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【実施報告】地方創生サークルが岡山県西粟倉村で「もち麦料理コンテスト」開催

2023年06月26日(月)

岡山県西粟倉村で地元の小学生・高校生を巻き込んだ地域創生プロジェクト

2023年5月27日(土)に岡山県西粟倉村で「もち麦料理コンテスト」が行われました。岡山県美作市の特産品「もち麦」を地域の内外にアピールし、地産外商(地域で採取・生産・製造された商品を海外も含めた地域外で流通及び販売する取り組み)に繋げるのがこのコンテストの目的です。
料理を担当するのは、岡山県立津山東高校の食物調理科の生徒。美作市立大原小学校5年生がもち麦を使った料理のアイデアを、西粟倉小学校6年生が西粟倉村の特産品を提案し、それらをもとに高校生がレシピを考案しました。
コンテストを主催した地方創生サークルは、過疎化地域の魅力を発信し、地方創生のムーブメントを作り出すことを目標に活動しています。2022年6月に発足し、現在23名が所属、顧問は経営学部長の江島教授が務めています。
 
「もち麦料理コンテスト」は、2023年3月に本サークルが西粟倉村教育長である関正治氏に企画書を持ち込んだことから始まりました。
学生の熱意に打たれた関氏は、美作市の公民館の館長を紹介し、そこから美作市立大原小学校、津山東高校と、サークルの強い思いが伝染するように人の輪が広がっていきました。地元の方々にアドバイスをいただきながら約3ヶ月をかけて一緒に企画を練り上げ、ついに開催にこぎつけました。

コンテストは関氏の開会の言葉から始まり、「この企画を持ちかけられた時から面白くなる予感があった」と期待を滲ませました。
高校生は真っ白なコック帽にコックコートを身につけて調理室へ登場。2名1組の全4チームが作るのは、美作市の特産物の椎茸をトッピングした餡掛け風味のラーメン+もち麦という斬新な組み合わせの「しいたけらぁーめんどーん」。西粟倉村の企業が加工販売する鹿肉のフライを載せた、カツ丼ならぬ「しかツ丼」。カレーの上に西粟倉村の渓流で採れるあまごのフライやアスパラ・ナス・パプリカなど彩り豊かな野菜が添えられた「あまごのキーマカレー」。粉末状にしたもち麦粉と米粉を混ぜ合わせた「もちフワミニパンケーキ」の4品です。

左から順に、しいたけらぁーめんどーん、しかツ丼、あまごのキーマカレー、もちフワミニパンケーキ

審査員は、関氏や西粟倉村副村長の山下英輔氏をはじめ、衆議院議員の阿部俊子氏、参加小学校の校長、本学の江島教授など計10名。それに加え、メニュー考案に関わった2校の児童も試食し審査に参加します。
最優秀賞に選ばれた1品は、大阪経済大学の学生食堂で期間限定メニューとして提供される予定です。
 
今回の審査では、料理の出来栄えだけではなく、衛生面の配慮や段取りの手際の良さも点数に含まれます。調理が始まると、審査員は調理台の周りに集まって高校生の調理風景を熱心に見つめ、調理内容について質問をしていました。
高校生らは緊張の面持ちながらも手早く調理を進め、包丁を器用に使って魚をさばく姿には審査員から「すごい」と感嘆の声が上がりました。津山東高校の食物調理科長である河本美喜先生は4チームに絶えず目を配り、鹿肉など扱いが難しい食材のさばき方については、実演を交えアドバイスをする場面もありました。
調理は1時間半で終了。完成した料理は彩り豊かに盛りつけられ、素晴らしい出来栄えでした。

もち麦料理を通して生まれた、地域・世代間を超えた交流
試食・審査が行われた「あわくら会館」は、生涯学習施設・図書館・役所庁舎が一体となった複合施設で、2021年に木材利用優良施設コンクールで内閣総理大臣賞を受賞しています。内外装の大部分に西粟倉村で搬出したスギやヒノキが使われており、室内からはほのかに木の香りが漂います。
審査会場の「百森ひろば」には2校の児童と保護者、関係者など約90名が集まりました。ちょうど正午ということもあり、会場は料理を今か今かと待ち侘びる人々で賑わっていました。
 
