髙田氏は本学の卒業生。学生時代は英語研究のクラブ「ESS」に所属し、英語浸りの4年間を送ったそうです。講演の冒頭、髙田氏は「とにかく本を読んでください」と学生らに呼びかけます。読書から得られるものは年齢によって変化し、20代は自分の興味を広げることに、多くの苦楽を経験した40代以降では、自分の心が弱った時、強さを取り戻すのに役立つといいます。
数々の偉業を成し遂げてきた髙田氏ですが、自分の進む道が正しいのか疑問に思うことも何度もありました。その度に本を読み、自分のやり方が間違っていないと勇気づけられたり、先人の知恵から軌道修正を行なったりして、自分に足りないものを補ってきたそうです。
髙田氏にとって、「人生はボトルネックを探す旅」だといいます。ボトルネックとは、瓶の首の部分のように、「業務全体で最も生産性や効率を妨げている箇所」を表すビジネス用語です。
その人生観の礎となったのが「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」(エリヤフ・ゴールドラット著)です。本書では「3ヶ月内に赤字の工場を立て直せなければ閉鎖」を言い渡された主人公が、工場の社員らとボトルネックを解消し、大きな利益を生み出す工場へと刷新させる様が物語調で語られています。成功の鍵は主人公らが全体最適に目を向けたことで、「上手くいかないとき常にそこに原因(ボトルネック)があり、それは1つじゃありません。全体的なものにまで広がるので、部分的な解決では意味がありません」と髙田氏は指摘します。
「人生も同じです。『人生は常にボトルネックを探す旅』だと頭に置いて、苦しいことがあってもそこでめげないでください。それを受け入れて、次のボトルネックを探して前に進み続けていけば、必ず最高の人生を送ることができます」
2冊目に紹介したのは「世阿弥の世界」(増田正造著)で、能研究家の増田正造氏が新しい切り口で能の世界を解き明かした入門書です。
髙田氏は世阿弥が能楽論を記した「風姿花伝」からいくつかの言葉を引用します。
命には終りあり、能には果てあるべからず(死ぬまで稽古を怠らず、芸の向上に努めなさい)
時分の花(若さによる一時的な美しさ)と真の花(修練を積んで得た才能)
「一度成功を味わうと傲慢になりがちですが、謙虚に生きることが大事です。まだまだ自分は足りていないと、謙虚にやり続ける人がやっぱり一流になるんです」と自身の価値観と通じる部分を語りました。
3冊目に挙げたのは「経営の教科書 社長が押さえておくべき30の基礎科目」(新将命著)です。著者の新将命氏は、髙田氏が「経営のメンター」と尊敬を寄せる人物。世阿弥の言葉を体現したように85歳に亡くなるまで学ぶことを怠らず、多くの経営に関する名著を残しました。本書では具体例にまで落とし込んだ経営論が綴られており、腹落ちする1冊だと力説しました。
最後に紹介したのは、「小さい“つ”が消えた日」(ステファノ・フォン・ロー著)。
100ページほどの児童書ですが、「小さな『つ』が消えたら言葉が成り立たないように、役に立たない人間などいない」と感動した1冊だそうです。
講演の締めくくりに、学生らに以下のような言葉を贈りました。
「自分が好きなものを1つでいいから徹底してやっていけば、同じ価値の人が必ず集まってきます。自分1人だけでは何もできません。ジャパネットたかたも、僕がやったのはたった5%で、残りは他の人のおかげです。人と比較しなくていいから、今という瞬間を一生懸命頑張ってください。それで人生変わるよ」
髙田氏の言葉、熱のこもった語り方、向ける眼差し全てが、学生を未来へと導く強いエネルギーに満ちていました。