高校3年生の時、担任だった先生はとても素敵な方でした。授業や風紀には厳しいですが、体育祭や合唱コンクールの時は誰より熱く取り組んで、生徒を引っ張ってくれました。いつか私もあんな先生のような人になりたい。そんな想いがきっかけとなり、大学では地域の小・中学生を対象にした学習サポート「だいけいだい教室」に参加しました。
「だいけいだい教室」では、私たち学生が先生役を務め、宿題や自習の手助けをします。初めて教える側の立場になって緊張していたこともあり、最初は子どもたちとうまく接することができませんでした。それでもなんとか仲良くなろうと、例えば「日曜日は何をして遊ぶの?」など、勉強以外の話も織り交ぜるようにしました。すると少しずつ子どもたちから声をかけてくれることが増えました。それからも自分なりに工夫を続け、1年が経った頃には子どもたちと打ち解けた実感がありました。
しかし先輩方が卒業されてから、教室内の空気が一変したんです。すぐに席を立って走り回る子や、友達の勉強を邪魔する子が増え、時に喧嘩が始まるほどでした。その時、これまでは先輩方が学習環境を整えてくれていたのだと気づきました。私はただ子どもと仲良くしようとしていただけで、それでは先生の役目を果たしているとは言えませんでした。
それから、勉強時間は毅然と振る舞い、注意すべきところはしっかり注意するよう態度を改めました。「子どもたちに嫌われるかも」という不安もありましたが、その分、休憩時間は密にコミュニケーションをとるようにしました。すると、これまで以上に子どもたちが周りに集まってくれるようになったんです。私の似顔絵を描いて、プレゼントしてくれる子もいました。そこでふと、高校時代の先生を思い出しました。思えば、先生はメリハリをつけて私たちに接してくれていました。嫌われることを怖がって遠慮するのではなく、相手を思って本気で向き合う。そこから、信頼関係が生まれていくことを実感しました。「だいけいだい教室」の活動を通し、憧れの先生に少し近づけたような気がします。