第19回中小研フォーラム(國分圭介氏)2018.1

第19回中小研フォーラム開催報告(2018.1.20)

中小企業・経営研究所は、国際的な研究交流と実践的課題を検討する場として標記のフォーラムを開催しています。日本企業のアジア展開が加速する状況下で、日本本社の経営戦略の一体性を確保しつつ現地市場に適応する経営が大きな課題となっています。欧米企業に比べて日本企業の現地化経営は遅れているとの見解も聞かれます。このテーマは日本的経営の普遍性(時間的、地理的にも)にも関わる内容であり、研究者や実務家にとっても関心の高いテーマです。そこで今回は、アジア各地で現地調査を積み重ねてきた國分圭介氏を招聘し「東アジアにおける日系企業の現地化:現状と課題」というテーマで、調査データを踏まえたご講演をしていただきました。当日は、研究者だけでなく行政担当者や中小企業支援機関、実務家の方など16名に参加していただき研究交流が行われました。
本フォーラムは2部構成で実施し、第Ⅰ部では、國分氏に1時間半のご講演をしていただきました。國分氏は、公益社団法人国際経済労働研究所に入所後、2005年から2017年に亘って東アジア各国の日系企業でワーク・モチベーション調査を実施し、各国別に収集された大量データの分析を踏まえた説得力ある研究成果を紹介していただきました(昨年末に京都大学産官学連携本部に移籍)。紙幅の関係で一部を紹介しますと、中国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアなど各国ごとにワーク・モチベーションを向上させる要因は異なること、経済が発展し所得水準が高まるにつれて、権利意識が高まり個人主義的になり、内発的報酬や外発的報酬への関心が高まることで日系企業は競争力を失う可能性のあることなど、貴重な成果を報告されました。
第Ⅱ部では、太田所長がコーディネーターになり、参加者とともに、海外展開や現地化の問題について1時間ほどの議論を行いました。そこでも、日本人を減らせとか現地人材に権限移譲をせよと急かすのではなく進出先の国の文化や経済水準に応じた繊細な現地化論の構築が必要であること、既存の現地化論には進出先の国の多様性に対する理解が欠けているのではないかとの問題提起に対して様々な議論が行われました。また、一般学生、社会人、留学生など多様な人材を教育する大学の役割についても議論が行われました。
今回のフォーラムでは、東アジアにおける日系企業の現地化というテーマを通じて、現地化の実践的課題だけでなく日本的経営の問題点や大学の役割など、まさに日本社会が抱える問題について多面的な視点から意義あるディスカッションを行うことができました。研究者や中小企業支援者、実務家といった多様な視点でのディスカッションの大切さを感じさせる中小研フォーラムでした。

  時:2018120日(土)15001740
  B館 3階 第32教室
出席者:16
テーマ:「東アジアにおける日系企業の現地化:現状と課題」
報告者:國分圭介
      (京都大学 産官学連携本部 特定助教)
司 会:太田一樹所長
    (中小企業・経営研究所所長/本学経営学部教授)