審査に先立って、それぞれの料理を調理した高校生がプレゼンテーションを行いました。児童の提案を生かした点や、使用食材に含まれる栄養素、「蜂蜜につけることでタンパク質が硬くなるのを防ぎ肉が柔らかくなる」といった調理の一手間など、スライドを使ってわかりやすく解説する姿に会場から拍手が起こりました。指導教員の河本先生によると、今回のメニューは児童の提案と大学の学食が結びつくように考慮しながら、生徒たちだけでレシピの詳細を決めたそうです。
 
いよいよ審査の試食タイムになると、会場は本日一番の盛り上がりに達します。ブルーのクラブTシャツを着た地方創生サークルの学生たちが児童のもとに小皿に分けた料理を届けると、歓声が上がりました。

料理を頬張る児童たちに感想を聞くと、「もち麦のプチプチ感と、キーマカレーの味がめちゃくちゃマッチしてる。あまごのフライががっつりでお腹が一杯になる」「しかツ丼は鹿肉の臭みも思ったよりないし、味もしっかりして柔らか。今まで食べたことのある鹿肉の中でも柔らかい」など絶賛の声ばかりでした。
2校の児童たちは、今日に至るまでに、高校生へのプレゼンテーションの練習を重ね、発表後は高校生と意見交換をしたそうです。この経験に刺激を受けた児童も多く、「僕たちのアイデアからスパイスとか色々アレンジを考えて、こんなに良い料理を作った高校生はすごい」と熱意たっぷりに話す姿も見られました。
 
試食時間の後半に保護者にも試食が振る舞われると、会場内はより一層「おいしい」という声で溢れました。このコンテストはもち麦のPRだけに留まらず、食を媒介にして地域・年齢・立場を超えた人たちが繋がる、新たなコミュニケーションの場になっていました。
会場の様子を目にした関係者からは、「夢を描いてもそれが100%叶うわけではなく、現実にしていく過程で諦めなければならないこともある。今回の取り組みでそれを学ぶことができ、児童たちの良い経験になった」「地元の教育現場同士だと、逆に近すぎて繋がりにくいこともある。地方創生サークルが外部から繋げてくれたのは有り難い」という声もありました。
 
審査の結果、最優秀賞は見た目の鮮やかさや食感の多彩さ、そして調理の手間が少なく学食に最適という点が高い評価を得て「あまごのキーマカレー」が受賞しました。最優秀賞のチームには景品の図書カード3,000円分が授与され、参加した小学生・高校生全員には大阪経済大学マスコットキャラクター「はてにゃん。」のグッズが配られました。
最優秀賞を受賞した高校生は、「甘いパンケーキやインパクトのあるラーメン丼が人気だと思っていたので、選ばれたのは意外」と驚きながらも、「学食として出しやすいように、食材が安く調理の簡単なキーマカレーを選びました。子どもたちの提案ではルーにあまごが入っていたのですが、あまごの味を活かすためにフライに変更しました」とこだわりを語りました。

閉会式では、西粟倉村副村長の山下氏が「世代間を超えた交流はSGDsの文化の継承に繋がるものがあると感じています。今回の経験はとても良い経験でしたので、今後もこういう機会があればどんどん参加していきたいです」と話し、西粟倉村出身者であり地方創生サークル代表の宮本瑠士さん(経営学部4年)は、「これからも色んな地方の人たちに会い、いつか地方創生サークルが繋げた地域同士でサミットを開催できたら」と今後の展望を語りました。
コンテストの締めくくりに撮られた記念写真では、小学生・高校生・大学が満面の笑みを讃えており、地方創生サークルの活動の成果を証明する1枚になりました。

<関係者のコメント>
大原小学校校長 金島 久美子 先生
今回のような、小学生と高校生が直接やりとりをして、アイデアに対するコメントをもらうこと自体が特別な機会でした。高校生に的確な助言をしてもらったことが、子どもたちの心を育てるのに繋がったと思います。この先、大阪の人たちが美作市などに目を向けてくれたら、さらに大きな意味があるイベントになると思います。
 
西粟倉小学校校長 竹内 龍一郎 先生
小学校の中だけではこうした体験はできないので、子どもたちにとって良質な体験になったと感じています。西粟倉小学校の卒業生である宮本瑠士くんが子どもたちの心に火つけ、自分たちもそれをやってみたいという思いにさせてくれたことに感謝しています。