに絞り、利用したくなる仕掛けとして限定グッズを設定したことで、企画全体の方向性が明確になりました。特に印象に残ったのは「現実性があるか」という視点です。企画の面白さだけでなく、運営体制や収支計画まで具体的に考える重要性を実感しました。
第2班代表:人間科学部3年 宇夫心咲さん
社長の講話からホスピタリティの精神を学べたことが印象に残っています。ボランティア実習でも来場者への接し方を実践的に身に付けることができました。企画を実現したいという思いは強かったものの、実現可能性について十分に検討できていなかったことが反省点です。「ゆるスポーツ」のアイデアは、自身の経験や普段学童指導に取り組む中から生まれた研究テーマ「スポーツが苦手な子どもへの支援」を発展させたものです。講評を受けて、参加者を集める方法だけでなく、学生主体の運営をどのように持続させるか先を見据えた仕組みづくりまで考える必要があるのだと気付きました。今回の実習経験を活かし、今後学内外のコンテストへの挑戦も視野に入れています。