学長・野風草だより

No.817

No.817 2017年9月15日(金)

秋晴れのもと、卒業生に贈る言葉

 春学期の卒業式が、C31教室で開かれました。学部生89名、大学院生2名の91名の門出をお祝いしました。以下は、当日私が述べた式辞です。
 
「大経大PRIDE」
 本日は、皆さん卒業、修了、おめでとうございます。ちょっと遠回りしましたが、良かったですね。ご臨席いただきました保護者の皆さまはじめ、ご関係の方々にもお慶び申し上げます。
 1949(昭和24)年に新制の大学となった大阪経済大学の前身は、1932(昭和7)年に創立された浪華高等商業学校であり、その後1935(昭和10)年に昭和高等商業学校として再建されました。その初代校長となった黒正巌博士以来、「自由と融和」を建学の精神として受け継いできました。今年で創立85周年となり、2032年には創立100周年を迎えます。本日卒業・修了する91名の皆さんを加えて、卒業・修了生は9万5千名ほどになりました。本日から、皆さんもその仲間です。どうか皆さん、これからの社会人生活において、大経大卒業生としての誇り、「大経大PRIDE」をもって、過ごしてください。
 皆さん、大経大での生活に満足されたでしょうか。私たち教職員は「つながる力。No.1」を掲げて、皆さんと接してきました。満足して卒業していただければ、大変うれしいです。私たちは「大経大FAMILY」として、これまでもつながってきましたが、皆さんが卒業されてからも、つながりを続けていきたいと願っています。是非皆さんの母校を愛し続けてほしいと思います。

恩田陸『蜜蜂と遠雷』
 私が最近読んだ本のことを、少しお話しをします。少し古くなりましたが、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』(2016幻冬舎)が直木賞と本屋大賞をW受賞しましたので、私も読んでみました。2段組み500頁もありましたが、面白くて一気読みしてしまいました。ピアノの音楽コンクールを若者たちが争うという小説です。気に入ったのは、主人公の風間塵が音楽を演奏している室内から会場外へ、広く外の世界へ連れ出すというモチーフでした。こんなことを作者は述べています。「本来、人間は自然の音の中に音楽を聴いていた。その聞き取ったものが譜面となり、曲となる。だが、風間塵の場合、曲を自然のほうに『還元』しているのだ。かつて我々が世界の中に聞き取った音楽を、再び世界に返している。」(同書490頁)「この、命の気配、命の予感。これを人は音楽と呼んできたのではなかろうか。恐らくこれこそが、音楽というものの真の姿ではなかろうか。」(同書506頁)。

「学問」を現場で活かす
 何となくクラシックを縁遠く感じていた問題点をズバリ指摘していました。皆さんが勉強してきた「経済」「経営」「情報社会」「人間」などと、「経済学」「経営学」「情報社会学」「人間科学」の関係もまた同じことが言えるのではないでしょうか。出来あがった譜面のような硬直した「経済学」などの枠組みで、現実の生き生きとした「経済」などを切り取ろうとしがちなのではないでしょうか。皆さん、本学で学んだことをベースにしながら、現場の世界に大胆に飛び込んで行こうじゃないですか。本学でこうして卒業するだけの学問を修めました。皆さんは若い!さあ、これからは皆さん、一人ひとりの力で現実を切り拓こうじゃないですか。皆さんが本学で貯えてきた秘められた未知の能力をこれから社会で開発して、社会人として活躍してくれることを期待しています。

一色まこと『ピアノの森』
 もう一つ、音楽コンクールという事で、一色まことの漫画『ピアノの森』があることを知り、全26巻をセット購入し、2日間かけて一気読みしました。途中、涙線が何度も緩みました。読み終えてから今なお、素敵な場面を読み返しています。1998年から2015年まで、16年かけて完結したそうです。ストーリー、人物描写、音楽描写、そして絵やコマ割り、セリフの画面構成など、本当にすばらしい作品でした。私は60歳を過ぎてなお、こうして感動できる作品に出会えたことに、感謝です。5つ星を付けていた私の読書記録で、一つプラスの6つ星を付けました。一色まことの力量、見識に敬服します。
 感動した場面は山ほどありましたが、一つだけ私の感動を紹介します。ショパンコンクールの第3次予選でショパンの協奏曲第1番の第3楽章を弾きながら、主人公の一ノ瀬 海(いちのせ かい)は感じていきます。「森のピアノは進化して・・・どこまでも伸びていく・・・何物にも遮られることなくどこまでも自由に・・・遠くへもっとずっと遠くまで・・・自由に世界中の天空を駆けめぐる・・・奏でる者も聞く者もすべてを解き放つ!ああ音楽は、音楽はこんなにも自由だ!!!自由だ!!」(第24巻より)。これこそ一色さんが伝えたかったメッセージの一つではないでしょうか。

「自由と融和」
 「自由」、なんと素敵な言葉でしょう。本学もまた「自由と融和」を建学の精神に掲げています。私はこう思います。現在の21世紀において、「自由」とは「多様性の承認」ということではないでしょうか。みんな違っていい、それを認め合い尊重し合う、大阪経済大学もまた、このような方向をめざしていくべきなのではないかと痛感しました。「融和」とはみんなが「共存共栄」をめざしていくことです。自分の地位や名誉、お金を追い求めて周りを傷つけ貶めていく「我の世界」、おかげさまと感謝して祈り、「おたがいさま」と労り合うことを忘れてしまったのです。「多様性の承認」と「共存共栄」、この二つの原理は生命が誕生して40億年にわたる揺らぐことのない原理だったのです。それをこの20万年のホモサピエンス、現生人類、そしてわずか3,4百年の資本主義社会が歪めてきたのです。今こそ、再び、「自由と融和」、「多様性の承認と共存共栄」が問われているのです。

「道理は天地を貫く」
 いったいどこに立ち戻るべきなのでしょうか。私たち、大経大に関わる人たちはありがたいことに答えのヒントをすでに知っています。本学の前身である戦前の昭和高等商業学校の校長先生で、戦後1949年に本学の初代学長を務めた黒正巌博士の言葉に「道理貫天地」というのがあります。これは世界で、日本でオンリーワンの大経大オリジナルの言葉です。
 道理とは何か、人の生きる道、理。いかに生きるか、いかに死ぬるか。古今東西変わらないものです。道理は、世界をそして目に見えない天地をも貫いているんだ、と黒正博士は言われたのです。各人各様の解釈でかまいません。正解はありません。「道理は天地を貫く」、大経大でしか学べないこの言葉を、頭の片隅でもいいから覚えていてほしいのです。必ず、皆さんのこれからの人生を支えてくれる芯柱になってくれると思います。「道理は天地を貫く」
 
 あらためて卒業生、修了生の皆さん、おめでとう。以上で、皆さんへのお祝いのメッセージといたします。ありがとうございました。